moviti
1964年神戸生まれ。京都市立芸術大学卒業、東京でインハウスデザイナーとしてパーソナル機器のプロダクトデザインや先行開発に携わる。デザインの師匠である同業のオットと二人暮らし。2005年から"デザインって何だ!"と称してノンジャンルで自主活動展開中。最近はフリークライミングとバスケットボールの"大人部活"と旅行にはまっている。
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今年も終わりです。経済危機になってもなんとか新年を迎えられそうです。ありがたいです。積極的に年中行事を満喫するタイプではないけど、だらだらっと区切りなく暮らすよりも1年のサイクルがあってよかった。
●初めての相手と一緒に仕事する
今年はいろんなスタイルでデザインをしました。私がデザインワークをする役割でなく、誰かと組んで1つのprojectを進める仕事が多かった。私がディレクションの立場で、初めてタッグを組むデザイナーと行った仕事が多かったのです。それも相手とはめったに会わない状況で。
楽しいなあと思えるディレクションができたということは、デザインワークをした相手の技量に恵まれた、ということで。ありがたいです。
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まずは初顔合わせのときにお互い軽く牽制しあう。デザインに対するスタンス、単純に頭の柔らかさ、話や言葉選びが自分と合いそうか。どれぐらいデザインの引き出しが多いか、量産の場数を踏んで知識を溜めてきたか。女子だからって私をなめるなよ、苦労はそこそこしてるよ。いざというときの優先順位や配慮するべきことに気が回せるか。他のヒトへの発言の影響力とか。商品の仕様やコンセプト、キーワードのディスカッションをしながら相手のレベルを探る感じ。
1枚目のスケッチをもらうときが一番どきどきする。自分が共感できるような線や色、素材使いを見つけられるか。
キャッチボールするうちにどんどん自分だけでは思いつかないアイデアが形になる。もともとは私のデザインから始まっていたのが、相手がどんどん乗ってきて独自に美しいディテールを作る。実現しやすくて見たことないフォルムを見せてくれる。知らない技術や企みを提案してくれたりする。
高めていくためには、ただむやみにちやほやしたり褒めてもダメで、こちらの意向をはっきりさせる。選択肢を明確にして余計な検討は切り捨てる。どんどん決定して残課題をリストアップして解決していく。早いレスポンスをする。
ちょっと噛み合わないときにどうするか? 簡潔なリクエストのメールをする、電話で話してみる、こちらの手描きスケッチをデジカメで撮って送ってみる。なんかシンクロできるリズムがあるはずだ、探るのが結構面白い。まさに一期一会ですから。
こちらは本腰入れたデザイン展開はしない。でも送られてくる相手のスケッチに本気でコメントするうちに、自分が描いたスケッチみたいな気になってくる。結構ずけずけリクエストを言ってみる。相手のスケッチがどんどんクオリティが上がっていって、“ただの絵”から質感や重さを伴って“絵が実体化してくる、締まってくる”。自分のスケッチでも、確信がある方向が見えたときの絵から確実に絵に筋肉がつくような感じがするのですが、自分以外の絵でもそれを感じる。そうなると確信持って、本気で周囲を説得する。もうノイズの入る余地がないように、どんどんデザイン決定〜商品化までレールを引いていく。黙々、悶々、こつこつのデザインじゃなくて、スピード感とダイナミックなイメージ、スポーツ感覚でデザインをする。
シンクロ、共鳴、響きあう、という状態を作る。1+1=2以上の伸びしろを狙う。
●あんた高く飛んでくれそうだから
逆に私がデザインワークをして、他のヒトがディレクション、という仕事でも、今年はなんか新しいことができた気がする。
以前は自分1人のデザインに執着しすぎて、「これはなんでこんななの?」と質問されるだけでも「文句あっか?! おら御用聞きじゃねえ!」「もーなんでそんな思いつきでひっくり返そうとするのさ!」「これがアタシのスタイル!」ってついガブガブ怒りたくなってました。ひっくり返されないように身構えて自分と対峙する上司、コンペ相手、設計、営業に立ち向かおうとしていた。実は、何かに固執すると、結局どん詰まる。周囲は気がついてないかもしれないが(気づいているかな?)、自分でどん詰まりがだんだん溜まっていって血がどろっとしてくるような気がする。自分なりに囲い込みのアイデア展開、A案は安全確実、B案は対抗、C案はパラレルな別のストーリー、とか設定して。単純に若かったから手も動いたし、決められないから手数で補っていたんですが。そのわりに意外とバリエーション幅が狭かったりしたなあ。3つのつもりが1つと半分が2個、とか。
この頃は誰の意見でも「ほお、全然思いつかなかったけど、もしそうだったらどうなんかな?」と脱線する余裕ができてきました。ひっくり返されても、そのときはムカッときますが、「やり直しのチャンスがもらえた(それは確実にどんでん返し前よりクオリティを上げなくてはならないプレッシャーでもあるが)」と思えるようになってきた。「えーそんなんうまくまとめられるかなあ」とか実は不安でもやってみたら意外と早い時間に「あ、これいいかも」と光が見えてくる。
「これ何かアイデアない?」と堂々と訊いたり、うんざりされるくらい相談に乗ってもらって、いろいろこね回した揚げ句に自分のアイデアに戻ったらうまくつながって、「すんません、結局自分のアイデアに戻ってしまいました」と悪びれずに言えるようになった。相談が怖くなくなったんでしょうね。どんなにヒトの意見を聞いても、結局まとめるのは自分だから自分の味がでる。逆に相談しないで1人で迷走するのも怖いですしね。
ヒトの脳を使って下地を作って、最後は自分がジャンプする。そう思うとヒトの話を聞いて議事録を編集するのが楽しくなる。ま、ヒトの意見も無責任だからあんまり振り回されないように、自分の方に引き寄せる。
そうなるとなんでもアリになって、逆にすごくラジカルに暴走できる可能性ができてスリリングで面白いです。やばそうな脱線だったら、周囲がちゃんと止めてくれる。
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松本大洋の「ピンポン」という卓球部活マンガがあります。名作だから結構読んでるヒト多いと思う。まだ読んでないヒト、オススメです。
幼なじみのペコとスマイルがひたすら卓球部活するストーリー。スラムダンク卓球版。
今までペコの影に隠れて目立たなかったスマイルの闘志に火をつけるために部活の顧問の先生が本気で試合をふっかけるシーンがあります。先生は伝説のバタフライ・ジョーと呼ばれるプレイヤーだったのです。60歳過ぎて普段はおっとりしている先生が昔の本気を出して、高校生と1対1の試合をしながら「おまえの性能を見せてくれ!」と叫びながらぶっ倒れる。まさにそんな感じです。
一方、天才肌で天真爛漫なプレイスタイルのペコがスランプを経て県大会で勝ち進む。圧倒的に強い他校の選手、ドラゴンとの対戦前に「あんた高く飛んでくれそうだから、背中に乗せて飛んでくれ」と言うシーンがあります。ドラゴンに「振り落とされるな」と返事され、実際当初はボッコボコにされるのですが、最後はペコが本来の自分のスタイルを覚醒させて、ドラゴンをプレッシャーまみれの卓球から救い出して勝利する。
デザインのお仕事って、スピードアップとか勝つための戦略、チームプレイと個人技とか、スポーツとして捉えた方が面白い。6割ヒートアップ、4割クール。
高く飛んでくれるヒト、高く飛ぶためのきっかけを自分で見つけてみんなでバチバチ覚醒したいもんです。
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