pdweb
無題ドキュメント スペシャル
インタビュー
コラム
レビュー
事例
テクニック
ニュース

無題ドキュメント データ/リンク
編集後記
お問い合わせ

旧pdweb

ProCameraman.jp

ご利用について
広告掲載のご案内
プライバシーについて
会社概要
コラム
イラスト

女子デザイナーの歩き方 第89回
CADのポテンシャル
moviti/片山 典子

[プロフィール]
1964年神戸生まれ。京都市立芸術大学卒業、東京でインハウスデザイナーとしてパーソナル機器のプロダクトデザインや先行開発に携わる。デザインの師匠である同業のオットと2人暮らし。2005年から“デザインって何だ!”と称してノンジャンルで自主活動展開中。最近はフリークライミングとバスケットボールの“大人部活”と旅行にはまっている。2010年から本格的ソロ活動(離婚じゃなくて独立)開始。
http://moviti.com


このコラムでは、デザインのジャンルの枠を超えた活躍をされているmovitiさんに、さまざまな観点から女子デザイナーの歩き方を語っていただきます。


いきなりですが、Gマークのサイトってこんなに見やすかったっけ? トランプになぞらえてカードをめくるように、さまざまなジャンルのアイテムのデザインを読み解くのがサクサクになってますね。角丸な小さい四角の写真がテイストも揃ってみせてるし。FIND MY Gを選んでGマーク展のチケットをゲットというのも参加しやすい。グッドデザインだわ。
http://meeting.g-mark.org/

**
社会人当初から手描き図面、数年で2D CAD、やがて3D CAD(と言ってもRhinoceros)を使っている。まったく自分勝手な野望だが、特に3D CADを使うようになって「プロジェクトの度に新しいかたち、作り方をやってみたい」欲がまだある。こんなこと考えてるから自分のデザインテイストが明快になり切ってないんだろうな、と思う。

お勤め時代の光学機器では設計条件がタイトだった。コンパクトで持ちやすい、カメラの作法に則った、コストや耐久性など。パーツの合わせを曲線にしたり知らず知らずにムチャブリをしていたと思うが。
最近、小学生低学年向けの教具のデザインをすることがある。雑貨以外でプラスチックのフォルムを凝らすことができるアイテムだ。子どもなし、子ども苦手な私。1対1で遊ぶのはおつきあいできるのだが、男子小学生が3人集まって室内ででかい声やキーっと言ったり、ドカンと飛び降りたり、子どもっぽいモノがどんどん散らかっていく、ああもうだめ。一方いまどきの親御さんて子どもと距離が近い、一緒に勉強におつきあいする一方で自分の生活のデザインにもこだわりがあるし。ということで自分が子ども目線と親目線の両方で取り組んでいる。

子ども向けということであいまいにぽよぽよ膨らんだ形にしたくない。面でカットしてRなし稜線で仕上げたり、サイズも基板面積やキーレイアウト込みで攻める。コスト重視だがCHINAのミラクルプラスチック成形技術をあてにしつつ、抜きテーパー付けやすいパーツ割りを考える。

けっこう理詰めで考えるのだが、スケッチでのモニタリングの結果は、意外と子どもに伝わっているようだ。大人の方が「子どもらしい丸くてはっきりした形」を選ぶのに対し、「無駄がない明快な形、おもちゃ過ぎない、でもつまらなくない」という線を選んでくる(これが高学年になってくると男子は戦隊もの、女子はプリンセスっぽい好みが入ってくるようで、そこはまだ私は折り合いがついてない)。

ということで「作ったことない形」の野望が起きてくる。斜めに自立するハコを抜きテーパーを利用しながら成形。長楕円の舟型と長楕円カーブのドームの組み合わせ。ドーナツ型とか。自分では変わった造形をしたつもりだが、ユーザーは良くも悪くも「見たことない」の違和感もなく、普通に使っているようだ。
ネット検索しても意外と「実物化されてない」形は実はたくさんある。

**
フランク・ゲーリーの仕事は、私がデザインを意識し始めた時期とタイミングが重なっていて、思い入れがある。斜めでも直交してなくても真っすぐでなくてもキレイな空間て存在するよ、破片の集合みたいでも建てられるよ気持ちよいよ、とそもそも思ったのがぶっ飛んでいる(脱構築主義)。

住んでいた神戸にフランク・ゲーリーの初期(1987年)の仕事、FISH DANCEが唐突にできた。併設のカフェとでかい魚オブジェが、スケールがでかいような小さいようないびつな塊、チープを良しとするテイストで、"やっちゃうんだすごいなあ"と思った。ちょっと奇をてらっているようなところもあるので、日本では神戸のここだけ。
http://www.design-museum.de/en/sprachmicrosites/japanese.html
http://abccoolimages.com/vitra+design+museum+interior


数年前スイスのVitra Design Museum(1989年)に行った。四角い箱を一方の壁から斜めに押し上げたようなキューブの集合体、ランダムに配置しているようで、実は最適のボリュームを包んだ結果、エクステリアの形ができているのが初期の仕事でも感じられた。気持ちよくすごせる愛すべき建築だった。天井が大きな曲面、躍るようなラインで切り取られている。天井の鋭角が外光を柔らかく取り入れて、自然で心地よい。

21_21で開催されているゲーリー展。
http://2121designsight.jp/program/frank_gehry/

アイデアソースやたくさんプロジェクトごとの模型が展示されている。のたくったドローイングや布製ホワイト餃子みたいな塊の集合、試行錯誤が露なペーパーモックが巨匠らしい。そんなあやふやな模型を事務所の所員がさらにあやふやなまま造形的にブラッシュアップした模型をたくさん作っている。こんな模型見せられたら施主は不安にならんのかしら。

展示の別コーナーでそこから先のプロセスの説明動画を上映。やがて大まかな骨格ができあがったら3Dスキャンして、そのままパーツごとの製造図にバラせるぐらいデータを整えていく。外装パネルの規格形状のと特注形状の比率をコントロールして、コスト管理と個性的な外観を両立させる。さらに空調や電気の配管とか外装パネル1枚ごとにナンバリングして1つの巨大データでコントロールしていく。

ええー、そりゃ理想はそうなんだけど、そんなことできるの!? 橋梁とか造船でやってるんだろうからできなくはないんだろうけど。

十分美しくてオリジナリティある建築と思っていたVitra Design Museumでの螺旋階段のエクステリアの不連続面がきっかけで、デジタルで3次曲面をコントロールすることに傾倒していったそうだ。とはいえ巻き込んだ人数や投資が半端ない。さらに四角い普通の建築と同じコストで建てられる(現場でのロスを減らすことも含め)ところまでシステムの完成度を上げたそうだ。1プロジェクトの期間が長いし大きいことから小さいことまで考えることはとても多いのに、それをマネジメントするCADシステムで会社まで作ってしまうとは。
http://www.gehrytechnologies.com/en/

ううむ、ウルトラ巨匠だ、一生における仕事量がでかすぎ。25年でここまでやれるのか。
 


Copyright (c)2007 colors ltd. All rights reserved