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コラム

坂井直樹のデザイン色眼鏡

第14回:浮世絵にはコード(暗号)が埋め込まれている
浮世絵コード

坂井直樹さんのコラム「デザイン色眼鏡」では、コンセプター坂井直樹さんに、モノをメインにデザインを取り巻く状況を語っていただきます。

イラスト
[プロフィール]
坂井直樹:コンセプター。株式会社ウォーターデザイン代表取締役。1947年京都生まれ。19歳で渡米し、サンフランシスコで「Tatoo T-shirts」が大ヒット。帰国しテキスタイルデザイナーとして活躍した後、80年年代後半に「Be-1」(日産自動車)や「O-product」(オリンパス)のコンセプトを手掛け脚光を浴びる。その後もau design projectで数々の先進的な携帯電話のデザインをプロデュースするなど、コンセプトからデザインまで革新的なビジネスをクリエイティブしている。


●描いてはいけないもののメタファー

浮世絵には禁令で描いてはいけないものが決められていた当時、メッセージをコードの中に埋め込んで隠した。ただ浮世絵の制作側の人々のコミュニティーだけに分かる「浮世絵コード(暗号)」を埋め込んで、鬱憤晴らしをしていたのだ。浮世絵にはコード(暗号)が埋め込まれている。

「浮世絵コード」という興味深い話を牧野健太郎さんから聞いた。牧野さんはNHKプロモーションの役員で、ボストン美術館との浮世絵デジタルプロジェクト・プロデューサーでもある。以下受け売りである。

●デコードの楽しみ

時魚、橋、市場、舟、波、ネコ、亀、着物や建具の模様など、浮世絵のなかで一見ごく自然に描かれているモノやコトの中には、江戸時代ならではの下町人情あふれる江戸の町人文化、風俗、社会を読み取るコードが多く見られる。これらの意味を帯びていて秘められた「暗号」を読み解く(デコード)必要がある。

広重の江戸百の「浅草田圃 酉の町詣」を事例に伺ったことを思い出しながら暗号を解読してみる。まず絵の改印は安政四年十一月で、お酉さまの月にあたる。鷲神社は新吉原の裏手にあり、絵では遠景に草田圃酉の町の賑わいを、近景に新吉原の遊女の部屋を描いている。

新吉原で富士山が見える部屋は西向きの部屋だ。西の端に位置する台東区千束三丁目ということまで分かる。ここでお酉さまを眺める猫は遊女のメタファーだ。屏風の裏が見えているので、その向こうにはネコの飼い主の遊女がいるはずだ。熊手のかんざしは、福(客)を取り込めるという意味になる。この手ぬぐいも文様から、どこの旦那かが分かるという趣向になっている。猫を描いたのはこの時期遊女を描くのタブーであったからで猫自体もコードと言える。

ただ美しいなあと思って見る浮世絵鑑賞も良いのだが、当時の江戸の人々の好奇心や洒落を読み解いて(デコード)して楽しむことも良い。

書籍:謎解き広重「江戸百」(集英社)を参照した。


イラスト
広重の江戸百の「浅草田圃 酉の町詣」から


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