女子デザイナーの歩き方 第83回
カラフル重電のアイデンティティ
moviti/片山 典子
[プロフィール]
1964年神戸生まれ。京都市立芸術大学卒業、東京でインハウスデザイナーとしてパーソナル機器のプロダクトデザインや先行開発に携わる。デザインの師匠である同業のオットと2人暮らし。2005年から“デザインって何だ!”と称してノンジャンルで自主活動展開中。最近はフリークライミングとバスケットボールの“大人部活”と旅行にはまっている。2010年から本格的ソロ活動(離婚じゃなくて独立)開始。
http://moviti.com
このコラムでは、デザインのジャンルの枠を超えた活躍をされているmovitiさんに、さまざまな観点から女子デザイナーの歩き方を語っていただきます。
毎年4月ごろはサローネなど海外の大きいイベントがあります。私も実は1度(旧 fiera最後の年)企業参加で搬入説明と称して出張しました。大きくはインテリアのイベントなのに「デザインのイベント」としてデジタル機器の展示で行かせてくれた上司と会社に感謝。
このたびうちの夫は初めてサローネに行くことになりまして、ついでにドイツのハノーバーで開催されていたハノーバーメッセも見てきた。産業用ロボット、発電機、タービンなどなど本気の産業用、重電の見本市だそうだ。すみません、まったく知らない世界です。サイトを見ても「ワールドビジネスサテライトのドイツ版」みたいでよく分からない。
http://www.hannovermesse.co.jp/repraesentauten/hannover.html
一般の地元の高校生とかも入場可能、将来の自分の職業を考えるきっかけになるのかも。
それがですね、無事帰ってきて写真を見せてもらったら、まったく意外なことに ものすごくカラフルだったのだ(右上の画像をクリックすると写真コラージュ見られます)。
マゼンタピンクやスカイブルー、ホワイトに丸塗りされたモーターとか。オレンジのカラーチューブがアクセントになってるエンジンや、部分がブルーに色分けされたシリンダーとか。メタリックでない彩度の高いソリッドカラーが溢れている。
ものすごくでかく重くした「レゴ」ワールドというか。てっきり地味で鈍い色合いと思っていたのに。
でかいプロダクトとブースの柱や天井に同じ色が使われて、プロダクトとインテリアが渾然一体になり、見たことないスケール感のズレのような迫力が出ている。攻めのコーポレートカラーのアピール。またラインナップによって色分けしているのもある。
サイトではそれほど色の迫力は感じないんですが、機器のサイズや塊が実物はすごいらしい。
yilmaz redüktörトルコのモーター製造、CIカラーがマゼンタ。
http://www.yr.com.tr/
FANUC(成形機、射出機でおなじみ)レモンイエローのロボット!(日本)
http://www.fanuc.eu/de/en
KUKAの柿色のようなオレンジ(ドイツ)
http://www.kuka.com/
sew eurdrive 赤いなあ(アメリカ)
http://www.seweurodrive.com/
nord drive systems クールブルー濃いめ(ドイツ)
http://www.nord.com/
WEG サイトはブルー基調でプロダクツはサップグリーン(イギリス)
http://www.weg.net/uk
カワサキは白ですよ エヴァンゲリオンなロボですよ(日本)
https://robotics.kawasaki.com/ja/
シーメンスはやはりグレー&白&ミントロゴ(ドイツ)
http://www.siemens.com/entry/cc/en/
ENERCON 風力発電用の風車が白いのは爽やかだから?
http://www.enercon.de/en-en/
試しに「IE4 motor」とか「industrial robots」で画像検索すると金属の塊が好きな人にはぐっとくる画像がばらばら出てきます。イマドキこんな肉厚重厚な金属、レトロが一周して新鮮に感じる、観賞の対象として重機に通じるものがありますね。パシフィック・リムね、確かに。
産業機器、重電は「デザインで買うもんでないから=地味デザイン」が良しと思いがちだ。これらのカラフル重電も実際は納品先の要望で色は変えることも多いだろう、一方どこかの機械室の奥でオレンジやブルーのごつい機械がエレベーター動かしたり発電しているのかもしれない。
会社の製品として展示されるときは堂々と容赦なくカラー統一して、企業アピール、まさにプロダクトアイデンティティだ。ちょっとドキドキするね、10年20年使い続ける設備に近いものが派手カラーなんて。
でもよく考えたら企業を表す色として強い色を選んでるし、「色の好き嫌いが購買に反映されないし注意喚起にもなる」から、むしろ理屈に合った明快な色チョイスなんですね。
ヨーロッパってこういう集団の統一/差別化をデザインに現わして、集団の内外にアピールするのが上手なのかも。やっぱり地続きで隣り合って競い合ってきた歴史があるからか。サッカーチームの紋章や地方の街ごとの旗に観られるこってり独特の迫力、やりきってるデザインに通じるので は、という感想でした。
|