moviti
1964年神戸生まれ、京都市立芸術大学卒業、東京でインハウスデザイナーとしてパーソナル機器のプロダクトデザインや先行開発に携わる。デザインの師匠である同業のオットと二人暮らし。2005年から"デザインって何だ!"と称してノンジャンルで自主活動展開中。最近はフリークライミングとバスケットボールの"大人部活"と旅行にはまっている。
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オリンピックも終わりました。自分のベストを出して、世界のベストを目指す、大変です。スポーツの世界は大胆でダイナミックに見えるけど、同時にセンシティブで冷静に自分をコントロールする力を要求されるようですね。なんだか3D CADでフォルムを作っている時の気持ちに通じる気もします。
私が学生の頃、そして社会人になった当時は、当然ドラフターで手描きの図面。ステッドラーの芯ホルダーと電動消しゴム、左手でドラフターのダイヤル部を握ってがっちゃんがっちゃん回してた。ドラフターの定規を直角にチューニングして、トレペをスチール板でシワがないように留めて、まず何をやるかというと…図面上のレイアウトをイメージして中心線を描く。分かりやすく美しい図面がその後の美しい仕事を約束する。寸法線を揃えるとか。Rはコンパスや定規で描き、複合Rは2点の寸法指示。
加えて私はオリジナルの指示図を添付する習慣がいつのまにかついてた。題して「コマ割り図」。
1:どの面から作って、2:次にこの面を作って1の面とぶつかった稜線はナリユキ、というように基本形状をフリーハンドの斜視図でコマ割りして描いたもの。私以外の人から見たら図面ってあまりに全方位的に均等に情報が並べられているので、分からないと読み解くだけで時間がかかるだろう、というのが発端。他人の考えたことを完成状態でいきなり見るのって大変だもの。
図面から2D CADになってからも描いてました。描いているうちに自分の図面の辻褄が合ってないところが分かったりもしたし。
2D CADも便利でしたね。カーブ定規を探して木箱を漁ったりしなくていいし、定規にないRが使える、楕円も使える。右側面描いたら左側面にミラーコピー。消しゴム跡も残らないし、前に描いた図をそのまま持ってこれる。線は芯ホルダーと違って常に細く等幅。画期的、自分がバージョンアップした気になれました。
やがてCADのメインストリームは3Dへ。うーん、直接立体が作れるのだから直感的になるはずなのに、講習に行くとなんだか手数ばかり増えているようで、焦ってしまう。でも有名なデザイナー、マーク・ニューソンとか明らかに3D CADでしか作れない形を作っている。よし、もう絶対アプリ1つは修得してやる、と思った。修得の目標イメージは、「六面図にこだわらないダイナミックな形を作る」「3D CADでしか作れない形を作れるようになる」「スケッチ感覚でアイデア段階で使えるようにする」。
・六面図にこだわらない形を作る:とは言え3DでもVIEWは6面。そこで大きめの稜線Rを作って曲面の法線基準でキーを配置するとか投影カーブでパーツを切ったり。
・3D CADでしか作れない形を作る:そもそも2つのカーブを滑らかにつなぐカーブや4つの稜線で接線連続するネットワーク曲面、やっぱり醍醐味でしょう。コンピュータは偉大だ。不器用な私でもこんなキレイな面が作れちゃうのだ。粘土より裁縫よりウレタンモックよりも高精度で。
・スケッチ感覚でアイデア段階で使えるようにする:Illustratorで3面図でじっくり描いてアイデア展開していたのが、3D CADし始めてから、むしろ手描きの斜視図が増えた。3D作って原寸出力してボリューム確認とかラフモックにしてみたり。3面図に書き出してIllustratorで開けて質感表現つけたり形状修正したり、3Dのシェーディング画面をキャプチャしてPhotoshopで開いて指示を書き込んだり、と複数アプリを渡り歩き、が現在のスタイルになっている。
結局自分に一番合っていたのがRhinocerosでした。どうもソリッドモデラーの履歴の構築が苦手で。履歴って理想は変更箇所を予測して面の作り方手順自体を組み立てるんですよね? RhinoはIllustrator感覚で思いついたらとりあえず面を作ってくれるし、欲しいコマンドが多かった。ちょっとNURBS独特のたるみがちなカーブに癖があるのですが。
なんだかんだ身に付いたと実感するのに4年くらいかかった。当初は作りたい形があるのに手順が多くてイライラする一方、すごく小さい箇所にこだわって手数の上に手数で修正してしまったり。リアルなスケールを見失いがちなんですね。
作りたい形…というのもいきなり哲学的だ。なんせもうかなり「自由に形が作れる」道具に完成しちゃったのだ3D CAD。自由にやってみろ、といきなり言われても。どんなものが作りたいのか? 好きなデザイナーの真似がしたかったのか? 訳もなくねじれた形が作りたいのか? AとB、どっちの手順で作った形が作りたい形なのか? 何の制約もなくオブジェを作るとしたらどんな形が好きなのか? 作ってその場で見られる形だから、その場でジャッジしなくてはならない。拡大して見ちゃうと小さい面の接合部や消えていく稜線Rの終わり方がもうとてつもない大問題みたいに見えてくる。翻弄されました。涙が出ちゃう、女の子だもん(ByアタックNo.1←古い)。
結局、直接仕事に関係ない形でもどんどん作って場数稼いで自信をつけた、というチカラワザ修得でした。2005年にDesignTideで発表したOnWallというクライミングホールドのインスタレーションも、意地で3Dモデリングで作った。そのわりに個々の形はもう全然弾けてなくて未消化で。でも自分で企画して自分でやったので度胸と自信になった気がする。
●3Dモデリングは自由なんだよ
設計データ、金型データに直結するから面のクオリティや修復に時間も取られるし、ノウハウも多いし、やり遂げたときの満足感もあるから、つい視野が小さくなりがち、同じ手順で作ってしまいがち。でも3Dモデリングは自由なんだから、ノウハウはスキルとして習得するとして、むしろ自分の作りたい形のボキャブラリーが自由に広がるように心がけたいもんです。いつも同じ手順で面を作っていると、どこかルーティーンなつまらなさがアウトプットに表われてしまうんですな。
建築業界は今や構造計算が発達してきているのか、すごい形がいっぱい。「鳥の巣スタジアム」、「水立方」、「BMWウェルト」など。セル構造はプログラムで自動生成するんですかね。あとロス・ラブグローブのTynantボトル、らせん階段とか骨っぽいフォルム、あれはどんなCAD使ってるんでしょう。ああいう大らかでシンプルな曲線群で生成したような有機的な面、やっぱり萌えます。
魅力的なフォルムは全体のプロポーションも良いし、形状全体に“動き”の擬態語がある。
アント二・ガウディなんか100年前の漆喰技術の応用でねじれ面の試行錯誤しているマケットが残っています。CADなんかなくても昔ながらのワインボトルやボートのカーブ、美しい。そう考えるとツールじゃないんだな、やっぱり。発想力と形を絞り込んで選択していくセンスなんだな。
さらに自然界のフォルム:骨、魚、植物、甲虫の背中のカーブとかボリューム感があって筋肉質で弾力があって、悔しいです。
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