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コラム

澄川伸一の「デザイン道場」

その45:「筋トレは断捨離」シックスパックを取り戻せ!

澄川伸一さんの連載コラム「デザイン道場」では、
プロダクトデザイナー澄川さんが日々思うこと、感じたこと、見たことを語っていただきます。

イラスト
[プロフィール]
澄川伸一(SHINICHI SUMIKAWA):プロダクトデザイナー。大阪芸術大学教授。ソニーデザインセンター、ソニーアメリカデザインセンター勤務後に独立。1992年より澄川伸一デザイン事務所代表、現在に至る。3D CADと3Dプリンタをフル活用した有機的機能的曲面設計を得意とする。2016年はリオオリンピック公式卓球台をデザインし、世界中で話題となる。医療機器から子供の遊具、伝統工芸品まで幅広い経験値がある。グッドデザイン賞審査員を13年間歴任。2018年ドイツIF賞など受賞歴多数。現在のメインの趣味は長距離走(ハーフマラソン91分、フルマラソン3時間20分、富士登山競争4時間27分)。



まずは出し切る

最寄りの駅近くにスポーツジムが新設されたので、久しぶりに入会してみることにした。設備的にはドライサウナもあり、バイクも置けるので自分としては申し分ない。2月に入会してからは平均して週に5日は通っている。実際の運動内容としては、スミスマシンやラットプルダウンなどの筋トレを20分とトレッドミルの最大傾斜でのランを40分の組み合わせだ。合計運動時間としてはおよそ60分で、これくらいなら毎日でも仕事の支障なく可能な範囲だ。比率としては3分の1が無酸素運動で残りを心肺系の有酸素運動という感じ。月曜だけは、普通に公園を10キロ走ることにしている。以前のように屋外を毎日ジョギングするのは今はやめた。理由は、コロナでマラソンレースがなくなってしまったから。

とにかく、ジムのランニングマシンで、大量の汗をかいた状態のままで、すぐにサウナに直行すると、すでに汗腺がMAXに開きまくりで、2分程度でさらに大量の汗をかくのでとても時間短縮になる。その状態からの水風呂での冷却時間がとにかく最高な時間なのである。もう、汗をかくという行為自体が中毒状態ともいえる。汗をかけば、とにかく安心するのである。健康を保つためには、身体にとっては、入れるより出す方がまずは大事なはずと信じている。飲んだり、食べたほうがいいというのではなく、まずは基本代謝のものを出しきる方が正しい。ビジネスにはならないことが大体は正解なのである。徹底した引き算をしてから、最小限の必要不可欠ものだけを足し算していけばいい。

●成果を数値化しモチベーションを保つ

ジムでの筋トレはまだ初めて2か月ちょっとであるが、それでも明らかに身体が変化してきているのが分かる。これはとても面白い。日々の努力が数値として結果に現れるのはとても嬉しいものである。体重も減って体脂肪率がぐんぐんと少なくなると同時に、基礎代謝が1700くらいまで増えた。この数値は年齢を考えるとかなり高い。基礎代謝が増えるということは、身体に占める筋肉量が増えて、通常の生活でもカロリーがどんどん消費されているので、同じ量を食べても太りにくくなってくるということ。これはとてもありがたい。

10代をピークとしてこの数値は下降していくので、当然同じ食事でも太りやすくなるのである。砂漠のラクダではないのだから、不要な油を身に着けて効率悪く生きていくのはどうかと思う。基礎代謝が高いというのは良い意味で、燃費の悪い身体になっているということなのである。

体脂肪率は現在13%なのだが、それを一桁の9%まで絞ろうというのが当面の目標である。腹筋も学生時代のシックスパックまで戻したい。重たいウエイトを挙げたいという欲求はないので、例えばベンチプレスで100キロ挙げるとかの目標はないが、現実的にトレーニングを続けていると反復可能な回数が自然と増えていくので、結果的にはだんだんとウエイトも重くなってきている。これはこれで嬉しいものである。

大人になって、成長する部分も少ないので、状況の数値化で努力の結果が明らかになってくるのはとても嬉しい。1つ階段を上がった感じが大事なのである。

成果を数値化することでのモチベーションの向上は、筋トレに限らずいろんなジャンルで応用できるものだ。自分のメインの仕事である「デザイン」に関しては、ほとんど数値化できないものなので、その反動も大きいのかもしれない。デザインの質はその利益と無縁の場合が多いのである。仮にその年の売上高が良かったとしても、必ずしもデザインの質とか達成感とは比例しない場合がほとんどなので、少なくとも報酬との関係性はまったくない。

自分にとって楽しい仕事ほど、実際の収入は少ないのがほとんど。それには、まずは楽しくない仕事をある程度こなしておかないと生きていけないというのがバランスのとり方なのだと思う。だからこそ、成果が数値化できるものはとてもありがたい。

●YouTubeを活用する

現在は、新しい習い事をするのには非常に便利な時代だ。「YouTube」に代表される動画投稿サイトのおかげで、検索すれば、世界中のいろんなレクチャーが、無料で視聴できる。やったことのない筋トレのマシンの使い方や、ダンベルのメニューも詳しく把握できるのでトレーナーがいなくても何とかなる。個人的には人にいろいろ言われたくないタイプだし(笑)。

もちろん、筋トレに限らず、楽器の練習やCADの演習までいろんなレクチャーが手に入る時代だ。人間って不思議なもので、世界共通で誰かに教えたい欲求というものが刷り込まれていることに気づく。だからいろいろ人の動画を比較できるので、胡散臭いのは観なければいいだけだし、その中から自分に合ったやり方を見つければいい。

ネットで入る情報はお金もかからないので、あとはもう、個人のモチベーションの問題だけ。やり方さえ理解できていればあとは実践しかない。ジムのいい点は、とにかく、面倒でもドアを開けてジムの中に一歩入れば、中ですでに練習している人たちの「気」のおかげで頭の中が運動モードに切り替わるからありがたい。

現代において人間というものは、放置しておくとどんどんと何もしない楽なほうへと流れていってしまうものである。これは恐ろしい。無人島ならばすぐに死んでしまうだろう。これではまずい。 自己のレベルアップのモチベーションを保つのは自分自身のストイックさももちろん必要だが、環境に助けられる部分がものすごく大きいと思う。ライザップとかは、ビジネスとしてその部分の捉え方が多くの顧客をつかんだのだろう。かなりの利益を出したと思う。
 
●本質的な強さとは

ジムにいる人をよくよく観察していると、ガチで筋トレをやっている人のほとんどが、有酸素運動であるランニングマシンをしないということに気が付いた。筋肉隆々の人ほどそうだ。これは意外だった。皆、汗もほとんどかいていない。ベルトを付けてプロテインをシャカシャカやっている人たちがこれに当てはまるのであるが。

調べてみると理由がすぐ分かった。見かけの筋肉肥大を目指すには、有酸素運動はマイナスになるのでお勧めできないといった筋トレYouTubeがたくさん出てきたのである。これにはびっくりした。あったとしても、せいぜい朝の30分の散歩くらいなのである。僕としては、どちらかというと「速く長く走る」という基本の運動能力向上があくまでも生物的な土台だと思うのである。サッカーだってラグビーだって、走るという基本の上に存在するスポーツである。

競技におけるアスリートは見た目よりも能力重視ではないだろうか。「速い」「強い」とか。ボクサーだって、かなりみんな走りこんでいるし、縄跳びもやっている。これは逆説的な話でもあって、例えば柔道とかもそうであるが、見た目で小柄で弱そうな感じの選手が、いかにも強そうな巨人を負かしてしまうことにスポーツの「感動」や「美学」があるような気がする。相撲はやっぱり「千代の富士」だと思っている派でもある(笑)。見かけが小さくて弱いのがいいという意味ではなく、本質的に強いのがいいという意味であるのだが。

以前『人は見た目が9割』というベストセラー本があった。確かに今の世の中の判断基準はそんな感じがする。みんなが、薄々気が付いている真実だからこそこういったタイトルの本が売れるのである。でも、SNSが自己の承認欲求のツールであるように、実際は自作自演であったり、別人のように加工された顔だったりとネットから流れてくる情報は嘘の発信だらけではないか。

この傾向は個人レベルを超えて、もはや国家レベルにまで達している。戦争だって、嘘の情報戦の時代になってしまっている。そんなウソ情報にふりまわされるのも悔しいではないか。ネット世界ではなく、目の前の現実世界をもっと大事にしたい。哲学的な話になってしまうが、少なくとも自分の身体は今ここに存在しているというのは紛れもない事実なのである。生きるための必要な道具なのである。その事実を大事にしたい。

健全に生きていくためには、情報の断捨離がこれからさらに重要になってくる。不要な情報を遮断して、現実世界をもっと大事にして、大量の汗を流して身体を鍛えたり、無心で楽器を練習したりして、自分のリアル世界での身体を駆使した人間能力のランクを1つでも上に持っていくこと。そういうバックボーンがあった上で、自分の得意な専門の仕事をするということが自分の場合は大事だし、生きている間は今後も続けていきたいのである。

だからSNSも、現実に何かしらの結果が出た時だけ「事実報告」といった形で発信していこうと思っている。幸いこのコラムを書くことも「断捨離」で残っている行為の1つ。SNSの発信がほとんど垂れ流しで消えていくのに対して、この文章はアーカイブできちんと保存されていくから。

「筋トレ」という断捨離もしばらくはまりそうです。まずは自分の身体から断捨離していかないと。



2022年5月1日更新





▲最近ジム初めて3週間目の状態。また身体が激変したら写真をアップします! まだまだ、上半身が華奢ですね。超人ハルクみたいのがうろうろしているので負けたくないな。ダンベル並んでると楽しくなります。(クリックで拡大)



▲大学1年次の時のクレイの課題作品。力強さを表現したかったのだが、当時住んでいたところが恐ろしく寒いところで質感が表現できた(笑)。作品自体はもうどこかにいってしまったが、写真が残っていてよかった。今でも、同じ腕が目の前にあって嬉しい。(クリックで拡大)



▲発表後、ドイツREDDOT賞ですぐに評価されたダンベル。自分の代表作の1つです。滑り台や卓球台もそうだけれど、エクササイズ的なジャンルのデザインがなぜか多いのは自分が運動好きなのがバックボーンにあるからなのかもしれません。そう考えると、デザインするにはデザイン以外が勝負ということなのかな。(クリックで拡大)




















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