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コラム

坂井直樹のデザイン色眼鏡

第24回:アーティスト戸田正寿が完成させた「発光する一枚の板」
光のカンバス「Lightface」


坂井直樹さんのコラム「デザイン色眼鏡」では、コンセプター坂井直樹さんに、モノをメインにデザインを取り巻く状況を語っていただきます。

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[プロフィール]
坂井直樹:コンセプター。株式会社ウォーターデザイン代表取締役。1947年京都生まれ。19歳で渡米し、サンフランシスコで「Tatoo T-shirts」が大ヒット。帰国しテキスタイルデザイナーとして活躍した後、80年年代後半に「Be-1」(日産自動車)や「O-product」(オリンパス)のコンセプトを手掛け脚光を浴びる。その後もau design projectで数々の先進的な携帯電話のデザインをプロデュースするなど、コンセプトからデザインまで革新的なビジネスをクリエイティブしている。


●クリエイターの視点で生まれた照明

友人のアーティスト戸田正寿がついに完成させた「発光する一枚の板」。この技術は市場から照明器具が消える日をもたらす可能性のある大きなイノベーションにつながる。

「Lightface(ライトフェイス)」は光のカンバスだ。この発明のユニークさはエンジニア主導ではなくクリエイターが主導してできあがったことだ。クリエイターの右脳は完成のイメージがすでに脳内にできあがっている。そのイメージ(最初からの構想だった薄くて、枠がなく、ムラのない光の板)をエンジニアは実現させればよいのだ。

LED照明を人類は研究してきたが、すべて科学者、技術者が考え、作ったものだった。一方クリエイターの視点、考えでできたのがLightfaceだ。これだけの強い照度(最大20,000ルクスの高照度)を持った板状のLEDが完成すると、ライバルの有機ELは現在のところ100ルクス程度なので照度の点では比較にならない。

クリエイターが照明の概念を変えた「美しい革命」だ。このテクノロジーに出合ったときに感じたことは、これが完成し量産が始まると照明器具が世界中からなくなるかもしれないということだ。今の照明器具は電球をねじ込む受け口、光を発する電球、傘などがあり複雑だ。ところがLightfaceは発光体の板一枚だ。

つまり照明器具は不要。これは大きなイノベーションにつながる可能性がある。市場から照明器具が消える日が来るかもしれない。一般的にデザインに力を注ぐ建築家は、照明(光)は求めるが、照明器具は見にくいものと見立てて極力隠そうとする傾向がある。


●美しく心地よい光を

また一方でクリエイターが創造力を自由に遊ばせ、美しさを追求できる。枠がなく、11ミリの薄さ。自然光に近い光。発光面にはムラがない。表面にフィルムを貼るだけでなく平面印刷も可能。「特殊立体印刷」を施すことで油彩の凹凸や陰影まで、原画の細部を忠実に再現。Lightfaceの光を背面から受けて「光る絵画」に生まれ変わるデバイスを戸田正寿は「厚さ1センチぐらいの光る板が作れれば…」と執念で完成させた。

これからの照明の役割は、「明かりを取り入れる」だけでなく「空間の演出」も求められている。Lightfaceは、空間イメージをがらりと変える最大20,000ルクスの高照度で、室内の照明としても十分な明るさを放つ。調光機能で、時間帯やシーンによって雰囲気を変える演出も可能だ。薄くて軽い、発熱しにくいという利点から、その使用領域は、自動車や列車の車内、航空機の機内などの照明にも広がるだろう。

人間にとって美しく心地よい光がつくれないか。アーティスト戸田正寿がたどりついた1つの美の姿が、Lightfaceだ。その技術の基礎となるのは、光ファイバーの世界的権威、慶應義塾大学小池康博教授の「光散乱理論」。長年、光を追い続けてきたレンズ専門メーカー日東光学の技術力との出合いにより、商品化した。次世代の光を演出するイノベーションだ。
http://lightface.jp/


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