┏…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┓ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥       pdwebメールマガジン第19号・・・2011/10/28       編集制作:pdweb.jp編集部 http://pdweb.jp ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ┗…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┛ ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ● pdwebメールマガジン第19号 目次 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ●連載コラム:西山浩平の空想デザイン 第6回:物質の消費によらない経済成長 ●上海的モノ生活 第13回:穴場の布屋でオーダーメイド! ●編集後記 ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●連載コラム:西山浩平の空想デザイン 第6回:物質の消費によらない経済成長 ○ヨガ教室の中の女性経営者 ヨガのレッスンに来ている人の中にずっと気になる女性がいた。50歳過ぎに見 える彼女はしゃんと背筋が伸び、身体は柔らかく、ヨガのポーズも正確だ。き っとヨガを何年も続けているに違いない。ヨガを長年やっている人の中には、 どこかヒッピーぽいところや、エアロビのインストラクターのようなところが ある人が多いのだが、その女性にはむしろどこか経営者然としたところがあっ た。ヨガの教室で見かけるよりは、役員会議室のテーブルのならびに座ってい るほうが自然な雰囲気だ。ずっと何をしている人か分からないままでいたのだ が、ある日声をかける機会がめぐってきた。その日はたまたまレッスンに来て いるのは私と彼女だけであった。ヨガの後に朝食に誘ってみたら、にっこり応 じてもらえた。 ○ベルリンの壁の向こうでの起業 レストランでテーブルについてから、簡単に自己紹介をした。アレクサンドラ というファーストネームからだけでは、どこの国のから来たのを類推すること はできない。しかしクイーンズイングリッシュを話す彼女は、イギリス人に違 いないと考えた。なので「英国から来られたのですか?」という問いに「ポー ランド」という答えが返ってきたときは、いささかビックリした。ポーランド 語とロシア語も話すのであろう彼女には、東欧の人に良くあるアクセントがな い。失礼だと思ったが「でも、英国の学校で勉強されたか、幼少をすごされた のですよね?」と聞いたら、彼女はまじめな顔で、「私はベルリンの壁が壊れ る前のポーランドで育ったし、ポーランドの大学を卒業したのですよ」と答え た。どうしても違和感があったので、「それにしてはきれいな英語を話されま すね」と譲らずに聞くと、今度は少し微笑しながら、お皿の上のフルーツを切 る手をとめて、「私はポーランドの経済が自由化された後ずっとインテリア資 材の商社を経営していたので、そのおかげかもしれないわね」と答えてくれた。 やはり、彼女は経営者であった。少し前に事業を売却して、今は引退生活を楽 しんでいるという。きっと親の世代からのビジネスを継承し、実際の経営は番 頭さんに任せていたのだろうと思った。しかしまた、読みは外れた。彼女は、 大学を卒業すると同時にインテリア資材の販売業を1人で立ち上げたという。 土木の世界ほどではないが、ゼネコンとやりあって大きな仕事もこなしていた という。筋金入りの企業家である。道理でかもし出す雰囲気が違うわけだ。 ○ポーランドの経済成長とファミリービジネス 30年前のポーランドは東欧諸国の中では自由であったとはいえ、決して自由経 済圏ではなかった。経済は停滞し当時は起業どころではなかったはずである。 「大学を卒業しても就職先がなかったのですよ。それで、仕方なく自分で起業 をする道を選んだのです」。ポーランド国内では業界大手の規模の企業にまで 成長させたというのだから、それなりの大人物である。経済を自由化したポー ランドは1980年代から2000年後半まで間にかなりの勢いで、新しい住宅が供給 され、そしてその住宅の中を西側のもので埋めていったのであろう。デザイン の優れた雑貨、インテリア資材を西ドイツ、フランス、イタリア、北欧諸国か ら仕入れ、これまでずっと物質の統制があり我慢を強いられてきた人々に売っ ていたのだろう。そして、家の中に堰を切ったように彼女の輸入した物品は流 れ込んでいったに違いない。早送りのチャップリンの映画を見るように、海外 から輸入した資材を家の中に運び込むポーランド人の姿が目に浮かぶようであ る。そして、その消費が行われるたびにアレクサンドラの事業は大きくなった のであろう。しかし、彼女の会社を成長させたエンジンは彼女のファミリーに あった。 彼女は夫のことを仕事人間と評した。彼が会社を社長として切り盛りして大き くしていったという。彼女は会長として残りながらも男の子を1人育てた。し かしすべてに潮時というものがあるように、ポーランドの建築業界の経済成長 は伸び悩み始め、夫と妻の仲もかつてとは違ったものになっていった。そして、 彼は会社を選び、妻は子供を選んだ。アレクサンドラはすべての株式を売却し、 会社との関係を絶ち、そして夫婦の関係も解消した。 ○潮目 ヨガを続けていると顔立ちがすっきりしてくるものである。アレクサンドラも、 長年ヨガを続けているというだけあって、しわもなければ、贅肉もない。経営 者特有の匂いというか、一種の鋭い目つきはきっとこれまでの苦労のせいだろ うが、実に吹っ切れたいい表情をしている。「今の私には、ヨガと一人息子の 成長が生きがいなのです」という彼女は実に幸せそうだ。彼女の話をさらに聞 いていると、「わたしは今、多くの時間を旅して過ごしています。気に入った ところがあれば、そこに長く滞在し、気が向いたら時々息子に会いに行きます。 持ち物は持ち歩けるだけで、実に自由です」という話を聞いていて、私はふと 心に浮かんだ質問を口にしてみた。「アレクサンドラ、あなたは普通とは違う 決断をとって、ここまできました。卒業直後に起業したり、自分が起業した会 社を別れるだんなさまに売却したり、持ち物をほとんど持たない生活をしたり、 どれも普通は下すのが難しい決断ばかりです。どうしてあなたはそのような決 断が下せたのですか?」。彼女は、「潮目を読むの。欲を出してはいけません。 すべてはタイミングです。私が会社を売却した後に、ポーランドの経済は成長 が鈍化し、会社の業績も伸び悩み始めました。リーマンショックの起こる前で もありました。私はある意味、できるときにできることをしたことで、最も高 値で株式を売ることもできたわけですし、経営が悪化した会社に考えの合わな い夫と一緒にいることをせずにすむようになったわけです」。 経済が成熟にするにつれて、物質の消費量は減っていく。家庭の中に必需品は 行き渡り、消費の中心は食品や消耗品を中心にしたものにシフトしていく。む ろん耐久消費財には寿命があるので、壊れたら買い替えがなされ、その分の需 要は必ず定期的に発生する。だから完全に物質の市場がなくなることはない。 しかし、ある程度まで物品が行き渡ると、普及期にあったような経済成長が見 られなくなるのは当然である。耐久消費財を輸入していた彼女は西側のヨーロ ッパで起こっていたことが、早晩東ヨーロッパでも起こり始めることを肌で知 っていたに違いない。 ○アフリカ、アジア、南米のアレクサンドラ 今後、アフリカ、東南アジア、南米に、次々とアレクサンドラが何人も生まれ るに違いない。洋服や家具などデザインの良いものを購入することで得られる 満足感は、これまで経済的に制約があった消費者にとって、麻薬のように心地 がよいに違いない。生活が目に見えて豊かになっていくし、幸せを達成してい くような感覚に後押しされ、新興国における消費者の購買はずっと続くだろう し、それを可能にする輸入商社が商売を拡大するに違いない。そしてますます 経済成長が促されるであろう。だがしかし、やがて社会は成熟し、経済の成長 はかげりはじめるだろう。 そのとき、これから生まれるアレクサンドラたちは、やはりものを所有しない 自由人になっていくだろうか? 西山浩平 Linkedin : Kohei Nishiyama Twitter : Kohei Nishiyama ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■○■pdwebメールマガジンでは広告のご利用をお待ちしています。■○■ イベント/セミナーの告知や集客、新製品のご案内に。臨時増刊もあります。 ■○■お問い合わせはinfo@pdweb.jpまで。料金:1行6,000円〜。 ■○■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●上海的モノ生活 第13回:穴場の布屋でオーダーメイド! 稲吉実菜子/フリーライター 上海の骨董街にあるお気に入りの布屋さん。プレハブ造りの狭い空間に所狭し と布が並べられ、置ききれない布が外にまで置かれています。味気ない外観な がら、ここにこんなすてきな布が? という豊富な品揃えに加えて、オーダー メイドが可能とくれば、女子的には気分もアガるわけです。 ○布市場よりハイレベル? 上海には野菜市場、食器市場、ニセモノ市場(!)などなど、市場と名がつく ものが数多くあり、もちろん布市場も存在します。そこには布地を扱うお店が ひしめき、スーツやシャツ、ワンピースなどオーダーメイドできることでよく 知られています。 この布市場、上海在住の日本人の間ではとても有名で、オーダーメイドにはま る人も多いとか。私も好奇心に駆られて過去に数回作ってはみたものの、いま いち出来上がりに満足できずにいました。そんな布市場より私が気に入ってい るのが新天地の近くの東台路骨董街のはずれにある布屋さんです。 夫婦で営む間口一間ほどの小さな空間ながら、中国伝統の柄ものから藍染め、 はてはマドラスチェックのような一見西洋の柄かと思わせるようなものまで、 幅広いセレクトが特徴。なかにはデッドストックの生地もあり、お母さんが親 切にあれこれ見せてくれます。 ○オーダーメイドももちろん可能 こちらも布市場同様にオーダーメイドが可能。しかも、布市場だと作りが雑だ ったりリクエストに応じてくれなかったり、なんてことがありますが、ここは もっと寛容。店内でミシンに向かうお父さんと直接やり取りできるので要望が 伝わりやすいのです。 比較的硬めの素材が多いのでバックやクッション、ランチョンマットやコース ターなどが向いてそうですが、シャツなどもOK。店内にはサンプルがあるので それを真似してもいいし、パーツを替えてアレンジしたり、手持ちのものを持 ち込みコピーしたりすることも可能。何を作ろうか考えるだけでワクワクです! ○気になる仕上がりは? 特筆すべきはさすが中国、オーダーなのにとても安いこと。安かろう悪かろう な仕上がりも実際に多く、出来を見るまでハラハラさせられる中国でのオーダ ーメイドですが、こちらはきちんと仕上げてくれると感じています。たとえば 私が作ったバックは裏地を別柄に、ハンドルはレザー、さらに上部にチャック をつけるというオプションを指定してもトータル2,500円ほどでした。 サイズを指定して作ってもらったキッチン用クロスに至っては1枚100円ほどで、 日本のこじゃれた雑貨屋でお高く売っていてもおかしくないような出来上がり。 思わず友達と「日本で売ったらビジネスになりそう?」と盛り上がってしまい ました。 布市場同様に簡単なものなら数日で仕上げてくれるので、上海旅行の記念にも いいかもしれません。日本語は通じませんが、こういう買い物の時ってなぜか 意図が通じるから不思議なもの。心配ならコピーしたいものを持ち込んだり、 絵を描いてサイズを指定したりすれば、その通りに仕上げてくれますし、サン プルを購入することも可能。布好きさんにはおすすめです! 写真 http://pdweb.jp/mailmag/19aph.jpg キッチンに掛けたらすてきかなと思い作ってもらったクロス。中国風なものか らヨーロッパ的なものまで、チェック柄がとくに充実してました http://pdweb.jp/mailmag/19bph.jpg サンプルを元に作ったバック。ティッシュポーチはもともと持っていたものを コピーしてもらいました ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●編集後記 ○スティーブ・ジョブズの訃報を聞いて、思わずiPod touch 64Gホワイトモデ ルを購入してしまいました。ジョブズが生前手がけた最後の製品の1つだからで す。iPod touchは1世代前のモデルを現役で使用していて、次は「5」が出たら 買い換えようと思っていたのですが、残念ながら(ジョブズの手による)次は 永遠と来ないことになりました。進化の激しいIT業界の中で、ジョブズの魂は 今後のアップル製品に宿るのか。今後のIT世界の方向性を決定していくのは誰 なのか? そんなことを思いながら、最後のジョブズマシンを使い込んでいき ます。(M) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■取材・執筆・DTPデザイン・印刷物納品を行います! カラーズ(有) ■企業のユーザー事例、パンフレット、Webコンテンツなどの制作を行います。 ■お問い合わせはinfo@pdweb.jpまで。お待ちしています。■■■■■■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ pdwebメールマガジンNo.19 2011年10月28日発行 2,400部配信 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓   pdwebメールマガジン登録変更および解除のご案内 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ※このメールに返信はできません。配信アドレスの変更や停止を希望される 方は、pdweb.jpのトップページ右側の登録フォームにて操作をお願いいたし ます。 http://pdweb.jp ┏…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┓ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥   編集・制作:pdweb.jp編集部   〒151-0071 東京都渋谷区本町1-20-2-909 カラーズ有限会社   お問合せ先 info@pdweb.jp   Copyright(C) Colors.,LTD. 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