┏…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┓ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥       pdwebメールマガジン第18号・・・2011/9/26       編集制作:pdweb.jp編集部 http://pdweb.jp ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ┗…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┛ ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ● pdwebメールマガジン第18号 目次 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ●連載コラム:西山浩平の空想デザイン 第5回:しまってあるアイデアをどうするか ●上海的モノ生活 第12回:実は月餅は季節商品だった? ●編集後記 ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●連載コラム:西山浩平の空想デザイン 第5回:しまってあるアイデアをどうするか ○ガランとした状態がいい 一人暮らしをしていたときの話である。NYから来ていた知人ら数名を自宅の部 屋に招いて夕食をともにした。そのときの米国人のコメントは、「意外と東京 の部屋って広いんだね」だった。その部屋の広さは、せいぜい40平米強。数字 で見ると決して広いわけではない。しかし、後になって考えてみると彼がそう 思ったのには理由がないわけではなかった。今でもそうだが、私の部屋にはと にかくものがない。だから私が住み始めても引越しのときに部屋が持つガラン とした雰囲気はなくならない。近所に住む叔母曰く、殺風景。しかし私はその ガランとした状態が好きなのだからあまり変えようとは思っていない。がらん としていた方がメンテナンスも楽だし、急な大勢の来客にも対応できる。それ にはそれなりの秘訣があって、それなりのコストを払ってものを持たずに済む ライフスタイルを維持している。ある一定量を超えたら、ものは容赦なく捨て るという基準もずっと継続している。しかし、少しずつだが、クラウドの普及 とともに、ものを持たないという信条が変わりつつある。ものを持たないから、 ものの稼働率を上げるという考え方に変わりつつある。 ○部屋が狭いのではない、部屋を狭くしている 東京では夏物や冬物の衣料や道具をトランクルームに預ける需要が増えている という。部屋の床面積は増やせなくても、ものを減らせば、使える面積が広が るということに、大勢の人が気つき始めている。広さよりも部屋を狭くしてい るものの多さが問題だし、家の買い替えよりも使わないものを倉庫に預ける手 配の方がはるかに簡単だ。かく言う私もその例外ではなくトランクルームの長 年のヘビーユーザーだ。 部屋を片付けるという流れで最近私の周りで流行っていることに、自炊と呼ば れる行為がある。家中の本を自炊(本をスキャンしてデジタルデータ化するこ と)して、本棚そのものをなくしたある知人はその代表だ。自炊をする人たち は割り切っている。彼ら曰く本を手元において活用するという観点からは、本 はデジタル化したほうが持ち運べて楽だしそれによってものを減らすことがで きるのだから躊躇する理由はないという。 我が家にもタブレット端末がやってきて以来、書類の読み物はほとんどその1 台で済ませている。以前はPCからわざわざプリントアウトしていたのだからこ れは大きな違いだ。ユーザーインターフェイスが人間に対して優しくなったと いう側面もあるが、とにかく今日、私たちが扱う情報の量をすべて紙にプリン トアウトしていたのでは、物理的なスペースのコストが高く過ぎるという点も 見逃せない。 ○どんどんたまる しかし、どんなに割り切ってもどうしても捨てられないものも存在する。親の 形見など思い出の本や、アルバムなどのなくなったら二度と戻らないジャンル のものである。良い装丁の本にはそれだけで存在価値がある。これらは仕方が ない。小さくて持ち運びのできるものだけに選りすぐる以外手はない。 本当に厄介だと思うのが、自分が生み出したアイデアが詰まった提案書、ドロ ーイングや作品の類である。そこに詰まったアイデアを実現すればもっと大き な価値に変換できるが、それができていないと思えてしまう、といった類の紙 の類である。アイデアが実現するまで、もったいなくてどうしても手元に置い ておきたくなる。 イノベーション分野で競合するドイツの事務所を訪問したとき、そこのチーフ クリエイティブディレクターがメモの類を大切にしていると言っていた。脳の 活動にもっとも近いのが、手でひねり出した落書きだというのだ。それを手元 において、何度も反芻していると、さらにその奥にあるひらめきに肉付けがで きて、提案書や企画書に育っていくという。この感覚は私もよく共有している。 だから、まだ機が熟していないけれど価値があると思ったアイデアはメモの状 態であったとしても、大切にとってある。 手元にあるメモや気に入った切抜きのスクラップブックは6歳のからの蓄積だ。 実家に置いてあるスクラップの量は積み上げた状態で15メートル近くにも上る。 雑誌から、2、3枚しか切り取らないので、その100倍近い150メートルの雑誌か ら、気になるものを抜き出したものだ。もちろん目を通して切り抜けなかった 雑誌はその3倍はあるであろう。その量は500メーター近いだろうから、本棚に して100棹分、小さな図書館分の読書の結果である。これらを捨てられずに、生 まれ育った南米から、日本までずっと40年近く持ち歩いてきた。空想的なアイ デアはこの情報の湖の水底からからふつふつと浮かび上がっては消えていく。 アイデアが詰まった過去の仕事の書類は、時間が経つにつれてどんどんたまる。 忙しくすればするほど、たまる。結果、たまり続ける。調査や分析、そして加 工にそれなりの時間を投下したわけなので、次に似たような仕事が来たときに また、使えるのではないかと思い始めると、手元に置いておきたくなるという のが、たまった資料を弁護する心情だ。自分の頭からひねり出した知的物だか らまた、生み出せるかというと、意外とそういうわけでもない。よいアイデア は、縁がないと自分の方にやってこないものである。だから、ヒントの詰まっ た資料はなおさら希少性を帯びてくる。価値のあるものが、どんどんたまるこ とは、素晴らしいことだと思う。ここには何も問題はない。 ○メモからキャッシュに変えるプロセスを設計して実行に移す メモを使わずに、保有し続けることにはストレスがついて回る。コストがかか って、捨てられずに、そしてどんどんたまっていく。これは、ここから資産価 値を見出してキャッシュに変えないと、早晩限界が来てしまう。巷で売られて いる、捨てる技術を説いたハウツー本には、それが何であれ、1年使わなかっ たら捨てるべきと書いてある、しかし洋服であるならいざ知らず、クリエーシ ョンであったらそれを作り出すにかけた、時間と労力を思い起こすと、そう簡 単には思い切れない。むしろ、それをきちんと価値につなげていくプロセスを 日々の生活に埋め込んでいくことの方が本当の解決策であるように思う。根本 のレベルで思うのだが、価値のあるものを捨ててしまうのは、間違っている。 価値があるはずのものを実際の価値に変えていないのが問題なのだ。 しかし、現実はそれらの資料を使うことは、本当にめったにない。いくら資料 を集めてからといって、悲しいかな、すべてに利用価値があるわけではない。 捨てられないなのなら、せめてどうにかして、上手に使う方法を考えるべきで ある。そうでないと資料を持ち続ける限り、維持するコストは増える一方だ。 それらの書類にも稼いでもらわないと、コストがかかるだけのものになってし まい、保有することの正当化がますますしにくくなる。 せっかくクラウドコンピューティングが普及して、フォトシェアリングやファ イルシェアリングが簡単にできる世の中に生きているのだから、時代が提供し てくれる環境を活用しない手はない。決定打となる手法はまだ暗中模索である。 しかし、それなりに実践し始めていることを、ざっくりとまとめると次の3つの ステップに沿って進めていることになる。1.デジタル化 2.人と共有 3.販売 開始だ。 まずは、デジタル化。デジタル化するには、まずファイリングを行わなければ、 と考える向きは多いに違いない。かく言う私も長らくそう考えてきた。そして、 随分多くの文房具(しかも時には非常に高級な!)と時間を投資してきた。 「散らかしておくと情報は使えないので、ファイリングはきちんと」は、もう 過去の考え方となりつつあるような気がする。 分類は時間がかかるし、分類項目はすぐに意味を成さなくなってしまう。整理 学の分野で一世風靡した早稲田大学の野口由紀雄氏の超整理法の良いところは、 封筒に書類を入れて、分類をしないということである。しばらく使わなかった ら自動的に捨ててしまうというところは賛成できないが、分類をしないという ところは大賛成である。ピンときたら、すぐにデジタル化してしまう。これは 頭を使わないし、紙の方はその場で捨てられるので、癖にするとストレスが随 分と減るし、ものはたまらなくなっていく。しかしアナログのメモや切抜きを デジタルにするのだけでは、問題の解決の先送りに過ぎない。サーバーの中に は、データはそれまで以上にどんどんたまっていっているからだ。なので、デ ジタル化したら、分類せずにすぐに人と共有してしまう。 だから、デジタル化したら、次に情報を人と共有をする。大切なのは、これら の資料を大勢の人に使ってもらって、その利用履歴を頼りに、何に自分以外の 人が利用価値を見出しているかを知ることだ。だから、デジタル化の次のステ ップは自分以外の人と共有となる。自分が出したアイデアである以上、自分一 人ではいくらアイデアがつまった資料でも、使い方の度合いは上がらないだろ う。本来は資料を別の視点で見てもらって違うコンテキストで利用価値を見出 してもらうべきだ。 アイデアが詰まった企画書や書類は、基本的にページごとにばらしてしまって、 情報の断片にしてしまう。そして、自由に再編集しやすくしておく。アイデア は、他人に話してその人がわくわくするか、ものに落としてみて役に立つかし なければ、価値がない。もしくは足りない。そう考えるとアイデアを共有する ことは、どんどん人の手を借りてカタチにしていく方向に持っていく上で理に かなっている。 最後に、販売開始。他人とデータを共有しはじめたら、チームを作ってラピッ ドプロトタイピングを開始する。自分のアイデアをカタチにしてもらったら、 フィーを払うか、ロイヤリティの共同所有契約を結ぶ。プロトタイプを作って いくことは考えていたことを人に伝えるに役立つだけでなく、ものにできるの で、実際に道具やものとして、限定的ではあるが役に立ちはじめるし、その時 点から販売が開始できる。つまり要望に応じて注文をさっさととり始めてしま うのである。 SNS上でアイデアをつぶやくと、思いのほか、反応が返ってきたりしてびっく りすることがある。また、誰かが写真にタグを付けてくれたりすると、自分で はそろわなかった資料がすぐに集められたりする。単なるインターネットでは 得られなかったつながりが、アイデアを共有することで得られたりするのは、 本当に面白い。 ○アイデアの稼働率を上げる 商品や商売のアイデアを公知にしてしまうのは、私も含めて多く人が躊躇する だろうけれども、内々のごく親しい仲間だったら、そうでもないだろう。face book上やTwitterでこういった限られた人だけが参加できるSNSとアイデアの共 有という活動が融合していったら、知的資産がキャッシュに変わっていくプロ セスを大いに加速してくれるに違いない。実に楽しみな未来だと思う。 西山浩平 エレファントデザイン株式会社 代表取締役 Linkedin : Kohei Nishiyama Twitter : Kohei Nishiyama ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■○■pdwebメールマガジンでは広告のご利用をお待ちしています。■○■ イベント/セミナーの告知や集客、新製品のご案内に。臨時増刊もあります。 ■○■お問い合わせはinfo@pdweb.jpまで。料金:1行6,000円〜。 ■○■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●上海的モノ生活 第12回:実は月餅は季節商品だった? 稲吉実菜子/フリーライター 中華街に行けば必ず売っている月餅。ということは、中国に行ったら至る所で 売っていると思っていたら大間違いでした。年中売っているのは国外のチャイ ナタウンだけかも? 今回は中秋節の季節商品である月餅について。 ○意外に入手困難? 昨年の10月に月餅好きの友人が来海。実は個人的に月餅はあまり好きではない のですが、本場の月餅が食べたいとのリクエスト。中国だから月餅なんてどこ にでもあるだろうと高をくくって2人で探し始めたら、これが意外にも売って いるところがほとんどないので驚きました。 探し回った挙句にやっと見つけたのは大きな食品デパートの陳列棚にひっそり 置かれた月餅のみ。中国人って月餅食べないのか? と不思議に思ったもので す。その後、早いもので中国に来て1年が過ぎた頃にやっと月餅の謎が判明。 実は月餅とは中秋節(旧暦8月15日の中国の祝日で今年は9月12日)に月を鑑賞 しながらいただく季節の食べ物だったのです。 ○街中が月餅の宣伝でいっぱいに あれだけどこにも「月餅」の文字を見ることはなかったというのに、8月に入 ると月餅の広告が街中に溢れるように。地下鉄の構内はもちろんタクシーやバ スの車体はほぼ100%が月餅の宣伝に変身。実際、この時期は大きな月餅の袋 をいくつも抱えた人を目にすることも珍しくありません。 この時期だけは香港製のものから、有名レストランの月餅、はたまたスターバ ックスのオリジナル月餅やハーゲンダッツの月餅アイスまで種類も選びきれな いほどに豊富です。しかも、中国には中秋節に月餅を送り合う習慣があるので、 ギフト用の立派な箱に入ったものが中心なのが驚きでした。値段も8個の箱入 りで2,000〜3,000円するので、個人で買ってお菓子代わりにつまむという雰囲 気ではまるでないのです。バラ売りが基本の日本とは気合いが違う? ○日本のお歳暮やお中元以上? また、会社のお得意様などにプレゼントするように月餅券なるものまであるの です。これなら大きい月餅箱を持参しなくて済むし、もらう方も好きなときに 引き取りにいけばいいので楽というわけ。ちなみにまとめてこの月餅券を買え ば30%くらい安くなるので、この時期は各種月餅券を扱っている業者の広告が、 会社宛てにガンガンFAXで流れてくるほどです。 さらには会社から月餅代が支給されることも。これだけ月餅を送ることが国民 的行事になっているとは・・・。ただし、この月餅代には月餅税がかかるために 「月餅にまで税をかけるなんて!」と反発の声も上がったようです。 と、 なにかと興味深い月餅商戦ですが、中秋節を過ぎた途端にまた影の薄い 存在へ逆戻り。ちなみに、ちょうど中秋節の時期に日本に行く予定があったの で、件の月餅好き友人にスターバックスの月餅をプレゼントしたところとって も喜んでもらえました! スタバらしいコーヒー味月餅なんてのも入っていて、 なかなか美味だったとのこと。なんといっても、また来年までさようならです から。 写真 http://pdweb.jp/mailmag/18ph.jpg 月餅券利用で安く買えたスターバックスの月餅。安心の(?)香港製で味もな かなかだったとのこと ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●編集後記 ○モノのデザインは、「調和するデザイン」と「主張するデザイン」の2つに 分ける観点もあると思う。例えば「佇まい」とは、主張するデザインを評価す る場合に用いる言葉であって、調和するデザインには、そういった形容詞は存 在しないのかもしれない。ただ調和するデザインというのも一言で括れず、場 の調和もあれば心との調和もありそうだ。個人差も大きい。というわけで最近 は、「なんでもないモノ」に、そのデザイナーの大人心を見つけるのが密かな 楽しみになっている。それと、あるモノを使い込んでいくうちにようやく気付 かされるデザインの効用というか仕掛けなども、隠しアイテムを仕込まれたよ うで、にくいなあと思う。(M) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■取材・執筆・DTPデザイン・印刷物納品を行います! カラーズ(有) ■企業のユーザー事例、パンフレット、Webコンテンツなどの制作を行います。 ■お問い合わせはinfo@pdweb.jpまで。お待ちしています。■■■■■■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ pdwebメールマガジンNo.18 2011年9月26日発行 2,400部配信 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓   pdwebメールマガジン登録変更および解除のご案内 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ※このメールに返信はできません。配信アドレスの変更や停止を希望される 方は、pdweb.jpのトップページ右側の登録フォームにて操作をお願いいたし ます。 http://pdweb.jp ┏…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┓ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥   編集・制作:pdweb.jp編集部   〒151-0071 東京都渋谷区本町1-20-2-909 カラーズ有限会社   お問合せ先 info@pdweb.jp   Copyright(C) Colors.,LTD. 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