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インタビュー

世の中はロボットやAIなど、未来に向けてのテクノロジーが徐々に実現化されている。こうしたトレンドはおもちゃの世界も同様で、一昔前では考えられなかった機能を持つ商品も増えている。ここではロボット系おもちゃの展開を積極的に行っているタカラトミーに、ロボット系おもちゃの現在、そして明日を聞いた。

株式会社タカラトミー
マーケティング本部ニュープロダクト事業部事業部長
木村貴幸氏
マーケティング本部ニュープロダクト事業部マーケティング課課長補佐
大伴貴広氏



タカラトミーのロボット系おもちゃのターゲット

--まず、タカラトミーのロボット系おもちゃの現在の主力商品をご説明願います。

大伴
:2018年の年末から力を入れているのが、小学生男女~ファミリー向けのロボットわんちゃん「ハロー! ズーマー ミニチュアダックス」、50歳以上~シニアの方々に向けた「マイルームロビ」、そして小学生の男子をメインターゲットにした「ハロー!QB(キュービー)」の3つです。いずれも価格は10,000円~15,000円帯の商品です。

犬型ロボットのハロー! ズーマー ミニチュアダックスですが、犬はペットとして愛され親しみのある存在です。そういったペット的ロボットをお買い求めやすい低価格で発売しています。「お手」「お座り」など日本語・英語あわせて約60の言葉を理解して、まるで生きているように自由に動くので、心が通い合うような関係を築けます。もちろん好きな名前を付ければ、それに応えてくれます。

言葉を理解してアクションを起こすことと、4足による犬らしい元気で楽しいリアルな動作に特化した点が魅力だと思います。ハロー! ズーマーはシリーズで展開していますが、今回のミニチュアダックスはより機能が向上し、完成度が上がってきています。

--犬型ロボットはソニーのaiboが有名ですが、御社のハロー! ズーマーは15,000円とリーズナブルな価格設定です。ハロー! ズーマーの開発、製造はカナダのメーカーとのことですが、その辺はどういった戦略からですか?

木村:おもちゃ会社ですので、手軽に遊んでいただける機能を低価格で提供することが第一です。左右の手足の動きをある程度簡略化したり、モーターを少なくしたりと、犬の動きをちゃんと表現しつつも、割り切った設計になっています。そういった点がおもちゃメーカーの発想によるロボット犬です。

ソニーさんはハイエンドで展開されていますが、我々はあくまでエントリーユーザーに向けて、初めてのロボット犬を提案するのが役割だと思っています。棲み分けですね。

--ハロー! ズーマーはあまりメカっぽくないところがいいと思います。

木村
:耳や尻尾をファブリックにして、触って気持ちよいという特徴づけができていると思います。

--モフモフできますね(笑)。

木村:そうです、そうです(笑)。色は白とピンクの2色です。ピンクの犬は実在しませんが、アニメの世界と同じで、実在しなくても成り立つのがおもちゃの特徴です。

--ハロー! ズーマーのシリーズ全体の売れ行きはいかがですか?

木村:ハロー! ズーマーシリーズは2014年にスタートして、5万体以上販売していますので、売れ行き好調です。

--続いて、マイルームロビは人型キャラですが、コンセプトとターゲットをご説明ください。

大伴:マイルームロビはデアゴスティーニの「週刊ロビ」と同じロボットクリエイター、高橋智隆氏のデザインによるキャラクターロボットで、音声認識を行い会話に特化したおしゃべりロボットです。新製品では生活環境を認識して会話ができるようになりました。気温や明るさをセンシングして、「暑いね」「寒くなってきたけど大丈夫?」など、状況に応じた言葉を発することができます。明かりを消すと「もう寝るの?」、朝テレビをつけるとリモコンに反応し「ニュースの時間だね」など、人の行動に対応した言葉も話します。

木村:週刊ロビは全部自分で組み立てると完成までに1年半ほどかかり、費用も総額で約15万円ほどになります。そういった時間と手間、お金をあまりかけずにロビを楽しみたい人に向け、キャラクターのライセンスをお借りして、週刊ロビとは少し機能を変えて提供しています。企画、開発はすべて当社で行っています。

人感センサーや環境系のセンサーは週刊ロビにはないものなので、週刊ロビと一緒においても楽しむことができるようにしています。また週刊ロビのロビは踊れますが、当社のマイルームロビは踊れない代わりに時計機能が内蔵されていますので、決まった時間に話しかけることもできます。

--マイルームロビのターゲットはどういった世代でしょうか?


木村
:2割くらいが小学生、残りの8割は40代以上の方で、50代をピークに100歳以上のユーザーさんもいらっしゃいます。アンケートによると、40代の方がご自分のご両親に贈る、大人から大人へのプレゼントといったニーズも多いので、通常のおもちゃとはまた違う売れ方をしています。シニア層の方が家族の代わりに話しかけたりする用途が多いようですね。

--例えばマイルームロビにスマートスピーカー的機能まで持たせることもできますね?

木村
:2015年に、NTTドコモさんとクラウド型おしゃべりロボットのOHaNAS(オハナス)という、今のスマートスピーカーの走りみたいなおもちゃを作りました。こういったおもちゃですと、ネットワークやスマートフォンが必要になりますが、シニアの方々だとむしろ通信がない方が手軽に扱えます。

また、マイルームロビは声にこだわり、週刊ロビのロビと同じ声優の大谷育江さんにお願いして、約2,000種類の言葉を話します。スマートスピーカーのような音声合成ではないので、マイルームロビの声は感情がこもっていて可愛らしいという点も受けている理由です。

--スマートスピーカー的機能まで内蔵すると声の問題もあり、確かに存在がぼけてしまうかもしれませんので、分けて考えた方がよいのかもしれませんね。

木村
:マイルームロビは同居人、ルームメイト的存在なので、コンシェルジュ型のスマートスピーカーとは棲み分けた方がよいかなと考えています。おもちゃ会社ですのでユーザーに寄り添える楽しいものがよいと考えています。

--そして
クルマ型ロボットのハロー!QBは、男の子が好きそうですね。

大伴
:ハロー!QBは、「はじめての友だちロボット」というコンセプトで、小学生男子がターゲットです。声をかけると近づいてきますし、元気な少年っぽいロボット語を話しながら、生きているような動きをします。またカードをスキャンすることで「占い」「音楽」「サッカー」などいろいろな遊びが楽しめます。こちらもカナダのメーカーが開発、当社では2018年夏から発売しています。

今は第3次ロボットブーム


--こういったデバイス、ソフトウェアを内蔵したおもちゃは今後どのように広がっていくとお考えですか?

木村
:世の中も子供たちも進化していますので、時代に合わせておもちゃも進化していきます。今のお子さんはデジタルネイティブですから、2、3歳児でもiPadやスマートフォンをすぐに覚えます。スマートスピーカーに話しかけるのも普通になって、街を歩けばPepperがいる。これからもっとロボットネイティブになっていって、ロボットに話しかけるという行為が当たり前になってくるでしょう。そういった世代が育ってくれば我々が作るおもちゃもその世代に合ったものになっていきます。

また技術が進歩してきたおかげで、さまざまなデバイスが使いやすく、また安くなってきていますので、おもちゃ化もしやすくなってきています。こういった技術の進歩を楽しいおもちゃ作りに生かせればいいと思います。

--タカラトミーといえばトミカ、プラレール、リカちゃんのイメージですが、こういったロボットおもちゃに参入してきたのは、時代の必然ともいえますね。

木村
:そうですね、おもちゃは時代に乗っかって成長しているものです。当社では1984年に音声認識を取り入れた「オムニボット」を発売しているので、実は30年以上前からロボットおもちゃを手掛けていました。当時は第1次ロボットブームともいえる状況で、ブームは10年くらい続きました。そのあとホンダのASIMOなど2足歩行ロボットのトレンドがありました。世の中的には、つくば万博(1985年)、愛・地球博(2005年)などの技術展のタイミングでロボットのトレンドがやってくる感じですね。

2足歩行のロボットおもちゃは、当社でも2007年に「i-SOBOT」を発売しています。ただ現在は2足歩行が普通になったので、逆に驚きがなくなってしまい、おもちゃとしては新製品の投入はしていません。そして現在はAIなども絡んで第3次ブームと言えるかもしれません。

おもちゃは世の中のトレンドの縮小版的なものなので、波にうまく乗りながら作ってきました。

--デジタルネイティブのお話がありましたが、今でもプラレールやトミカ、リカちゃんは大人気です。もしかすると、小さい子供がおもちゃに求めるのは、インタラクティブ性ではないのかもしれません。

木村
:3歳くらいまでの子供の発達レベルは昔から変わっていないですし、想像力で遊ぶので、そういう意味ではアナログのおもちゃが適しているのかもしれません。トミカなどもモーター付けて自動で走らせることもできますが、自分の手で転がして遊ぶことが楽しいのだと思います。

ロボット系おもちゃの今後の課題

--会話ができるマイルームロビを見ていると、老人はもっと深いコミュニケーションを求めてくる気がします。

木村:すでにそういったお話はありますし、研究もしています。

--高齢化社会の時代でロボットおもちゃはよりシニア層にとって大切な存在になるかもしれません。

木村:一人暮らしの老人など増えてくるでしょうし、長生きもされるので、シニア向けのニーズはあるでしょう。家に誰もいないときにテレビやラジオをつけている方が多いとお聞きしますけれど、それですと一方通行ですので、誰かと一緒に住んでいる存在としての人型や犬などのキャラクターおもちゃの役割はあると思います。

おもちゃと会話すれば頭の刺激になりますし、身体的にも良い効果があると言われています。本物の犬でも餌をあげるなどお世話することで脳が活性化します。ロボットおもちゃは餌はいりませんが充電したりと手間をかけることで老化防止につながるのではないかと思っています。お孫さんの世話をしていると老けにくいというお話しと同じですね。

マイルームロビは思った以上にシニア層に喜ばれているので、少しは役立っているのかなと思っています。

--今後のロボットおもちゃはどのようになるのでしょう?

大伴:新技術を取り入れて作る切り口のおもちゃもありますが、ユーザーがどういうことをしたいか、どういう感情をロボットに抱いてもらいたいかといった、人に寄り添う形を前提に考えたいです。今ある技術、昔の技術も応用して、そういったニーズに応えていきたい。新しい技術はコストも掛かりますし、それをおもちゃとしてうまく生かしきれない面もあります。

--シニア層に向けたロボットのキャラクターやデザインについてですが、例えばリカちゃんにロボット機能を持たせるなどの方向。また本体が樹脂や金属ですと触った感じに温かみがない気もします。

木村:リカちゃん人形がしゃべったら可愛いでしょうけど、そのままではデバイスが入れられないですね。モノ作りはいろいろな側面から検討する必要があって、例えばモフモフできるロボットなどアイデアはあるのですが、可動部に干渉するなど問題もあり、耳や尻尾などでしたら問題はありませんが、全身をファブリックにするのは難しいです。ファブリック系は汚れもありますし、触り心地はいいけれど長く使うには難しい。アンケートをとっても実は樹脂系の方が人気があります。

コストも含め、いろいろな制約事項の中で、どこに落とし込むか、やりたいこととできることを組み合わせつつ課題をクリアしていくことが私たちの仕事ですね。

--最後にロボット系おもちゃの未来に向けて一言お願いします。

木村:これからの未来、まだ誰も見たことのない商材を作っていきたいと思っています。シニア層、あるいは小さい子供たちが楽しくなるようなロボットのデザインや機構が出てくれば、ぜひそれを取り入れておもちゃ化したいです。ロビも5年前は存在しなかったわけですから。

--なるほど、おもちゃは世の中のトレンド待ちという面がありますね。

大伴:ロボットというと思い浮かぶのは鉄腕アトムだったりドラえもんだったりします。人間の代わりとなる完全な存在です。ですからロボットに対する期待のハードルって高いと思っています。自分たちは一足飛びにそこまでできるわけでなないですが、生活の1シーンに参加してくれるような、さまざまな切り口のロボットをどんどん作っていきたいですね。

--まだまだ新しい楽しみを期待できますね。ありがとうございました。





話を聞いたタカラトミーのマーケティング本部ニュープロダクト事業部事業部長木村貴幸氏


マーケティング本部ニュープロダクト事業部マーケティング課課長補佐大伴貴広氏

 

タカラトミーの現行のロボット系おもちゃ





「ハロー! ズーマー ミニチュアダックス」



「マイルームロビ」



「ハロー!QB」

 






























































































































 
































































 




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