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コラム

神が潜むデザイン

第45回:野良デザイン/木村吉成

「神は細部に宿る」と言うが、本コラムでは、デザイナーがこれまでに「神」を感じた製品、作品、建築などを紹介していただくとともに、デザイナー自身のこだわりを語っていただきます。

イラスト[プロフィール]
木村吉成(きむらよしなり):建築家、木村松本建築設計事務所共同代表、大阪芸術大学准教授。1973年和歌山県生まれ、1996年大阪芸術大学芸術学部建築学科卒業、狩野忠正建築研究所を経て、2003年に木村松本建築設計事務所を松本尚子と共同設立。作品に「house T/salon T」「house A/shop B」「house S/shop B」など。受賞に新建築吉岡賞、藤井厚二賞、JIA新人賞など。
https://kmrmtmt.com/



●工夫について

日頃、移動しているときや訪れた先で、ふと目にしたものにいちいち立ち止まってしまう。そのかたちのわけ、あるいはそれがそこにある理由、なぜその材料なのか? を考え、そして解明したくなる。それは職業的かつ宿命的な病なのだと思うのだけれど、気になってしまうので仕方がない。

今から7~8年ほど前に、建築家仲間たちとブログプラットフォームのTumblr上で「工夫 - kufu」というページを作り、そういった気になる画像をアップし合っていた(更新は長らくサボり中)。そこで掲げたテーマは「身のまわりにあるものを用い、満たしたい目的に向けてチューニングする」。つまり「工夫」とは、いわゆる「ディテール」とは距離をおいた、誰もが簡単に到達できる開放的な技術、そしてアイデアであるという位置づけだ。

●まないたと竹

例えば道路と敷地のあいだに設けられた側溝のある風景。その溝蓋は縞鋼板でできており、側溝の上に敷き詰められている。ところがその一部の溝蓋間に「まないた」がはさまれている。樹脂製のそれはなんでそんなところにある(いる)のか? 敷地内に目をやると車が駐車されている。この状況から我々が出した結論はこうだ。

(1)長い間使っているうちに車の重量で溝蓋が歪んでしまった。
(2)車の通行の際にガタガタ金属音が鳴ってうるさい。
(3)なにか耐水・耐候性のあるパッキン材を挟めばよいのでは? と考えた。
(4)(おそらく)百均で「まないた」を買ってきた。
といったように。

それは僕たちの「まないた感」に揺さぶりをかけ、固定したものの見方に対し反省を促しさえするのだ(大げさだけど)。

他にも「竹」を使ったデザインからはパイプ感を揺さぶられたことがあった。田舎のあぜ道沿いに立てられた獣除けのフェンスがビニールハウスの鉄パイプの余り材を地面に刺して作られていた。そのままだと不安定なので斜材を取り付け補強しているのだが、それが竹でできている。

もし僕たちがこの獣除けフェンスをデザインするとしたら、すべて鉄パイプで作ってしまうだろう。だけど竹は簡単に切ることができるので自由に長さを調整することができ、地面の起伏などといったまわりの状況に合わせて加工がしやすい(しかもそこに一貫性はなく、鉄/竹の組み合わせもあれば竹/竹もあるのが興味深い)。

ここでの学びは、金属でできたものは金属管、樹脂のものは塩ビ管、そして「植物繊維」でできたものは竹であるという事実である。しかも竹は切ってもまた生える、簡単に手に入れられる「育つ」パイプ材なのだ。そう考えると、畑の傍にある竹林は農業用資材を生産、あるいは備蓄する場所に見えてくる。

●野良デザイン

デザインという行為は本来的に楽しいことである。しかし教育の過程において「普通はこうすべきだ」といった言葉を教員から投げかけられることがある。あるいはデザインを仕事として続けていると「こうあらねばならない」といったドクサに絡め取られ不自由になってしまうこともある。

自分が作り出した建築が人にとって、日々生きる喜びを感じられる場所であってほしい。安心とともに自由を保証するものでありたい。時には何かを始めるきっかけの場、後押しをする存在であってほしい。

だけどデザイナーが自由でなかったならば、楽しんでいなかったら、人にそれを提供することができるのだろうか? 世界に溢れる名もなき「野良デザイン」とも呼べる工夫は、僕たちにそう問いかけているのだろう。




(2022年10月31日更新)





▲側溝の溝蓋の間に何故か「まないた」がはさまれている。(クリックで拡大)



▲鉄パイプと竹による獣除けのフェンス。(クリックで拡大)


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