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コラム
イラストリレーコラム:若手デザイナーの眼差し

第154回 市川善幾/照明デザイナー

このコラムページでは、若手デザイナーの皆さんの声をどんどん紹介いたします。作品が放つメッセージだけではない、若手デザイナーの想いや目指すところなどを、ご自身の言葉で語っていただきます。





●AURORAという名前の由来

私が代表を務める照明デザイン事務所AURORAは「アウローラ」と読みます。ローマ神話に登場する夜明けの女神「アウローラ」に由来し、「知性の光、創造性の光の到来」を象徴する言葉です。

ただ、実は少しこじつけの要素もあります。個人事業としてスタートする際、将来的にスタッフが増えることを想像し、「自分の名前を屋号に掲げるのではなく、ブランドのような名称にしたい」と考えました。

そこで、自分が好きなブランドをリストアップしてみると、Apple、Audi、Auralee、Aesop、Aeta、そして、この記事でも触れるAMANというように、アルファベットの「A」から始まる名前が多いことに気づきました。

「会社名を一覧にしたとき、アルファベット表記でもカナ表記でも上位にくるような"A"そして"ア"で始まる、光に関連する言葉」を探した結果、「アウローラ」にたどり着きました。

「オーロラ」と呼んでいただくこともありますが、とても気に入っている屋号なので、この機会にぜひ「アウローラ」と呼んでいただけると嬉しいです

●AURORAとして表現したいこと

桑沢デザイン研究所を卒業後、大手アパレルのインテリア部門に就職しましたが、紆余曲折を経て、照明器具メーカーのインハウスデザイナーとして働くことになりました。

3年ほど経ったころ、とあるホテルの照明デザインを担当することになりました。設計者の方からの要望は「アマン東京のようにしたい」というもの。写真では見たことがあっても、実際にその空間を体験しないことには、本質を理解するのは難しいと感じました。

そこで会社に稟議を通し、宿泊の機会を得ることができたのですが、その経験が私の照明デザインに対する考え方を見つめ直す大きなきっかけとなりました。

▲プロジェクト進行中に作成した提案資料の一部。日常のあらゆる光をサンプリングした。(クリックで拡大)







ロビーラウンジの象徴である、巨大な光壁の吹き抜け。その圧倒的なスケールが、まるで都心の33階にいることを忘れさせるような感覚を生み出していました。体験したことのない空間に圧倒されつつも、いわゆるラグジュアリーホテルの威圧感とは異なり、静謐な美しさがもたらす独特の緊張感があったのを鮮明に覚えています。

「意匠器具にも光としての機能がある」「照らすことだけが演出ではない」など、語ればキリがないほどたくさんの要素が刺激になり、この空間に身を置くことで、改めて光の本質について考えさせられました。
そしてこの経験は、「秩序ある自然に学ぶ、エフォートレスな光のデザイン」という私の照明デザインの考え方に影響を与えた、数ある出来事の1つでもあります。


▲アマン東京のロビー。(クリックで拡大)




▲(クリックで拡大)


▲(クリックで拡大)




▲アマン東京の部屋をすべて採寸し、各所の照度測定を行った。(クリックで拡大)







私の実績をご覧になり、間接照明の使い方を評価していただくことが多いのですが、「入れられるところすべてに間接照明を入れる」ようなデザインを目指しているわけではありません。

AURORAが大切にしているのは、
・空間のムードに合った光の使い方
・マテリアルを引き立てる照明手法
・建築、インテリアデザインとしての純度の高さを優先すること

光が主張しすぎず、空間に寄り添うようなデザインを追求しています。


▲マンションエントランスの提案スケッチ。非構築的な人に寄り添う光環境を目指した。(クリックで拡大)







⚫現在取り組んでいること

「Atami Project」という新しい計画に参加しています。これは、インテリアデザイン事務所moss.の志摩 健さんが発起人となり、「これからの豊かさをつくる」をテーマに、都心から約40分の距離にある熱海で進めている計画です。


▲熱海で進めている計画。(クリックで拡大)




▲(クリックで拡大)



具体的には、宿泊と飲食の複合施設を一棟のビルに作るというもので、プロジェクトの参加メンバーは、同世代でありながらそれぞれの分野で活躍するプロフェッショナルばかり。

通常のプロジェクトとは異なり、クライアントのいないデザインワークであることが、この取り組みの大きな特徴です。ピュアなデザインを考え抜く、とても貴重な機会になっています。

まだ詳細をお伝えすることはできませんが、「自分たちが感じてきたこと、この世代だからこそできるデザインとは何か」という問いに向き合いながら、プロジェクトを進めています。オープンを楽しみにしていてください。



市川善幾(いちかわ よしき):1992年東京都生まれ。東京都立工芸高等学校を卒業後、桑沢デザイン研究所に入学。2013年に総合デザイン科 スペースデザイン専攻を卒業。
設計事務所、照明メーカーを経て、2021年に照明デザイン事務所AURORA(アウローラ)を立ち上げ独立。照明デザイナーとして多くのプロジェクトに携わる。



2025年3月10日更新。次回は志摩 健さんの予定です。

 


 


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