
リレーコラム:若手デザイナーの眼差し
第153回 チョン ウヒョン・エドワード/建築・インテリア・家具デザイナー
このコラムページでは、若手デザイナーの皆さんの声をどんどん紹介いたします。作品が放つメッセージだけではない、若手デザイナーの想いや目指すところなどを、ご自身の言葉で語っていただきます。
韓国で生まれ、幼少期を日本で過ごし、その後カナダへ移住しました。現在は日本で株式会社LESSANDを運営しています。LESSAND(https://www.lessand.jp/)は、建築、インテリア、ポップアップスペース、家具デザインなど、多岐にわたる分野で活動するデザインスタジオです。
●Less+and
Lessandという名前は、「Less」と「And」の組み合わせから生まれました。独立する前、隈研吾建築都市設計事務所で実務経験を積みました。一般的に、隈研吾事務所は自然素材を活かした多様な実験的アプローチで知られています。しかし、私自身がそこで働きながらもっとも深く考えたのは、木や石、土といった自然素材そのものではなく、デザインや設計のプロセスにおける「つながり」の重要性 でした。
この経験を経て独立を決意したとき、「Less」が意味する小さな要素は、それ単体では大きな意味を持たなくても、「And」を通じて結びつくことで新たな価値を生み出すことができると考え、その理念を込めて Lessand (レセンド) という名前をつけました。
Lessandのデザイン哲学も、これと同じ考え方に基づいています。デザインは小さな要素から始まりますが、細部まで丁寧に考え抜き、選び抜いた素材、形、テクスチャ、影などが有機的につながることで、 Lessandらしい調和のとれた空間として完成すると信じています。

▲「Laforet Harajuku Pop Up」(MUSINSA)。(クリックで拡大)
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●つながり
つながりは、あらゆる場面に存在します。人と人の関係性、物と物の調和、そしてクライアントとデザイナーの結びつき も同様です。
これまでさまざまなスケールのプロジェクトを手がけてきた中で、そして現在進行中の大小さまざまなプロジェクトを形にしていく過程で、クライアントとデザイナーのつながりが、デザインの本質においていかに重要であるかをより深く考えるようになりました。
デザイナーのもっとも重要な役割は、単に自身の美的欲求を表現することではなく、クライアントが気づいていないプロジェクトの中の微細な手がかりを見つけ出し、それらを有機的に結びつけ、1つの流れを作り出し、新たな可能性を提示することです。そして、その流れを形にしていく過程で、自然とデザイナーの美意識が加わり、より豊かで意味のある空間が生まれるのだと考えています。

▲Black Pink×Murakami Takashi「Shibuya Parco Pop Up」。(クリックで拡大)
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●未来のつながり
つながりは、単に現在の関係性にとどまらず、未来へと広がっていくものです。デザインもまた、目の前のプロジェクトに限定されるものではなく、その先にある可能性を見据えながら、新たなつながりを生み出すことが重要です。
私たちが創り出す空間は、単に美しいだけでなく、人々の暮らしや体験、そして価値観をより豊かにするものでなければなりません。そして、その中には時間の流れの中でも持続する「未来のつながり」が存在します。
Lessandは、単に空間をデザインするのではなく、デザインを通じて人と人、過去と未来、そして文化と文化をつなぐことを目指しています。これからも、目には見えない結びつきを育みながら、新たな価値を創造し続けていきます。

▲Black Pink×Murakami Takashi「Shibuya Parco Pop Up」。(クリックで拡大)
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チョン・ウヒョン・エドワード(Edward WooHyun Chung):1993年生まれ。韓国出身のカナダ人。隈研吾建築都市設計事務所で実務経験を積み、2024年に独立。現在は、建築、インテリア、ポップアップスペース、家具デザインなど、多岐にわたる分野で活動するデザインスタジオ株式会社LESSANDを運営している。。
2025年2月18日更新。次回は市川善幾さんの予定です。
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