●アーティストではなく職人
レディー・ガガ専属の靴職人、舘鼻則孝(たてはな・のりたか)氏と食事をした。レディー・ガガの愛用シューズ、ヒールのない靴のデザイナーとして世界的にも知られ、靴はすべてハンドメイド。かかとのない独特のデザインが施された靴。2010年に制作依頼を受けてから、専属アーティストとしてこれまでに20足以上を提供している。
「僕はアーティストではなく、ブランドディレクターやファッションデザイナー、職人としてやっているという感覚です。日本にいると作品がアートのようですねと言われることが多いのですが、実際、僕はアートとして作っているつもりはありません」と語る。
「欲しいものがあれば何でも自分で作ればいい。クリエイター気質の母に子供の頃から言われていた言葉です」(舘鼻氏)。
●京都・祇園の「ぽっくり下駄」から着想
ヒールのない靴の着想はどこから? このユニークな靴について、京都・祇園の舞妓さんなどが愛用する底の厚い「ぽっくり下駄」から着想を得たと制作秘話を披露。
ガガから発注依頼が来た経緯は、自分の作品のメールを100通送ったところ、3通返信が来て、その中の1通がレディ・ガガのスタイリストだったそうだ。そして「ヒールのない靴」は“ガガ効果”で世界のセレブ(有名人)を魅了した。
現在、1足1万5,000ドル(約118万円)以上で販売されている。注文は絶えず、3年待ちの状態という噂もある。「世界で熱烈なコレクターはたった3名しかいない」。館鼻さんは言う。そして、日本にはそのようなコレクターはいない。コレクターはパトロンでもありスポンサーでもある。たった3名のコレクターで成立するクリエイターはアートの世界ではいそうだが、デザイナーの世界では珍しいだろう。
●日本の伝統技法にも精通
舘鼻さんは1985年、東京の中心にある歌舞伎町という歓楽街で、歌舞伎湯という銭湯を生業とする家系に生まれる。父は自らの会社の代表取締役で、母はシュタイナー教育に基づくウォルドルフ人形の制作を教える講師である。
幼少期は鎌倉で育ち、15歳の時より洋服や靴の制作を独学で始める。東京藝術大学では絵画や彫刻を学び、後年は染織を専攻、花魁に関する研究とともに日本の古典的な染色技法である友禅染を用いた着物や下駄の制作をする。意外にも地方の職人と工芸を大いに活用している。
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レディー・ガガ専属の靴職人、舘鼻則孝さん。(クリックで拡大)
舘鼻さんの靴を履くレディー・ガガ。(クリックで拡大)
舘鼻さんの作品より。(クリックで拡大)
舘鼻さんの作品より。(クリックで拡大)
舘鼻さんの作品より。(クリックで拡大)
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