pdweb
無題ドキュメント スペシャル
インタビュー
コラム
レビュー
事例
テクニック
ニュース

無題ドキュメント データ/リンク
編集後記
お問い合わせ

旧pdweb

ProCameraman.jp

ご利用について
広告掲載のご案内
プライバシーについて
会社概要
コラム
イラスト

女子デザイナーの歩き方 第98回
銀座のsiwa
moviti/片山 典子

[プロフィール]
1964年神戸生まれ。京都市立芸術大学卒業、東京でインハウスデザイナーとしてパーソナル機器のプロダクトデザインや先行開発に携わる。デザインの師匠である同業のオットと2人暮らし。2005年から“デザインって何だ!”と称してノンジャンルで自主活動展開中。最近はフリークライミングとバスケットボールの“大人部活”と旅行にはまっている。2010年から本格的ソロ活動(離婚じゃなくて独立)開始。
http://moviti.com


このコラムでは、デザインのジャンルの枠を超えた活躍をされているmovitiさんに、さまざまな観点から女子デザイナーの歩き方を語っていただきます。


暑いですねえ。夏は私は日本酒にもワインにもビールにも氷を入れます。

**

深澤直人さんがデザインで携わった紙生活雑貨のブランド、「SIWA l 紙和」の話をブランドプロデューサーの一瀬さん、スタッフの斉藤さんに伺った。今年で満8年、銀座に新築された切子デザインな東急プラザに今年春初の店舗「SIWA Collection」ができた。
http://siwa.jp/
http://siwa-collection.jp/
http://onao.co.jp/

和紙や不織布ほど毛羽立ってソフトではない、薄く光沢ある表面にシワと言うより柔らかく揉んだような表面。軽くて耐水性、耐荷重に優れている。初期モデルから強度を増すために何度か素材の開発も同時進行で改良、繊維長さを改良したそうだ。大事に使いたくなるよく考えられた色の数々、2色使いや藍染(銀座期間限定)、アクセントストライプもオシャレ。

改めて見るとタイベックに質感は似ているがタイベックはチープシック路線、超丈夫なクラフトバッグ。使い込むとかなりヨレヨレになる。
http://www.mimotstudio.com/product/mimot-lunch-bag-gray

脱線しますが私が高校生の頃、神戸のアメリカ村でおしゃれなプリントの入ったセメント袋を買って、クラッチバッグ風に持って通学してたんですが、私一人がカッコイイと思っていたのか、全く流行ってなかったな。

SIWAのアイテムは素材を2重にして縁を縫い、返し口からひっくり返し、縁を整えるのでステッチがほぼ見えない丁寧な印象、使い込んでも型崩れが抑えられる。パーツ数を少なくしてマチを薄く仕上げ、ポケットの縁は紙のような折り仕上げが独特。ファスナーやスナップ付きのアイテムもある。

実は私は当初のラインナップは紙版の(以前の)無印良品みたいだなあ、どういう人向けだろうと思っていた。(デザイン好きの男性客が当初多かったそうで)タイベックはアクティブでラフな感じがスタイリッシュとして扱われていたけど、SIWAは一度買えば細やかに考えてある味わいのわかるアイテムだとは思うが、大人しく薄味な割にケミカルな印象だった。

当時私も布小物のトラベルグッズなど展開したいながら、悶々していた時期なので、淡々とスタンダードなフォルムを商品展開していくSIWAを横目で悩ましく見ていた。


**
一瀬さんは実家の家業を手伝い、和紙季節小物の営業や和モダンの商品企画で現場で実績を上げ、やがて自社の新素材の障子紙「ナオロン」を使って生活小物のブランド立ち上げの担当者に任ぜられた。社長さんが深澤さんの講演や著作を読んで、任せよう、と決心。発表のターゲットを”半年後の2008年インテリアライフスタイルショーに出展”とした。

ブランド立ち上げの時は文字通り試行錯誤の試作三昧の手作り状態、初日で話題になり予想を超える反響に慌てた。

紙を縫う、というのは紙の専門家、縫製の専門家双方ともやはり抵抗があるそうで。刃物へのダメージ、滑り、大きい音。タウンページで片っ端から連絡し断られ、今の縫製工場(チャレンジしがいのある仕事が好きと言ってくださった)に巡り合ったのは運が良かった。

当初は裁断で作れるシンプルで男性的なアイテムがメインだったが、レーザーカットを導入してラウンドなデザインや小物も展開できるようになった。

…とここまで聞いてびっくりである。傍観していた私は当時”万全の体制で臨んできた”と思っていたのだ。

ロゴやカタログのデザインやブランド作りの監修力ででしっかりとした世界観を見せ、押さえるところはしっかり押さえていたのですね。ミラノの展示会での参加で、紙でできていても価値を上げる、きちんと扱うことを示してもらったと感じたそうだ。

また取引先にも販売や商品のことを随分育ててもらった。分からない知らないと言いながらアドバイスをもらったら実践するし、手探りで正解にたどりつく実行力もあって、企画開発制作販売がコンパクトならではの大きなパフォーマンスを揚げているし、周りに育ててもらえているのだろう。

まず超えなければならないのは”紙なのにタダじゃない、丈夫”であることを広めて、1,000円の壁を超えること。発売当初は商品を包むパッケージに悩んだり、使ってこなれた「SIWA 紐付き封筒」を間違って使い古しと思われて捨てられそうになったお客様の話もあったそうだ。


**
やがて10,000円の壁を超えられるか。鹿革に漆の捺染で柄を入れる印伝を紙の表面に施すオリジナル技術で、革の対抗になれるかチャレンジ。
http://www.nara-inden.jp/
http://www.inden-ya.co.jp/

銀座に来て驚いたのがこれまでのデザインコンシャスな客層とは違い、初めて見て触って”これは和紙?”と質問する年配のご婦人が多く、こんなに知られていなかったのか、じゃあいろんなことができるな、と励みにしたそう。やがてショップに何度か来てアイテムを買い揃えていく、使い込んで色が変わってきたのを見せに来る新たなリピーターも定着してきたとのこと。

漆モデルは2014年からの取り組み(古典柄)で、2015年にデザイナーとのコラボを発表したそうで、銀座店に常設できるようになったのはタイミングが良かった。ハンドメイドの造花のアクセサリーや大きな缶バッジ、デザインコンシャスな銀座アイテムも増強された。銀座店オープンをきっかけに若いスタッフも増えて、SIWAのことを考えてくれる人が多くなって嬉しい、と一瀬さん。

印伝の艶やかでリッチな柄が大好き、北欧デザインだがぐるっと一周して実用的な和モダンが和服にも合うし、男性や年齢高めの人にもしっくりきそう。使い込むうちに紙が白くなり模様とのコントラストが上がるんだって。ううむ私、黒地にゲジゲジ黒丸柄のコインケース、発売されたらきっと買ってしまうだろう。

 


Copyright (c)2007 colors ltd. All rights reserved