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女子デザイナーの歩き方 第69回
町工場の侠気モビリティ
moviti/片山 典子

[プロフィール]
1964年神戸生まれ。京都市立芸術大学卒業、東京でインハウスデザイナーとしてパーソナル機器のプロダクトデザインや先行開発に携わる。デザインの師匠である同業のオットと2人暮らし。2005年から“デザインって何だ!”と称してノンジャンルで自主活動展開中。最近はフリークライミングとバスケットボールの“大人部活”と旅行にはまっている。2010年から本格的ソロ活動(離婚じゃなくて独立)開始。
http://moviti.com


このコラムでは、デザインのジャンルの枠を超えた活躍をされているmovitiさんに、さまざまな観点から女子デザイナーの歩き方を語っていただきます。


●手作りハンドバイク

関東甲信越の豪雪、はじめはパウダースノーに浮かれてたんですが、スーパーの牛乳やパンがなくなって、自然災害の怖さを感じました。

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http://handbike.jp/
http://zenmono.jp/projects/11

2012年に国連大学前で試乗させていただいたハンドバイクジャパンさんがzenmonoでクラウドファンディングしていたので、板金ワークショップやりたさに5,000円支援して、この機会にお話を伺ってきました。関東は2回目の大雪の翌日、工場が漏水しててんてこ舞いなところに行ってしまった。申し訳ありません。

もともと車椅子のアタッチメントとして手漕ぎ機構ユニットというのはあるそうで、北京パラリンピックから種目になった。
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n298/n298004.html

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%89%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AB

これをベースにしているが、後傾したシートポジションで長距離移動を想定している。

宇賀神さんは(家具や大型機械の筐体を作る)ステンレス溶接工場、ハンドバイクのデザインをしている柴田さんは自転車好きのインテリアデザイナー。4年前に元自転車乗りのライターさんから相談され、数多の自転車メーカーに断られ、作ってみるかとなったそうだ。4年でプロトタイプ、試験を経て販売って早いですよねーというと、今思えば早いけど、1台目はきつかった、知らなかったから踏み出してしまったという。

基本設計はあるが、オーダーされてリクエストに応じてアレンジして、パーツ入手がスムーズであれば1カ月程度で組み上がる。子供用や片手ペダル仕様もオーダーできる。今回3台並べていただいたが、ハンドルもフォークの形状もリア車輪フレームもカタチが少しずつ違う。現在体重120kgを載せられる強度/重量はアシストなしが23kg、アシスト付きが28kg。ほんとは利用者に合わせて軽量化もしたいんですけどね、とのお話。道交法的には自転車、車椅子、リアカーと同じ軽車両。

通常の車椅子は見たとおり、車輪を回すには肩や背筋の負荷の大きい姿勢で「後ろを誰かに押してもらう」由来のかたち。後ろにもたれかかり脚を前に投げ出し、身体の前で漕ぐのは、負荷が軽くはるかに走行距離が伸ばせる。

停めてある姿は一見チェーンが顔のすぐ前、ブレーキワイヤーがハンドペダルの回転分大きく孤を描いて威圧的。脚は前輪横の曲げパイプのフットレストに投げだすクルーズ感あるfun to driveな外観。いざ座ってみるとハンドルユニットのチェーンやブレーキワイヤーはあまり気にならないし、後ろに倒れ込む不安感もない。

ハンドルを回転させなくても前後に動かすだけで走行する。ハンドルを握ったままブレーキ、ギア操作ができる。えーと私は不器用なので国連大学広場でゆったり漕いだときはすぐハンドル操作も慣れたつもりだったが、小回りには3輪の重さにちょっとまだ慣れなかった。健常者なら脚で前輪をはさんでいるので、脚力でもカーブ動作できるそうだ。

基本パーツは日本で入手できる自転車パーツ。ちょっとミッドセンチュリーでカラフルな椅子はインテリアつながりで北海道のメーカーさんで作り、塗装は諏訪の自転車塗装で有名な工場で行っている。柴田さんのデザインへのこだわりなんだろう。個人のネットワークを活かしていい人に賛同してもらってパーツを日本のいたるところから集めているとのこと。

電動アシスト機構はサンスター(歯磨きメーカーと思っていたら本来スプロケットやさんとは知らなかった)。
http://jp.sunstar-engineering.com/corporate/history.html

耐久試験は3輪を請け負ってくれるところを探して大阪に行き着いた。パーツは町の自転車やさんで修理できるし、ステンレスのフレームは20年使える。輸入のモビリティは海外規格パーツになるので修理が難しいんじゃないのか、とのこと。

2012年、試乗したときはまさにプロトタイプ4台ができあがったタイミングだった。zenmonoをきっかけに販売開始、今6台を販売したところ。6歳の女の子にzenmonoで資金調達しつつ、無事先週岐阜まで納品したとのこと。購入者は健常者/障がい者半々、まさにバリアフリー。らくちんリカンベントみたいなものですもんね。

これまで親の運転で自動車通学していた下肢障がいのある中学生が、かっこいいハンドバイクで通学するようになったり。70歳の人がニューヨークマラソンで走りたい(ボストンの事件で実現せず)とか、ストリート系にいちゃんが東北150kmを3日かけて走る企画(初日に初めて乗って60km走行したそうだ)とか。

障がい者のパワフルな人はほんとに行動力も筋力も説得力もあって、キャラがたってるものだが、そういう魂に火をつけるモビリティのようだ。

改めてzenmonoのサイトを見たら、NHKのエルムンドなど、いろんなテレビやメディアの取材を受けている。でも助成金申請のプレゼンしても「なんで手で漕がないとならないの?」とか的外れなことを言われるそうだ。

乱暴に言うと「福祉機器=バリアフリー=誰にも使える=やさしい=ちょっと鈍なカタチ」「かっこいい車=猛スピード」「障がいのある人は行動半径が小さい」とか固定観念が邪魔をしているんじゃないか。とはいえ福祉機器展に出したことがあるそうだが、浮きそうだ。

モビリティの開発も特にイギリスでは斬新なものが発売されているし、街乗り自転車も海外では変わった機構、乗り心地のプロトタイプが多い。日本では道交法とかもあるけど、慎重な民族性のせいで幅広いバリエーションにはならないのかな。大企業だとロボット由来の自己平行機能搭載とか最新技術の研究投入になるのかな。

http://irorio.jp/canal/20140212/112032/

http://www.youtube.com/watch?v=xIpSvuW54jo&desktop_uri=%2Fwatch%3Fv%3DxIpSvuW54jo&app=desktop

http://walyou.com/lunartic-bicycle-prototype-with-two-tyres-of-different-sizes/

http://www.kurefa.com/article_20130620.html

まだ1台1台受注/製作/納品ペースだから、使う人の喜ぶ姿を丁寧に見れるのがとても励みになっているとのこと。生産体制が大きくなって広まって欲しい気もするが悩ましいところ。例えば7年後のオリンピック/パラリンピックの会場での移動用や行進に使ってもらえるといいなあ。と夢が広がってました。

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で、結局板金ワークショップは後日、となりました。
 

 


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