●アウトサイダー・アートとは
アウトサイダー・アートの支援を行っている杉本志乃さんにお目にかかって、アウトサイダー・アート(アール・ブリュット:生の芸術)の作家は、人に見てもらうことを前提としていないと伺って「なるほど」と腑に落ちた。他者の評価など考えずに純粋に自分のためだけに絵を描くのだ。不可思議で魅惑的な「非正気」の世界。
アウトサイダー・アートは、正統な美術教育を受けずに制作された作品群や、美術業界の外部の作品を指し示す。フランスの画家ジャン・デュビュッフェ(写真1)は、特に精神病院の患者や子どもが描いた絵に対して、アウトサイダー・アートとしてスポットを当てた。デュビュッフェが1945年にアール・ブリュットと呼んだ強迫的幻視者や精神障害者の作品。
また、1972年にイギリスのロジャー・カーディナルは、精神障害者のみならず、社会の外側に取り残された者、美術教育を受けていない独学自習の作品として、アウトサイダー・アートの概念を広げた。
●孤独な制作作業
たとえばアウトサイダー・アートの画家アドルフ・ヴェルフリ(写真2)。刑務所に入ったあと監禁された精神病院で絵を描きはじめ、2万5,000ページにおよぶ膨大な架空の自伝を制作した。
40年間、小さなアパートで空想の戦争物語を挿絵とともに描き続けたヘンリー・ダーガー(写真3)。『非現実の王国で』の作者である。誰に見せることもなく半世紀以上もの間、たった一人で作品を描き続けたが、死の直前にそれが発見されアウトサイダー・アートの代表的な作家として評価される。
|
|
写真1:ジャン・デュビュッフェの作品。(クリックで拡大)
写真2:アドルフ・ヴェルフリの作品。(クリックで拡大)
ヘンリー・ダーガーの作品。(クリックで拡大)
|