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コラム

澄川伸一の「デザイン道場」

その14:「1日1食」のすすめ

澄川伸一さんの新連載コラム「デザイン道場」では、
プロダクトデザイナー澄川さんが日々思うこと、感じたこと、見たことを語っていただきます。

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[プロフィール]
澄川伸一(SHINICHI SUMIKAWA):プロダクトデザイナー。大阪芸術大学教授。ソニーデザインセンター、ソニーアメリカデザインセンター勤務後に独立。1992年より澄川伸一デザイン事務所代表、現在に至る。3D CADと3Dプリンタをフル活用した有機的機能的曲面設計を得意とする。2016年はリオオリンピック公式卓球台をデザインし、世界中で話題となる。医療機器から子供の遊具、伝統工芸品まで幅広い経験値がある。グッドデザイン賞審査員を13年間歴任。2018年ドイツIF賞など受賞歴多数。現在のメインの趣味は長距離走(フルマラソン3時間21分、富士登山競争4時間27分)。



●「健康」でなければ何も始まらない

なんだか、最近は健康ネタばかりになってきているが、自分の関心事がどうしてもそちらにあるので逆らわずに書いてみることにしている。いずれにしても、「健康」でなければ何も始まらない。とくに創造活動の領域だと精神性をクリーンにするほど作品の「純度」も比例して向上するのは当然であろう。

僕の場合、仕事のほとんどの時間がCADで面を張る作業だ。PowerPointでコンセプトをまとめたり、文章を書くこともあるが、9割以上は図面作業になる。そしてこの作図作業、相当に脳細胞を酷使するのだ。作業中は、脳に血流が大量に必要な感覚があって、最大限の血液を脳で消費したいという感覚がある。もし、作業中に胃腸が活動して動いていると、その分のエネルギーが脳に回らなくなってしまうのである。

思い返せば学生時代はとにかく授業中が眠気との戦いだった。もちろん部活や夜更かしでの睡眠不足だったというのもあるが、今思えば、3食きちんと食べると終了なのである。よほどトークの冴えた先生以外の授業はほとんど、脳死状態にあったようなものだ。

●食事は19時頃に1回だけ

僕の1日はだいたいこうだ。朝起きて、プランクを3分行って、顔洗って歯を磨く。そしてダイニングでコップ1杯の氷水を5分くらいかけて飲む。その後、雑用や掃除などしてすぐに仕事に入る。

仕事中は、冷蔵庫で冷やしてあった、コントレックスというフランスの硬水を飲む。癖があるのだが、慣れれば大丈夫。とにかくミネラルの含有量が半端ないのである。これを、毎日2リットル飲み切ってしまう。

朝一から、ぶっ続けで仕事をし、14時くらいになり集中力が途絶えたあたりで、近くの公園を約60分、距離にして10キロ少しをジョギング。かなり汗だくになって、そのままシャワーを浴びて、体重計測。夕方からは、少しワインとか入れながらの仕事になるのだが、ジョギング中にいろいろと思いついたことがたくさんあるので、夕方以降の作業も忙しくなる。

そして、日が暮れた19時頃に夕食となる。1日で、ここで初めて固形物を摂る。基本、炭水化物は摂らないのだが、これも状況に応じる。生野菜や納豆は極力食べるように心がけている。

食事終了とともに、運動の疲労やらいろんな疲れが爆発して、21時くらいで、1回気絶するように眠る。ほとんど、全身麻酔の瞬間の時に似ているくらいに落ちる(笑)。底なしに深い眠りを2時間くらいして、また自然と目が覚めて復活。そしてまた、仕事を数時間やって区切りがついたところで、本格的に就寝する…こういった毎日だ。

●なによりまとまった作業時間を

「1日1食生活」の最大のメリットは分断されずまとまった作業時間が確保できるという点だ。会社員だった頃、製造実習というものがあって工場のラインで、おばさまたちと一緒に、CDプレーヤーを組み立てていたことがあった。単純だがミスが許されない作業では休憩は非常に重要であって、食事休憩はほんとうに楽しみであった。

しかし、デザインなどの創造活動は、自分自身の内側の妄想世界に入り込んでしまうのがほとんどであって、食事の時間はせっかく気持ち良い夢をみているのに途中で現実に引き戻される感覚なのかもしれない。映画館で映画をじっくり観るのと、テレビの放映で途中で何度もコマーシャルが入るのとの違いにも似ている。

1日1食でお腹が空かないのか? と聞かれることもよくあるが、自分の場合はお腹が空いたとしても、そのタイミングで外を走ることでまたお腹は空かなくなる。とにかく何かに夢中になっていると、食欲というのは抑えられるものだ。だから、ランニングのコースではバーベキュー広場は必ず迂回することにしている。いきなり煩悩が現われてくる、嗅覚と視覚の刺激はとても危険なのである。

ただし、1日1食の自分なりの例外というのがある。1つは大学の授業や講演会のように、声を出す仕事の日では朝、昼と少しでもいいので何か食べておかないと声に力が入らない。これは経験的に本当にダメだ。逆に言えば、自分がしゃべる分には決して眠くはならないようにできているのである。しゃべりながら寝ることはないだろうし、声の張りというのは政治家やオペラ歌手同様に商売道具でもあると思う。

プレゼンの直前はだいたい時間がないものであるが、それでも、コンビニに立ち寄っておにぎり食べながら現地に向かうこともしばしば(笑)。声に力がないとプレゼンはだめだ。もう1つの例外は、出張でクライアントと行動が一緒の場合だ。いわゆる集団行動の場合、皆に合わせて一緒に食事は摂る。周りに合わせて、ラーメンだろうが、焼き肉だろうが関係ない。これは1人だけ食べない人がその空間にいるだけで、場がしらけてしまうのでビジネス的に最低限のエチケットであるとも感じている。これは社会人としてのモラルだろう。

僕の場合は「1日1食」は決してダイエットが目的ではない。仮にダイエットだとしても、朝食は絶対に食べないと身体に悪いとか、三食きちんととるべしとか、いろんな主張をしてくる人がたくさんいる。しかし、そんなのはほっとけばいい。何故なら、自分は健康のためではなく、仕事の効率を上げるためにやっていることだから。それで今までの結果を出してきているのだから。高濃度の時間を創り出す、自分のとっておきの手法だ。おそらく、今後もずっとこのスタンスでいくだろう。


 
2019年10月1日更新



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