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       リレーコラム:若手デザイナーの眼差し 
       
        第139回 北野大祐/建築家 
						 
						このコラムページでは、若手デザイナーの皆さんの声をどんどん紹介いたします。作品が放つメッセージだけではない、若手デザイナーの想いや目指すところなどを、ご自身の言葉で語っていただきます。 
						 
						 
						 
						 
					 
 
					 僕が建築を志すきっかけは、幼少期に“ポストに投函される建売物件の間取りのチラシを見てワクワクした“というよくある理由でした。その1枚のチラシに書かれた平面図に立体を見て、胸が高鳴ったのです。なんの変哲もないよくある間取りでしょうが、それでもあの体験が今の僕を生かしています。 
 
大学を卒業後、約4年間の設計事務所勤務を経て今年より「plain studio,(プレインスタジオ)」という屋号を掲げて独立しました。建築的思想などはそれぞれ異なりますが、僕自身まだ何がやりたいことなのか、どういったことが自分の軸になっていくのか見えずですが「まずはやってみよう」と思い、見切り発車ではありますが活動しています。 
 
独立後、不思議といろいろなコミュニティーが形成されたりなどして、関西の仲間たちが温かい…! ありがたく、そして刺激を受けています。そして今年は細々と、しかし着実に何かをこなしていたような気がします。また今年度から母校の非常勤講師に着任し、1年生の授業を担当しているということもあり、改めて初心に帰りながら、残すところ約1ヶ月となった2023年を少し振り返りつつ、思考の整理をしたいと思います。 
	   
					
					  
					      
					        
					      ▲ダイニングバー「schwa2(シュワシュワ)」を見ながら建築談義。(クリックで拡大) 
				         
					         
					       
					       
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					      ▲ueo一級建築士事務所の上⽥満盛氏邸にて近況報告。(クリックで拡大) 
				           
				        
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      ●建築と建築、人と人との距離 
   
  前職時代に足繁く通っていた、長崎県島原市で食堂を営む店主の住宅の改修計画を進めています(共同設計:安田早貴、藤田智之)。 
   
                      計画建物の東側には施主の実家が至近距離で建っており、就寝中に枕元にある腰窓からお手洗いの電気がついたり消えたりする様子が気になってしまう。南側は2つの住宅の通行空間のため、日中は実家にもしばしば人が往来しており、大きな掃き出し窓から内部が丸見えになってしまいカーテンが開けられない。 
   
                      そんな住宅の”外部との距離”を手掛かりに設計を計画中です(ここでは初期案をベースにお話をします)。上記の手掛かりより、東・南面の外壁からオフセットする形で新規の壁を挿入することで緩衝空間を計画し、それぞれの空間に見合う用途を計画していきます。 
   
                      外部環境は日々変化していくものですが、建築の内部環境は一度建ってしまうと、改修でもしなければ2次的なモノでしか変化をつけられません。また住み手が変わることもあります。その場合もそれぞれ感じ方が違いますしそういった意味では環境は常に変容していきます。 
   
                      周辺の環境や歴史・文化も建築と捉えて再定義し計画に落とし込むことは僕たちの職能として必要ですが、何よりも人々がどう使うか・どう思うかは特に大切にしたいし、建築設計の一番面白いところは結局コミュニケーションから生まれるアイデアやデザインなんじゃないかと思います。  
	  
	    
      
        
      ▲配置図とヒアリング・現調メモ。(クリックで拡大) 
       
         
       
       
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      ▲平面図とアイデアメモ。(クリックで拡大) 
         
      
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	  ●空想「街という単位の最小化、理想都市」 
	  最近、自分ごとと絡めて「未来の建築、まちはどうなっているんだろう」と考えていることがよくあります。 
	     
	    そんな時に母が終の住処として団地の一室を購入し、それを綺麗にして移り住み始めました。僕は2歳から大学を卒業して家を出るまで一軒家に住んでいたのですが、どういうわけか団地への憧れがずっとありました。幼少期、実家近くの団地全体で鬼ごっこや屋外ホールでカードゲームをしたり、目の前の公園で駆けずり回ったりなど楽しい思い出ばかりが残っているからかもしれません。 
	     
	    しかし、改めてこの歳になって考えてみました。近年、大流行してしまったCOVIC-19がきっかけとなり、社会的な人間の単位が縮小されました。多くの人々は頭で無意識に常識を擦り込んでいましたが「集まらなくても生きていける」ことに気づきましたし、ライフワークバランスが変容していった人もいると思います。なのに、都市の大きさは変わらない。当たり前のように社会基盤が都市に集中しているからです。都市の単位を縮小させる方法はないのでしょうか。 
	     
	    ここからは現実と空想の横断をしながらお話をします。 
	     
	    都市の単位を縮小させるために団地を活用できればな、と考えました。団地は大阪に1956年にできた金岡団地をはじめ、全国に2,903戸存在しているようですが、近年では空き家が目立つなどで問題となっています。 
	     
	    最近は行政や地域が立ち上がって、さまざまな取り組みが行われていますが、例えばもっと根幹を揺るがすような…システムを大きく変えるような計画はどうでしょう。 
	     
	    団地を都市と見立てたときに必要なものを考えると”住空間・教育・商空間…”などが挙げられます。これらは団地というスケルトンタイプの建物に転用していくのに適していると思います。その周辺は公園、グラウンドなどを整備し、生活圏内における品質の向上や緑化計画も促進させられますし、教育施設と兼用することで都市に賑わいが溢れ出します。 
	     
	    たった半径1kmほどでも立派な都市ができ上がりそうです。各地に社会基盤を据え置ければ、計画が本当に実現したとすれば、都市の分散もできなくはないなあ、と思いました。 
	     
      …この話はあくまで空想です。終わりもオチもないことをよく考えています。 
	  
	    
      
        
      ▲まちの概略ダイアグラム。(クリックで拡大) 
         
       
       
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      ▲団地都市のイメージ。(クリックで拡大) 
       
      
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気づけば高校から建築の道を歩むこと実に11年目になりました。最近は「楽しいことばかりではないな…」と厳しさを痛感しながら(苦笑)、同時にものづくりに携わることができる喜びも感じて生きる日々です。 
   
   
   
      北野大祐(kitano daisuke):1997年大阪生まれ。2019年摂南大学理工学部建築学科卒業後、約4年間設計事務所勤務ののち、2023年より「plain studio,」設立。同年より摂南大学理工学部建築学科非常勤講師。 
      https://plainstudio.jp/ 
  
       
 
         
        2023年11月20日更新。次回は廣門晴人さんの予定です。 
         
         
         
  
                     
         
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