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イラストリレーコラム:若手デザイナーの眼差し

第147回 房川修英/建築家

このコラムページでは、若手デザイナーの皆さんの声をどんどん紹介いたします。作品が放つメッセージだけではない、若手デザイナーの想いや目指すところなどを、ご自身の言葉で語っていただきます。





私は大学卒業後、現代アーティストスタジオに2年半ほど勤めてフリーランスで活動を始めました。現在はクライアントワークと並行してプロダクトやグラフィックでセルフプロジェクトをしています。

“il bello è la conseguenza del giusto”*1

私が卒業後アーティストスタジオに勤めたきっかけになったのは、大学4年間での建築設計事務所でのインターン時に、設計という仕事は作品に対して嘘をつかなければいけない瞬間が多く、伝えたい内容と完成品がどこか乖離してしまっていることに少し息苦しさを感じていたことにありました。

言葉や表現、時代や環境そのものが純粋でもっとも洗練されているものは何かと考え、現代美術の制作現場に身を置くことを決めました。

そこでは、最終的なアウトプットのインパクトはさることながら、作品の文脈や工程に「正しさ」が存在していました。アーティスト自身の汚れなき純粋な心というのもありますが、それが目に見える形に反映されて、なお純粋無垢な状態を保ち続けられている姿を目の当たりにしました。(*2



写真1。(クリックで拡大)





写真2。(クリックで拡大)





空間設計の仕事では、法規などによって現代アートほど洗練されたものにはならないですが、結果として美しいものをつくることではなく、そこに至るまでの外からは見えないフェーズにおいて、「正しい」態度とプロセスで物をつくること、そして、その価値をクライアントやその顧客に感じてもらうことが重要だと感じています。

正しいプロセスで進めれば、自ずと美しいものができるというだけではないですが、人工的な美しさの中で、美しい(正しい)存在であり続けることが重要だと信じています。

スティッキーフィンガーズ*3

子供の頃、地上波のテレビやアニメを見ることを禁止されていたリバウンドで、大学生から漫画やアニメに没頭する時間がかなり多くなりました。デザインエッセンスは特にアニメや漫画から影響を受けることがかなり多く、現実離れした能力などに影響を受けることが多いです。

最近では『ジョジョの奇妙な冒険 Parte5 黄金の風』のブチャラティーの「拳で触れた対象にジッパーを取り付ける」能力。に影響を受けていました。それは、強度を無視した切断、切開を無条件に許す。別々の物体同士を結合することも可能。というもので「対岸の景色を建築に縫い付ける」ということを建築設計で採用しました。

これは70年続く縫製工場の新規事業で行う宿の設計(*4)で提案しました。縫製という行為を建築で行うことで、あくまでも縫製という行為の中で行っているということを伝える目的が最優先されました。前回コラムの石田と共同設計した物件で、彼のコラムにも少し記述がありますので読んでみてください



写真3。(クリックで拡大)





写真4。Ph:Kei Murata(クリックで拡大)





完結でありながら、本業の縫製という核を持ち続けることこで、その価値を伝え続けることができる正しさ、美しさだとこのプロジェクトでは感じています。

最近はプロダクトベースで写真作品の製作を行っています

Vibramソールを使用したビビットなカラーの円盤形クッションを風景の中に配置して、Vimramの部分だけをゴムインクで印刷するというものです。

Vibramのグリップ力は靴で発揮されるのがもっとも良いのですが、ファニチャー系のプロダクトと印刷技術で指先や足以外の場所で、もっと感じようよっていう試みです(笑)。

タトゥーのように既存のプロダクトにグリップ力を付与できたりするのもかっこいいなと思い、グリップインクの開発なども試みたり、グリップ力がすごい靴でないと登れない山奥でやってみたり…。まだまだ試作段階ですがこんなこともしています。




写真5。(クリックで拡大)




写真6。Ph:Asuka Yazawa(クリックで拡大)






*1 ブルーノ・ムナーリの「美しさは正しさの結果である」という日本のことわざを引用した言葉

*2 EUGENE studio ・ユージーンスタジオ新しい海・EUGENE STUDIO Atelier ⅲ・想像力の力Part1/3 で展示された作品の多くの制作に携わる

*3 1995~1999荒木飛呂彦による漫画作品『ジョジョの奇妙な冒険』の第5部でブチャラティーというキャラが使用するスタンドの名称

*4 前回コラムの石田と共同設計した宿泊施設『SEW STAY』
https://city-sewing.com/pages/sew-sta
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房川修英(Fusakawa shuei):2020年~Eugene Studio、2023年~フリーランス。




2024年8月7日更新。次回は代田はるきさんの予定です



 


 


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