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コラム

澄川伸一の「デザイン道場」

その76:「予定表あれこれ」

澄川伸一さんの連載コラム「デザイン道場」では、
プロダクトデザイナー澄川さんが日々思うこと、感じたこと、見たことを語っていただきます。

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[プロフィール]
澄川伸一(SHINICHI SUMIKAWA):プロダクトデザイナー。大阪芸術大学教授。ソニーデザインセンター、ソニーアメリカデザインセンター勤務後に独立。1992年より澄川伸一デザイン事務所代表、現在に至る。3D CADと3Dプリンタをフル活用した有機的機能的曲面設計を得意とする。2016年はリオオリンピック公式卓球台をデザインし、世界中で話題となる。医療機器から子供の遊具、伝統工芸品まで幅広い経験値がある。グッドデザイン賞審査員を13年間歴任。2018年ドイツIF賞など受賞歴多数。現在のメインの趣味は長距離走(ハーフマラソン91分、フルマラソン3時間20分、富士登山競争4時間27分)。



以前は、年末となると紙のノート式の来年の予定表を買うのが恒例であり、何かこれを機に新しい制服に買い替えるような、すっきりした感情も沸いたものだ。

キラキラとクリスマスイルミネーションが眩い師走の繁華街で、ITOYAとかTOOとかの文具店の入り口には、たくさんのカレンダーが隙間なく陳列されて、予定表を物色する度に年の瀬を実感したものである。年の瀬といえばそんな思い出が蘇るのであるが、皆さんは現在どのような予定表を使っているのだろうか?

たかが「予定表」といえども、予定表の存在は「未来に対する設計図」みたいな存在であり、目標達成のすべては予定表にかかっているといっても間違いないだろう。「予定表」を侮っては人生を棒に振るのである。ここで使いにくい予定表を何となく使い続けているのであれば大問題である。

●ファイロファックスの時代

では、使いやすい予定表というものはどういったものなのだろうか? 以前は、「ファイロファックス(filofax)」という革のバイブルサイズのリフィールが主流だった。これをボロボロになるまで使い倒すのが何か仕事ができる奴みたいなアイコン化された部分もあり、実にたくさんの種類のリフィールが売られていた。

しかしながら、年間の予定表がその内容の割には割高で閉口した記憶もある。たかが6枚程度のリフィールがノート何冊分の値段がしたのである。そもそも、分厚いファイロファックスの中身もその使い込んだ外見に比例するほど充実した中身の情報ではなかったと思うのである。あれは、ファッションである。今やあれを使っている人を見かけたことがない。紙媒体の予定表ももはや少数派ではないだろうか。

●カレンダーで共有

自分の親世代では、予定表というものを使っている気配はあまりなかった。書き込み部分の大きいシンプルなカレンダーに直に予定を書き込んでいる。これはこれで、合理的ともいえる。この手のカレンダーには、仏滅とか赤口とか、いろいろな行事を行うべき度合いのような記述もあり、葬儀や結婚式などの予定を決めるのに役に立っていた。この風習は今も根強く残っていると感じる。

この予定の書き込まれたカレンダーは家の目立つ場所にぶら下げられており、これはこれで家の中での家族の共有できる予定表と考えればかなり有効な仕組みだったと思うのである。かわいそうに、スポンサーである何とか商店とかの文字は最下段でいつも切り取られる運命にあった


●ネットで一元管理

自分はといえば、もう10年以上、グーグルの予定表「Googleカレンダー」をPCで使っている。最大の利点は、外出先でもスマホで瞬時に同期ができるという点。瞬時に予定の追加や修正、削除ができるというのはとてもありがたい。一番危険なのが、予定の記入忘れであるのだが、常に持ち歩くスマホから予定表に入力や変更ができるのは本当に助かる。これが紙媒体だとリスクが伴うのである。

あと、自分は月曜始まりですべて管理しているのであるが、設定で月曜始まりにも、日曜始まりにも簡単に変更できるのも助かるし見やすさにつながる。そもそも、週始まりというのは月曜のような気がするのであるが、未だに旧式の日曜始まりがカレンダーや予定表には混在していること自体に疑問を感じてしまう。週末というのは土曜日と日曜日のことではなかったのだろうか? これに関してはどうも納得がいかない。

そして、デジタル予定表のメリットはこれ以外にもたくさんある。PCの大画面(筆者のデスクトップモニターは50インチ)で、まずは巨大なカレンダーとして詳細も全体も鳥観図のように一目で把握が可能なこと。そして、過去の予定を探し出すときにも瞬時で検索が可能なこと。過去の出張やミーティングもキーワードで一発検索が可能だ。これは使用している期間が長いほどそのアーカイブの蓄積も膨大な量になり過去の出来事の詳細を探し出すことが可能であり、その恩恵も非常に大きい。紙媒体では考えられないほど楽で便利なのである。前述の仏滅表記も簡単にオンオフができる。

●究極の予定表とは?

こんな感じで非常に便利なグーグル予定表であるが、自分の場合はこれ以外に、ガーミンの毎日のランニングの走行距離などの記録と、体重体脂肪計や血圧計のTANITAの記録があり、それぞれがまた別なアプリで管理している状況が現在のジレンマなのである。

これ以外にも、「あすけん」とか、今日何を食べたか?というアプリもやってはみたが、その都度の記録が面倒で途絶えてしまった。それに比べると体重計とかは乗るだけでデータを勝手に記録してくれるのでありがたい。もし、今後可能であれば、日常の記録はすべて一本化できるとありがたいし、自分がどんな食事をしたかも同時に自動的に記録できれば、食事、運動、睡眠、ストレスといった環境の健康管理も、把握と分析が可能になり、楽しくなっていきそうなのであるが、いつ実現するのだろうか。

前回コラムで触れた、体内埋め込みICチップみたいなものがあれば、このあたりの情報の吸い上げと分析も簡単になっていくのは間違いないだろう。その仕組みが結果的に、人間の健康寿命をサポートできるのであれば大いに推進すべきプロジェクトではないのだろうか?。

●未来の予定は、未定

未来の予定表というものを想像してみよう。そこには、10年先くらいまでの細かい天気予報や自分のバイオリズムなども記載されている。目標に向かってどのあたりの座標に自分がいるかどうかも、AIがコーチングとして補佐してくれるだろう。

しかし、これではなんだかおもしろくはない。人生が勝手に決まってしまったようで、人によっては絶望してしまうこともあるだろう。今日これだけ頑張っても、将来はこの程度で終わってしまうのか? と分かってしまったら、もう、今日頑張る気にはなれないだろう。夢の実現性なんてものは不明瞭なほど希望が持てるのではないだろうか。勘違いもまた楽しさの1つと捉えたほうがいいではないか。明日の天気含めて、予測とは異なる結果が起きること、なんだか分からないのがやはりいいのかもしれない。

「予定は未定」という曖昧さも少しは大事にしていかないといけないのだろう。例え勘違いでも、実現できないような「夢」に向かってがむしゃらに頑張っている時間こそが、人間が生き生きとできて、大事なのである。


2024年12月1日更新




▲年末らしくクリスマスイルミネーション。こういうのを見ると、無条件になんだかほっこりします(クリックで拡大)


▲大阪中之島美術館にて「塩田千春展」。素晴らしかったです。設営の苦労が感じられます。(クリックで拡大)

 


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