┏…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┓ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥       pdwebメールマガジン第36号・・・2013/3/29       編集制作:pdweb.jp編集部 http://pdweb.jp ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ┗…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┛ ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ● pdwebメールマガジン第36号 目次 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ●連載コラム:西山浩平の空想デザイン 第22回:ズバっという ●リレーコラム:若手デザイナーの眼差し 第12回:鈴木啓太/PRODUCT DESIGN CENTER ●編集後記 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ストラタシスより最高峰の精度とマテリアルラインナップを誇る ◆3Dプリンタ『Connexシリーズ』でプリントした特製クリップをプレゼント! 素材の感触や3Dプリントモデルの質をお確かめ下さい◆ http://goo.gl/nNwWs ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●連載コラム:西山浩平の空想デザイン 第22回:ズバっという ○市谷のフレンチ その日は、容子先生に会いに行く大事な日だった。ディナーに招待した市谷の フレンチは、以前そこで持ったディナーのおかげで道が開けたというジンクス のある縁起のよい店だ。時刻に厳格な容子先生だから、遅れないように早めに 到着しておきたかった。そういう気持ちもあって、同じディナーに出席するこ とになっていたビジネスパートナーとのプレミーティングは、集合場所の近所 のカフェに設定した。 スーツ姿で登場したビジネスパートナーは紺のスーツにノータイという姿だっ た。スーツの袖からはカフスリンクがのぞいていた。いつもはもっとカジュア ルな格好でいる彼にしても、本日のディナーには改まった格好で臨みたいとい う気持ちがあるのだろう。 彼とのプレミーティングで決めなければならない内容は最初の20分で決まって しまったので、残りの時間をもっぱら、容子先生に何を伝えるべきかという作 戦会議に充てた。 ○容子先生 僕とビジネスパートナーにとって容子先生の存在は大きい。彼にとっては大学 院時代の恩師であるし、僕にとってはかつての上司にもあたる。2人にとって は彼女を事業のアドバイザーとして誘った以上は、容子先生の目にかなう計画 と計画の着手をしていることを認めてもらう必要があるのだ。彼女は、教え子 と後輩だからという理由だけでは、事業のアドバイスをしない。関わるからに は、インパクトを出せる可能性が高くなければならない、そういう考えの持ち 主であることはよく分かっていた。 容子先生は金融業界では論客と知られた学者だ。学者になる前は、政府系金融 機関で実務を担当し、その後、私が勤めていたコンサルティングファームの役 員を務めていた。現在は大学で教鞭をとる傍ら、いくつかの上場企業で社外役 員を務めている。国内外の経済誌にも積極的に寄稿しては、既成概念を覆すコ メントを発信していた。ファクトに立脚した分析と明快なロジックで展開する ことで、高い評価を得ている。一方で歯に衣を着せぬ言いっぷりで彼女のこと を疎んじている人もいるとも聞いている。なにせ、遠慮というものがあまりな いので、ズバっと言われた方としてはかなり堪えるのだろう。性格的にマゾで なければ2度目のコメントは聞きたくないというのが、ほとんどの人の反応に 違いない。 しかし経営者という人種は不思議なところがあって、意外とそういう愛の鞭に 飢えているところがある。うまくいっているときの企業の経営者ほどそういう ところがあるかもしれない。経済環境がめまぐるしく変化していくなか、これ までの実績や業界の慣習に染まり、浮かれた感のする他の役員を相手に、社長 とは別の人物が警鐘を鳴らして欲しいという企業のトップも多いのだと思う。 容子先生のスパイスの効いたコメントを聞きたいがために、社外取締役として 迎えいれ、おそるおそる社内の事情を開示していては、ズバっと言ってもらっ ては、ハッと我に返る役員たちの様子が目に浮かぶ。容子先生は、そういった 意味では20年前に現役のコンサルタントだったときの「大事なことはハッキリ と言う」という鉄則を、コンサルタントを辞めた後も実行しているのだ。 ○ビジネスプラン 一緒に投資をすることにした事業のビジネスパートナーはまだ30歳を超えたば かりの若いベンチャーキャピタリストだ。生の経営の現場でベタな実務をしっ かりこなすタイプで僕は信頼を置いている。これまでも難しいとされていた案 件を担当しきっちりと結果を出してきた。その彼がアドバイザーとして選んだ のが新聞のトップページを飾るような歴史的M&Aの案件を担当してきた名うて の弁護士と容子先生だった。 その2人を前に、海外において金融技術とモバイル課金技術を上手に組み合わ せて、新しい形態の銀行業を作れないか、という計画をこれまでプレゼンして きた。そもそも従来の形態の銀行業が機能しないほど、経済の発展が遅れてい る地域において、金融業を開始するなんてプランは、無茶に聞こえるかもしれ ない。しかし経済発展のためには、資金の出し手の存在は不可欠だ。これから 経済が発展する新興国では、国の平均年齢が20代という国も珍しくなく、国を 構成する市民の多くが起業家精神にあふれている。雇用の受け皿となる産業が ないので、就職をするというオプションも少ないというのが実際だが、理由は ともあれ、多くの若者は生活をしていくために何かの事業を開業しなければな らない。 しかし、開業しても事業資金を投資や融資というかたちで提供する金融サービ スが行き渡っていないことが多いため、工場を建てたり、人を雇ったりする前 向きの資金需要にこたえられていないのが現状だ。このことはアジアだけでな く、僕が育った南米やアフリカにも顕著で、せっかくの経済成長のポテンシャ ルが実態化できていないという、もったいない状況が続いている。 政府が誘導する政策的なプロジェクトへの投融資や、名門一族が外資系企業と 提携する際の資金需要に応えたくなるローカルの銀行家の損得勘定もよく分か る。事実、その方がとりっぱぐれが少ないだろう。そういった意味では、ロー カルの金融機関が、ローカルな小規模事業経営者に事業資金が回せない構造的 な要因が存在するといっても間違いではないだろう。そしてその結果、そうい ったニーズを埋めるようにマイクロファイナンスという業態が存在感を高める ようになってきているのである。 ○ズバっという 今回のビジネスプランのみそは、そういった経済成長が見込める市場のマイク ロファイナンスを行っているプレーヤーにターゲットを絞って投資をしていく ことところにある。 「セオリーとしては成り立つが、お金を出すだけなら、もっと大きな資金を持 った競合が現れたらすぐに真似されるじゃない。あなたたちならではの考えや 努力で、たとえばこれまで以上に回収率を改善できるようにできなければだめ じゃないの? たとえば日本からの資金提供だからこそ、資金の提供すること で、起業機会そのものを作り出すことはできるんじゃないの?」 相変わらずの歯にものを着せぬ言い方に、ドキッとせざるを得なかった。確か に、目の付け所だけでは競争力は生じない。そしてお金を出すだけでは、ロー カルの金融業と差別化は大きくない。ズバっと言われて、左脳だけで考えてい たことに気がつき、もう一段階自分たちにしかできない価値を生み出すことで、 ローカルビジネスが本質的に伸びて、資金需要がさらに生まれるような何かを 作り出す必要があることに気がついた。 市谷のフレンチは決して安くはなく、財布には堪えたけれども、社外取締役と いう職業がなぜ必要なのかを理解できたのは、大きな授業の成果だった。2時 間、食事をするという名目で会うディナーは2時間一本勝負のビジネスプラン の審査に近かった。しかし、同じ愛の鞭を打たれるなら、厳しいだけのおじさ んではなく、どこか目の奥にチャーミングなところがある、容子先生に打って もらったほうが、やる気も出るというものだ。 西山 浩平 Linkedin : Kohei Nishiyama Twitter : Kohei Nishiyama ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●リレーコラム:若手デザイナーの眼差し 第12回:鈴木啓太/PRODUCT DESIGN CENTER ○自己紹介 はじめまして。鈴木啓太と申します。 多摩美術大学を卒業後、(株)NECデザイン、イワサキデザインスタジオに勤務 しました。昨年の4月に、デザイン事務所「PRODUCT DESIGN CENTER」と「THE 株式会社」を立ち上げました。せっかくの機会をいただきましたので、それぞ れの事業と想いについて書かせて頂きたいと思います。 ○PRODUCT DESIGN CENTER PRODUCT DESIGN CENTERは、私個人のデザイン事務所です。地方の小さな工場 から、ブータン王室まで、現在国内外のさまざまなクライアントと製品づくり をしています。 大学を卒業してから、製造業の現場に育てもらった自負があります。品質を極 限まで追い込むことに注力する日本の製造現場には多くの感動がありますが、 その一方で、モノが売れないと年々疲弊していく現場のことがずっと気になっ ていました。そんな光景を見るにつれ、この素晴らしい文化を持続させるため の良いサイクルを作り出せないかと次第に思うようになりました。 「きちんと売れるものを作り、お金にし、次の挑戦につなげていくこと」。こ れをデザインで作り出せないだろうかとの想いが年々強くなっていき、独立す ることを決意しました。ちょうど1年前の、2012年の春のことでした。 「売れるということは、お金を出してそのデザインが欲しいと思ってくれたお 客さんがいた結果」という話を先日聞く機会に恵まれました。 数年前に私がデザインした「富士山グラス」という商品や、イワサキデザイン スタジオ在籍時にアシスタントとして関わったPLUS株式会社の「フィットカッ トカーブ」の商業的な成功は、私の中での「デザインの意味」を考え直させる 大きな機会になりました。 華やかな世界に憧れるだけのデザイン少年だった私は、社会に対してのデザイ ンがどう機能できるかを真剣に考えるようになりました。「技術やクオリティ の素晴らしさを事業化する」は、先日経済学者の竹中平蔵さんの講演会で伺っ たお話の1つでしたが、良いサイクルを生み出すためのデザインの可能性はま だまだ無限にあるように思えてなりません。 デザインが広義に問題解決の手段であるとすれば、そのアウトプットやデザイ ン手法も広義に渡るはずです。デザイナーによってデザインの哲学は違い、そ の違いはプロダクトに顕著化に表れ、それこそが「デザイン」として捉えられ ていた時代もありましたが、時代は少し変化しているように感じます。もっと 身軽に、自由に、気負いなく。可愛くても格好良くてもギラギラしていてもほ っこりしていても、それがクライアントの問題解決に適したものであるならば、 それを恐れないで、そんな活動をしていきたいと思っています。 ○THE THEは、good design companyの水野学さんと、中川政七商店の社長である中川 淳さんと私の3人で立ち上げた会社です。「THE○○」と呼べるような、新しい 定番を生み出していくブランドを目指し、商品企画から販売までを一貫して行 っています。 Levi's 501が「THE JEANS」であるように、「これこそは」と呼べるような商 品は世界中で長く多くの人に愛され続けます。今の市場は、他社との差別化を メーカーが求め過ぎ、本当に私たちが欲している「これこそは」と呼べるもの が実はあまりなく、市場のドーナツ化が顕著になってきている気がしていまし た。THEは、そのドーナツの真ん中を作っていくプロジェクトです。これまで には、グラス、コースター、お皿、Tシャツ、弁当箱、お椀の開発を行いまし た。 THEと呼べるようなものを作るためには、多くの人がそれを手にすることがで きることも大切です。THEでは、中川淳さんのサポートを受け、流通面も積極 的に行っています。2013年3月21日には、東京駅の旧東京中央郵便局敷地にオ ープンする「KITTE」(http://jptower-kitte.jp/)内に、第一号直営店「THE SHOP」をオープンさせました。プロパーの製品だけでなく、セレクト商品も扱 い、板チョコからDysonの掃除機まで、多種多様な商品が一堂に会しています。 THEのもう1つの特徴として、「企業コラボ」があります。プロパー製品の開発 だけでなく、すでにTHEと呼べるような商品を持っている企業とのコラボレー ションによる商品開発も積極的に進めています。現在発表されているものでは、 オレンジの表紙が特徴的なメモパッド「RHODIA」とコラボレーションした 「THE MEMOPAD」という商品があります。今までRHODIAと公式にコラボレーシ ョンした企業は、世界でただ1社「ポール・スミス」だけということで、世界で 2番目のコラボレーションの相手に「THE」が選ばれました。他にも、大手スポ ーツメーカーなどなど、現在業界を代表する数社とのコラボレーションプロジ ェクトが進行中です。もし興味を持って頂けましたら、是非THEまでご一報く ださい! ○今、興味のあること 「偉大な思想は胃袋から始まる」というヴォーヴナルグの言葉が好きです。私 が敬愛する魯山人も「食」からさまざまなクリエイションを生み出した人でし た。私も食にはこだわりを持ち、大切にしています。これから農業を始め一次 産業に改革が生まれそうな昨今、ますます食の分野は面白くなると感じていま す。食にまつわる事や、調理器具、キッチンや調理家電のデザインをしてみた いです。 最後まで読んでいただきありがとうございました。 PRODUCT DESIGN CENTER / THE 鈴木 啓太 Mail : contact@productdesigncenter.jp PDC URL: http://productdesigncenter.jp/ THE URL: http://the-web.co.jp  ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●編集後記 最近買ったプロダクト。ACアダプター込みで約3,000円のデジタルアンプ。こ れはTripath社のTA2020というチップを使用した中国製の製品で、なにしろ音 が良い。CDケース3〜4枚程度の体積のコンパクトサイズでありながら、市販の 据置型アナログアンプより個人的には良い音に聴こえる。ただ、残念ながら ”デザイン”されていない。世の中にはこのような革新的なモノでありながら、 デザインされていないモノは山ほどある。やはりデザインは技術の翻訳なのか なと、ふと思う花冷えの昼下がりでした。(M) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■○■pdwebメールマガジンでは広告のご利用をお待ちしています。■○■ イベント/セミナーの告知や集客、新製品のご案内に。臨時増刊もあります。 ■○■お問い合わせはinfo@pdweb.jpまで。料金:1行6,000円〜。 ■○■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■取材・執筆・DTPデザイン・印刷物納品を行います! カラーズ(有) ■企業のユーザー事例、パンフレット、Webコンテンツなどの制作を行います。 ■お問い合わせはinfo@pdweb.jpまで。お待ちしています。■■■■■■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ pdwebメールマガジンNo.36 2013年3月29日発行 2,700部配信 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓   pdwebメールマガジン登録変更および解除のご案内 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ※このメールに返信はできません。配信アドレスの変更や停止を希望される 方は、pdweb.jpのトップページ右側の登録フォームにて操作をお願いいたし ます。 http://pdweb.jp ┏…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┓ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥   編集・制作:pdweb.jp編集部   〒151-0071 東京都渋谷区本町1-20-2-909 カラーズ有限会社   お問合せ先 info@pdweb.jp   Copyright(C) Colors.,LTD. 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