product design WEB Design Competition 2008  
 
 pdwebデザインコンペ2008大賞発表! 明日のカタチ、生きたカタチを求めて
 
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  ■総評
多数のエントリーありがとうございました。そしてお疲れさまでした。

「pdwebデザインコンペ2008」は、課題も自由、表現方法についてもかなり自由という取り組みやすいカタチをとり、入門的コンペとしてスタートしました。

結果としては、他のコンペでも優勝もしくはトップを争う人達が多く参加してくださり、初回でありながら中身の濃いコンペとなりました。

本コンペの最大の特徴は「すべての作品を閲覧できること」です。それによって「なにげなく良いもの」に映ったものが実はとても背景に大きな努力と学習の結果であることを、審査委員やコンペに参加した人だけでなく、今回は「見る側」であった多くのプロダクトデザインを目指す人達に理解してもらえたということでも意義が大きい。
大賞の南さん、U22賞の西村さん、どちらもカタチと行為だけが浮かび上がるように端的に表現されていたと思います。その一方、微妙な立場の方々を選んだという思いがあります。

南さんは、大学で学生さんを指導する立場であり、西村さんはU22というくくりではすでにオーバーしているからです。U22は「学生である」という解釈を優先して最終的に決定しましたし、指導者が参加してはいけないという規則もありません。

すでに多くのコンペで結果を出している南さんは、1回目にして「殿堂入り」とさせていただき、この賞は卒業証書と考えていただければと思います。

来年早々には2回目の募集が始まります。インターネットという媒体を通して「プロダクトデザイナーを目指す人の今」を知ることのできる貴重なコンペとして、「pdwebデザインコンペ」はますます重要な場となるでしょう。

「自由」を前向きに捉え「しあわせにできるデザイン」を創造してください。

審査委員長 秋田道夫

■審査委員講評

倉方雅行
No.32「karrat」:雨の日がネガティブかどうかは別として、そうしたネガティブな自然状況をデザインの力でポジティブにしたいという気持ちが嬉しかった。脚部にあれほどのボリューム感が必要かどうかと思うので、本来の機能を使用しない晴天の場合でも、たたずまいが自然になるような工夫は必要かと思う。また、電源や乾燥効果は疑問だが、新規性はないものの、あえて白熱球を使用し熱を乾燥に使いたいという作者のアイデアには、白熱球が省エネ的に悪役になっている現状に、エールを送っているようにも感じる。

No.47「即乾ハンガー」:デジタルツール時代のWebコンペという特徴からは、やや外れるところもあるかと思うが、何気ない日用品のハンガーにテクノロジーを使用せず自然現象の効果を利用して、乾燥速度を速めようとした所に共感する。できるならはモデルでの効果検証などで性能を掘り下げてみたいところだ。デザイン的には線材終端部の仕上げや曲げ方に、もうひとつ工夫が欲しいと思う。製品化は簡単だろうが、商品化を考えるとかなり流通面でハードルが高そうだと思う。

No.64「TOMARIGI」:市場に似たものはいくつかある。しかし枝や幹の構成が大きくデザインファクターに左右されることを思うと、枝のデフォルメの工夫がよりリアルさを出していると思う。機能的にもその影響は大きく、視覚的形状が引っかけるなどの行為にアフォーダンスしている点を評価したい。商品性としては具現化できる可能性はあるが、類似表品とのある種の差別化が必要だろう。また、おそらく製品化したときの値頃感とコストのバランスもやや難しさを感じる。

芝 幹夫
私が選んだ作品は、No.36「TOWEL MAN」、No.57「source」、No.110「PINnoKI」、以上3作品です。

デザインの良し悪しを決める場合の最も根本的な基準としては、論理性と感性の一致が感じられるかということではないかと思います。人間の頭脳の中でこの2つの事象は右と左として相反することが多いものですが、良いデザインに遭遇すると頭の中がスキッリとした気分になるものです。そのような基準で選考しました。

そういった意味では論理性に訴える部分として、考えた背景とか、どういった場面を想定したかとか、文章による説明が全体的に少し足りなかった気がしています。

「TOWEL MAN」と「PINnoKI」には作品に込められたユーモアとリアリティに、「source」はデザインとしては不完全ですが、昔トイレの手洗いによく見かけられた、水の出口の直下にハンドルがある水栓金具を思い出し、新たなトライをしてみたくなる気分にさせられた点を評価しました。確かに小さな穴のあいた球状のハンドルは水質によっては、変色または詰まりを起こす可能性がありますが、水質のバロメータとして捉えれば面白いかもしれません。

中林鉄太郎
No.118「Wood Clock」:書店でのビジネス書関連の棚には「ライフハック」や「仕事術」といったフレーズを用いたタイトルが多い昨今。「時間管理」というテーマは、それらの基本だ。問題解決への手法においても、著者独自の経験に基づいたノウハウとして、ツールの種類は問わず紹介されていたりする。南さんの「Wood Clock」は、そういう時代の空気感を、さりげない手法と着眼点で、現代のインテリアとも調和するカタチとフィニッシュで届けてくれた。子供の頃に書いた円グラフのような夏休みの予定表。そこでは塗りつぶしていた「キープしなければいけない時間帯」を、1時間単位のピースの反転で予定をブロックさせる…というのは、目と手の両方で意識付けできるという意味でもスマートなアイデアで共感した。デスククロックの展開も可能性がある。

No.63「WATAGE」:形とサイズが適していて、重量も手頃であれば、ペーパーウエイトの機能は果たしてしまう。あるシーンで成立する人とモノとの関係を見ると、日常的にはこういうラフなつながりが多かったりする。1枚のメモが風で飛ばないように…と、モノの「ある状態」を一時的に「保持(HOLD)」するための「小さな重石」は、モノのためというよりは、「意識すること」への重石なのだ。西村さんの「WATAGE」は、そういう「重石」の意味に綿毛が生えている。外出先から戻った机の上に「WATAGE」が置かれていて、その揺れる根本にはメモが押さえられているシーンが想像できた。メモを置いてくれた人の「心遣い」が、空中で揺れる「綿毛」のさりげなさとシンクロする。「キモチのカタチ」…そんな言葉が浮かんできて共感できた作品。

No.33「Health meter books」:「手中に収める」という言葉があるが、ケータイ電話は、健康管理さえ「掌(たなごころ)」の中に収めそうな時代だ。そう遠くない将来、体重計はさらなるテクノロジーを取り入れ、体内臓器の詳細なスキャニングも行えるようになるだろう。そんな「明日」が訪れたとしても、「人の行動と意味」のリンクに共鳴するようにデザインを定めていく…というプロセスは変わらない。小林さんの「Health meter books」は、現代に求められているインテリア空間との距離感や、近くで共存するであろうバスマット等のデザインともリンクし、book(記入する)して、bookのように片付けるという、意味と機能のリンクもある。機能とデザインが、違和感のない素直な佇まいで統合されている点に共感した作品。

森屋義男(pdweb編集部)
受賞者の皆様、おめでとうございます。そして、惜しくも選にもれた作品であっても、入選と僅差のものが非常に多かったことをご報告しておきます。受賞作品に関しては、審査委員長をはじめ審査に関わった皆さんが真摯なコメントを寄せてくださっているので付け加えることはありませんが、以下の2作品に関して、非公式ではありますが「pdweb編集長賞」を進呈したいと思います。
No.04「デスクトップヘッドホンステレオ」坂本一夫(42歳)
No.21「Crebox」鷲尾和哉(26歳)
両作品ともカタチ、アイデア、実現性に加え、そのプレゼンテーション力も優れていると感じました。この両作品をはじめ、今回入選を果たせなかった皆さんも次回またぜひチャレンジしていただければと思います。
最後になりますが、運営側の至らない点を親身にご指導いただいた審査委員の皆様、そして新メディアの初のデザインコンペにもかかわらず、協賛いただいた各クライアントの皆様に、この場を借りて厚くお礼申し上げます。

■審査方法と審査経緯
「明日のカタチ、生きたカタチ」をテーマとした本コンペでは、119作品の審査に際して、まず以下の審査基準を設けた。「カタチ」5点、「アイデア」5点、「実現性」5点、合計15点(0.5単位なので実質30点)を最高得点とし、審査委員長および審査委員に全作品を採点していただいた。
審査委員長および審査委員4名によるそれぞれの上位3作品をまとめ、合計12作品を「入選」とした。今回は南政宏氏「source」と那須雅人氏「TOWEL MAN」が2名の審査委員に選ばれていたので、合計10作品となった。
そして審査委員長の秋田道夫氏によって、「入選」全10作品の中から、大賞およびU22賞が選出された。
また優秀賞(スポンサー賞)も原則的に「入選」から各スポンサーに選んでいただいたが、メーカー独自の視点も尊重し、入選に適切な作品が含まれなかった場合、全応募作品をその対象とした。

 
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