pdweb
無題ドキュメント スペシャル
インタビュー
コラム
レビュー
事例
テクニック
ニュース

無題ドキュメント データ/リンク
編集後記
お問い合わせ

旧pdweb

ProCameraman.jp

ご利用について
広告掲載のご案内
プライバシーについて
会社概要
コラム
イラスト

女子デザイナーの歩き方 第78回
キッチン入れ替えで見えたあれこれ
moviti/片山 典子

[プロフィール]
1964年神戸生まれ。京都市立芸術大学卒業、東京でインハウスデザイナーとしてパーソナル機器のプロダクトデザインや先行開発に携わる。デザインの師匠である同業のオットと2人暮らし。2005年から“デザインって何だ!”と称してノンジャンルで自主活動展開中。最近はフリークライミングとバスケットボールの“大人部活”と旅行にはまっている。2010年から本格的ソロ活動(離婚じゃなくて独立)開始。
http://moviti.com


このコラムでは、デザインのジャンルの枠を超えた活躍をされているmovitiさんに、さまざまな観点から女子デザイナーの歩き方を語っていただきます。


1年の締めくくりにふさわしい話題かどうか分かりませんが、先日キッチンを入れ替えました。

私のような地方出身者はいつまで東京に住むか、と心のどこかで思い続けるのですが、とっくにマンションは買ってるし部屋も改装してるし。昭和レトロなキッチンだけマンション新築当時からの30年ものだった。実は去年、業務用調理台やタイルを自力で揃えて施工を頼むつもりで知り合いの工務店にメールしたら返事がなかった。きっと大変なのね。

きっかけはガス点検のお姉さんに「何かお困りのことはありますか?」と言われて思わず「ガスコンロが古くてつまみを捻ると取れることがあります」という会話から。システムキッチンをリニューアルというのは外車を買う、とかと同じくらいすごく贅沢なイメージがあったんですが、実際ボロくなったんなら必要なんですな。

というわけで早速東京ガスに相談した。新宿にショールームがある。当初はガスコンロ/オーブン一体レンジを置き台だけ一緒に交換も考えた。そういえば東京ガスのCMは印象的なのが多いけど、自分がお客様になるとは想定していなかった。アヤノグリル、綾小路から綾野剛。
http://home.tokyo-gas.co.jp/living/kitchen/conro/purchase/index.html

びっくりしたことが多いので箇条書きで書いてみます。実家がIH化したのも10年前だし、昔のモノから知識更新してないのが露呈。以下

・今はガスレンジオーブン一体タイプはない。オーブン一体だと床からまっすぐガス管が貫いているので、管も付け替え。

・現代のガスレンジは安くても自動消火機能付きの背の高いゴトクがフラットな平面に飛び出している、舶来風だ。琺瑯の受けトレイなんてない。点火は捻らないでプッシュ、火加減は軽い左右レバー操作。

・タイマーが付いてるし。操作部は電池駆動か。

・グリルは入れたもののサイズを検知して火加減を自動調節してくれる。ちょっとしたオーブンみたいな位置づけのようだ。

・ガスレンジは左右壁15cm開けて施工すると決まっているらしい、前のはびったり壁に付いていたが、考えてみたら壁に延焼とかコワいですよね。

流しもダブルシンクでデッドスペースも多くて使いやすいわけではなかった。この際まるっと交換に決める。ダブルシンク、当時は流行ったのだろう。

TOTO、クリナップ、タカラ、LIXIL、ノーリツ、パナソニック、トクラスいろいろあります。これもショールームが新宿に多い。うちはベーシックな幅1800のキッチンビルトインのレイアウトを継続、ショールームではちょっと地味なポジション。今の新築はアイランドとか対面式とか主流なんでしょうな。あとビルトイン食洗機、据え置きタイプは欲しくないけどビルトインならちょっと欲しいアイテム。
http://home.tokyo-gas.co.jp/living/kitchen/system_k/lineup/index.html

今時身長に合わせて台高さを決めたり、床面積に応じて奥行きが選べたりするんですね。こういうアイテムって人間工学が反映しやすいというか、ドアを開けるときの重さ、閉まる時の動き、引出しの軽さ、照明位置などデザインやり甲斐ありそうだなあ。昇降式の棚とか床の蹴込み一杯まで容量な引出しとか。流しの前側に小さいポケット引出し、前にもたれて作業ができる太い手すり、チャイルドロックとか。そもそもいまどき棚のドア板厚が薄くて小口にビニールなライン材が貼ってあったりしない。そういうところがもう新しい感じがする。

ドア付き吊り棚にはドアハンドルがない、フラットパネル。そこに同ツラでレンジフードが収まる。壁も台も光沢仕上げのフラットで全て収納されると、憧れのイタリアデザイン誌のようなキッチン風。これがドア吊り棚の下にオープン吊り棚がつくといきなり「昭和の日本の台所」になる、不思議なものだ。見せる収納もほどほどだな。

・流し排水口のゴミ溜める籠が浅くなってる、そうか溜める前にこまめに捨てた方がぬるぬるにならなくていいのか。

・レンジフードに「常時換気」のキーがある、高層マンションで窓が開かない住戸の常時換気用だそうだ。あーなるほど。

・食洗機の洗剤は普通の食器洗い用ではない専用のが存在する。

カタログやショールームを見比べると各社のセールスポイントやこだわりが見えてくる。新築よりリフォームに強そうなノーリツで、ドア色の「パールブルーマリン」が気に入ってBesteに決める。
http://www.noritz.co.jp/product/kitchen/beste.html

事前打ち合わせには東京ガスの営業さん、ノーリツの営業さん、施工会社の人までやってきて恐縮する。でもカタログ上では搭載できない食洗機が搭載可能と分かった、現場の人ならでは。排水管の位置も思い切り後ろに下げられる、蛇口は食洗機とのスペース取り合いの可能性があるので孔の開いてないシンクを手配することにした。吊り棚も部屋の壁を梁近くまでカットしてワンランク背が高い吊り棚を入れることにした。背が高い人なら調理台と吊り棚の高さバランス(顔を上げたときに頭をぶつけたりしないか)をこのタイミングで確認できる。旧棚のデッドスペースもかなり解消。コンセント、照明、温水器の方式も確認。壁もクリーム色のタイル貼り(これもレトロでかわいかったが、目地は汚れますね)から白いパネルにする。このパネル、白からアイボリーの6枚くらいの色差が超微差なのが、日本の細やかさだなあと思った。

工事は2日間。開始1時間であっけなく解体撤去。昼までガス機器撤去、ガス管交換。キッチン組み建ての職人さんが上下水道の配管工事もできるので、待ち時間なくどんどん作業が進む。壁パネルを貼る、置いてあるときにはプラ板みたいに頼りない建材なのに、貼るといきなり壁面がキリッとしている。午後から上の棚とレンジフード取り付け。梁が少し真ん中が下がっていたようで、ドアが閉まらない、ネジ留めの順番を変えて締め込むと無事収まった。梁を避けて棚の形を現場合わせ、巻き尺でどんどん当たって寸法出し、材を切る時もさっと直角で当たりをつける。わーこういうのは私歪めてしまうので、憧れるなあ。上吊り棚とレンジフードを仕上げ、流し台とコンロの枠をセットしたところで1日目終了。

2日目はシンク一体のステンレストップを載せるところから。食洗とシンクの配水管との取り合いを見ながら食洗機を仮置き。結局右に蛇口、食洗機も高めに置けると職人さんが判断して、シンク縁に蛇口取り付けの孔を開ける。普通のハンドドリルのアタッチメント交換して開けている、すごいなmakita。食洗機の上下のスペーサーも現場合わせで作っていただく。上のスペーサーには見た目重視でハンドルも付けて、水平ラインを通してくれる。

作業中も施工会社内の他の人から電話で連絡しあって一時的な助っ人とか頼んだり臨機応変だ。親方が見習いを叱る、兄貴は親方の採寸を手伝い黙々と配管する、見習いが親方が食洗機を持ち上げた時のかけ声が変だと笑う、ちょっとしたドラマだ。

15時過ぎガスコンロをセット、ガス管と食洗機の水道管をつないで、16時30分完了。ええ! こんなに短期でできるんだ。東京ガスから使い方とメンテナンス説明があり(わざわざお姉さんが来た)、食洗機やレンジフードは施工親方が取り説見ながら説明してくれる。最後に流しと壁のシーリングを盛って「明朝まで触らないで」と言い残して施工の皆様退出。お疲れさまでした。

あらまあ! 家まるごと内装工事したかのようなリニューアル感! これはコスパ高いな。オットも思わず磨いちゃうし、台所に立つ姿が得意気。

こういう装置とプロダクトの中間みたいなものは生活がしゃんとするというか心機一転しますな。食洗機も手抜きじゃなく、文明開化な贅沢感を味わう今日この頃。そして気がつくとこのブルー、ソファと色が同じだった。 

 


Copyright (c)2007 colors ltd. All rights reserved