moviti/片山典子
1964年神戸生まれ。京都市立芸術大学卒業、東京でインハウスデザイナーとしてパーソナル機器のプロダクトデザインや先行開発に携わる。デザインの師匠である同業のオットと2人暮らし。2005年から“デザインって何だ!”と称してノンジャンルで自主活動展開中。最近はフリークライミングとバスケットボールの“大人部活”と旅行にはまっている。2010年から本格的ソロ活動(離婚じゃなくて独立)開始。
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ゴールデンウイーク前後は毎年地震や火山やインフルエンザやカタストロフィ気味なコトが起きますね。
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さて、ここのところ、どちらかというと直接プロダクトデザイン的でないテーマで書いていたので、今回はプロダクトデザインど真ん中なテーマ。中身、内部構造があるプロダクツの造形について。
どんな会社でどんなデザインを生業にしようか考えたとき、「手に持つカタチがやりたい」と思いました。で、文具、カメラ、水栓金具と全然ばらばらなジャンルの企業にアポイントを取って、結局カメラやパーソナル情報機器のジャンルに進みました。
特にこのジャンルが好き、とかはなく、なんかいろいろできそう、という浅はかな考え。よく考えたら大学でも時計やラジオ、電話などの課題をやったけど、既製品をバラして中身を並べたりもしなかった。持ちやすさや使うシーンを優先させて、中身は「これぐらいだったら入るだろ、これ以上小さい&薄いとつまらない」とかアバウトでした。
手の中機器系のプロダクトデザインをするにあたっての基本条件:
・前後のキャビティを合わせて中身を入れる(もなか)、電池や記録メディアを入れるフタがある(開閉機構やヒンジ)、光学ユニットのケラレが設計条件。
・ちょっとは組み立て工程や作り勝手の良さを意識すること。でも1つ2は設計者が燃えるチャレンジングなポイントを盛り込む。
・「裏表がない、すべての面が人目にさらされる、触られる」というのが気遣いの前提。六面だけ見ていてもだめ、斜視図にも配慮。手があたるところは丸める。
・持ちやすい、操作しやすいこと。手がでかいヒト、小さいヒト、爪が長いヒト、握力が弱いヒトも使える。親指位置とか手のひらとの接点が結構ずれる。
・小さい、薄いを目指す。でも実は度を超して小さいと使いにくい。ほどよい手応えの重さ、厚さが心地よい。小さく見える、薄く見せる、触りたくなる。
・実はクルマと同じく「いい貌」のバランス、「らしさ」のオキテがある。
・盛りだくさんにしすぎない、ぱっと見て似顔絵が描ける、一言で言えるカタチを目指す。複合要素を整理する大きなテーマを設定する。
・神はディテールに宿るので、いろいろ知っているに越したことはない。例えば直方体の角、三方から同じ大きさのRが堂々とぶつかると球Rになって、それは考えなしなディテールになりがち、とか。
中身を入れつつ(作り手の都合)/使いやすく(使い手への配慮)/機器のお顔を作る。
言われればなるほどな当たり前のことばかり。あとはデザイン以外の条件とのせめぎ合い、設計者に教えてもらうことも多い。おそらく文具やお茶碗でも同様だろうし、大きめの装置でも床、壁接地面以外の配慮は同様だと思う。
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さて社会人になった当初、正直上記の条件をどう造形のテーマに生かすのか、当初全然分からなかった。条件と造形テーマは別物。バリエーション展開しようにも、無闇に稜線をぐりぐり回したり、パーツを分けても「で、どう見せたいの?」が分からない手垢ばかりついたモノができてしまう。つい気が散ったり、先輩にいろいろ言われて迷ってしまったり、ちょいと見かけたあのデザインかっこよかったな、などとディテールが雑多に混じってしまう。
かと言って臆病になると本当に「直方体の角を丸めただけ」になってしまう。こういうふうに見せたいからプロポーションをこうしたい、設計者にぶつけようにも要求を一言で簡潔に言えないと「で、何がしたいの?」となるのは明白。何か参考になるデザインはないかといろんなモノを見にいくけど、そのまま盛り込むだけでは、なんだか自分に近くないというか、取って付けただけの無責任なフォルムになってしまう。
先輩達にならってウレタン削ったり組み合わせてスタイリング展開するイメージがどうしても自分の中で消化できなかった、社会人1年生の自分。
試行錯誤して最後にたどりついた作業の具体的なイメージは“靴を作るのと同じだ”でした。
人間の足のカタチってだいたい同じ、機能としては足を入れて地面に立って歩くための道具。でも靴はものすごい種類がある。例えば男性のスタンダードな靴だけでも、ローファー、紐靴、スリッポン、サイドゴア、スニーカー、サンダル、ブーツ…。同じ足でもビルケンシュトックのような原始人の足型のもイタリアンな流麗で上等の靴もある。ヘンなカタチなのになぜかお洒落なtrippenのカッティング。造形的に何が違うのか?
カッティングのライン取りが違う、それによって面の張り方向や表情が違う、非対称/対称にも理由や機能が分かれば納得できる。色の切り替えが違うことで印象が変わる。縫い目(稜線)の処理やディテールでテイストが変わる。ただ中身を詰める以上にいろいろ試したくなるフォルムがある。
それに気がついてからは、ほんとに雑誌の靴のページ見ながら、手がぐいぐい動くようになった。慣れてくると「なんであのローファーはビジネスっぽいトラッドなのに、このローファーはエレガントに見えるのか」「このスニーカーの速そうな動きや勢いを生かすにはどこの線を抽出したらいいか」あれこれ考えられるようになった。単純に造形してるだけではなかなか近づけない、速さ/軽さ/動き/勢い/しなやかさ等をイメージしやすい。
さらにクルマやソファ、建築、グラフィックを見ても、「この面の切り替えの押しの強いキャッチーな感じ」「この線のシャープな感じ」と発想のトリガーとして引っ張ってきて試してみる(ヒトから見たらそうでもないかもしれないが自分としては)のが怖くなくなった。漠然としたムード、テイストや要求されている機能を立体デザインに結びつける取っかかり、バリエーションのソースとして、『靴』をきっかけにしたのが私の場合は合っていたようだ。
造形のひらめき方としては“既に存在するもの”から引っ張ってくるのでちょっと卑怯かもしれないが、全体のフォルムと個別のディテールを照らし合わせてイメージしやすいので、設計者への課題抽出、優先順位づけも早期のアイデア段階で検討/提示できる。アイデア展開のスピードアップができる。競合機種から引っ張ってくると直接過ぎてマネっぽくなるけど、全然違うモノから引っ張ってくると、自分なりの工夫が入って当然だし。
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これ読んでるヒトの中には慣れないインハウスデザイン業に四苦八苦している“新人さん”もいるかもしれないですね。同じ中身でフォルムのバリエーション展開って大変なもんです。最近のプロダクツって薄くなってきたから、靴みたいなボリューミーなモチーフは当てはめにくいかもですが、参考になれば幸いです。
一方建築家のレム・コールハースがunited nudeブランドで靴のデザインをしていたり、意外と靴は構築的で興味をそそるモチーフなんですね。
http://www.unitednude.com/all-c-191.html
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告知:5/21〜25 コドモといっしょの暮らしを考えるプロジェクト「コド・モノ・コト」おやつどうぐてん@神楽坂フラスコに参加します。
http://www.codomonocoto.jp/
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