moviti/片山典子
1964年神戸生まれ。京都市立芸術大学卒業、東京でインハウスデザイナーとしてパーソナル機器のプロダクトデザインや先行開発に携わる。デザインの師匠である同業のオットと2人暮らし。2005年から“デザインって何だ!”と称してノンジャンルで自主活動展開中。最近はフリークライミングとバスケットボールの“大人部活”と旅行にはまっている。2010年から本格的ソロ活動(離婚じゃなくて独立)開始。
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明けましておめでとうございます。今年も一生懸命のお喋りでございます。
正月早々でっかいテーマ、「かわいい」について書こうと思います。便利な言葉なのでついひとからげにして大雑把に使ってしまいます。膨大な「かわいい」表現の中のごく一部を最近心にひっかかったある商品を起点に書いてみます。
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去年の秋、何度かキャンペーンされていたアッシュコンセプトのcupmen。
http://shop.h-concept.jp/fs/hshop/90
カップ麺にお湯を注いで3分待つ間、蓋を押さえるための道具。一生懸命蓋を押さえる小さいヒトの形、ネーミングと相まって強烈な印象。あれを見たときに「カワイイ以外の何か」を感じた。
顔に見える=眼を惹きつける。ただし自動車以外では機能的な根拠の配列が顔に見えるのは違和感/怖さに感じられやすいし、飽きられやすいとされている。
一方作り手サイドはヒト型、顔型を創りたがる。ヒトに似せる=新たな人格を作る? 作りたい本能/惹きつけられる本能なのか。ロボットアニメ、ロボット開発もその反映だと私は思っている。
眼を惹く と 違和感 との紙一重。
cupmen、小さいヒト型(それも2頭身じゃなくて6頭身)でここまで日常の機能を与えられたモノってなかったのではないだろうか。単純に「ミニチュアかわいい」だけでなく匿名性の高いモダンデザイン仕上げが「道具に徹するけなげさ」「小さいおじさん的ブキミさ」を固有するプロダクト。
その目線でアッシュコンセプトのラインナップをよく見ると、キャラクター的ではあるのだけれど、直球のカワイイではない「はずし」を感じる。技術や機能の表現としてのモチーフなのか。カワイイに乗っかって流行り廃りの波に呑まれるのを避けるためか。今のクールジャパンのカワイイの気分はちょっとブキミなのか。
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ヒト/動物の形の雑貨は60年代からあった。陶製のブタの楊枝立て、人形の塩コショウ入れ。単純な機能に買う動機を与えるキャッチー。戦略というほどのものもない、手すさびの愛らしい素朴な創作意欲。モダンデザインとは対極? 今思うとクラフト経由でデザインの本道ではなくても脈々とあったと認めるべきか。そして80年代バブル+イタリアンブルジョアデザイン+3D CAD=ALESSIのブームがやってくる。特にS.ジョバンノーニ氏のシリーズ。ぷるぷるんとした村上隆のモデリングのような動物のプラスチック製品。強烈な印象なのに無名性/記号性が強いキャラクター。
当時、モダン=シンプル一辺倒としてデザインを捉えようとしていた私には強烈でした。キャラクター自体の人格への思い入れはなく、純粋造形のモチーフとして繊細にモデリングしている。高額ギフトな価格設定とそれに見合う執拗にこだわってコストをかけたプラスチック成形技術。イタリアンデザインの変化球、カワイイの殴りこみ。買って使ってみないと価値が分からない。買うか買うまいか2年悩んで結局オバケのワインキャップだのリス型ナッツクラッカー(今も銀杏の殻割りに活用)、今でもむしろ昔よりも気にいって使っている。改めて見て、愛くるしく完成度の高いカーブで構成された曲面ですよ。直球カワイイの普遍プロダクトか。実にデリケートなブランドイメージコントロール。
今ALESSIのサイト http://www.alessi.com/en/ を見ると一時のジョバンノーニテイストは整理されていて、一部の商品はもう正規では入手不可。それでもメンディーニのコルク抜きやM.グレイブスのタイマーなど「プラスチックキッチングッズで20年ロングセラー」も残っている。これってすごいね。
本来かわいい=愛おしさというストレートな感情移入を表す言葉だったのが、「カワイイテイスト」という一歩引いた視線の先で表現できない言葉で複雑に分岐している。
比較して今は、かっこいいへの憧れが素直にストレートになっているのかも。
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