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女子デザイナーの歩き方 第121回(2018年7月4日掲載)
東京手仕事プロジェクトに参加してみた
moviti/片山 典子

[プロフィール]
1964年神戸生まれ。京都市立芸術大学卒業、東京でインハウスデザイナーとしてパーソナル機器のプロダクトデザインや先行開発に携わる。2010年独立、3D CADでプラスチック製品から布製品、ソファやモダン仏壇の木製品、クラフト系などネーミングやロゴ込みでいろいろ手がけている。趣味はフリークライミングとバスケットボール、旅行。
http://moviti.com/moviti_nori


このコラムでは、デザインのジャンルの枠を超えた活躍をされているmovitiさんに、さまざまな観点から女子デザイナーの歩き方を語っていただきます。


ギフトショーなどで「東京手仕事」のことは知っていたし、なるほどデザインで今風な、インバウンド意識してる伝統工芸品だな。
https://tokyoteshigoto.tokyo/

もともと狭い業界の中で、重箱の隅をつつくデザインをしていた反動か、フリーでデザインの仕事をする醍醐味として、いろんな人といろんなテーマでやってみたい、というのがありまして、東京手仕事に参加してみました。お土産好きだし。伝統工芸×デザインで商品開発を東京都が支援、というプロジェクト。無事平成29年度の対象商品に選ばれました。以下応募を検討している人の参考になればと書いてみます。

東京都中小企業振興公社 伝統工芸品産業振興事業
http://www.tokyo-kosha.or.jp/support/shien/dento/index.html

平成29年度「東京手仕事」プロジェクト商品開発における支援対象商品
http://tokyo-craft.jp/develop/proposal2018/

5月末から6月、参加工房一覧を見て、まずは見学へ。見学に行っても作っている現場を見せてくれるとは限らないが、特に小さい工房の職人は個性的で、振興公社事務局の人が話をつないでくれてよかった。いろんな分野の3アイテムを提案してマッチングに臨んだのが2017年6月、応募総数約170の中から本格的に商品開発するデザインが20個選ばれる。私は家族経営のつまみ簪(かんざし)の工房とマッチングが成立した。

アイデアスケッチは洋装に合わせるアクセサリー4種、つまみ簪はいかにも江戸の伝統工芸らしいのに過去3回の商品にはないし。標本箱のような透明ボックス、ナチュラルイメージで。一方creeema(手作り販売サイト)とは一線を画したいし、最近つまみ簪作るの盛り上がってるし。

ちなみにスケッチ選抜発表のときに他の選抜スケッチも見ることができますが、まあデザインが富士山、江戸小紋、猫、松竹梅辺りに偏りがちだわね、分かりやすいし。ムリに変えなくても良いけどマンネリ注意だな。

特徴的な作業が各試作ごとの試作費請求、各試作説明などの書類作成と連絡手段はSNS(SMART Message)利用。手間がかかるというほどのものではないが、公的機関だから機能的というかきちんとしてる。伝統工芸な職人も年配の名人と若いご子息のペア参加が多いから、SNSもなんとかなるのかね。

昨年9月から今年2月の間に3回試作を作る。これぐらいきっちりしないとダラダラしちゃうんだろね。簪は七五三、正月、成人式と繁忙期だったので恐縮した。デザイナーは指示書作成して気をもむだけ、作るのは職人さんだから。

締め切りには試作の写真を送り、10日後に各フェーズの試作実物を見ながら5人のアドバイザー(伝統工芸、デザイナー、バイヤー系の人たち)と30分の会議、後日さらにアドバイザーのコメントがメールで届く。アドバイザーのアドバイスは結構的を得ているというかダイレクトで、過去の事例を照らしながら迷わせないようにバッサリ斬ってくれる。4アイテムは1つに絞られ、カラーイメージも明確になった、ふらふら迷っている暇はないのだ。第三者として参加してるならこれぐらいズバズバ言うのがいいね、参考になった。しかし毎回の試作はそのまま事務局預かり、後日見たい場合は貸出申請が必要。これは参った。

ちなみにアドバイザーは商品性のアドバイス、振興公社事務局の人はプロジェクトの円滑な進行が仕事なので、商標などの他社抵触の調査や安全性、取扱説明書は、自主的に動き判断するしかない、ほんとはこの辺りもフォロー希望。振興公社には特許の相談窓口もあるし。

3回試作しているうちに職人一家とも馴染んできて、お母さん娘さん私の女子チームノリになってきた。工程や原価も見つつ、仕上げの調整はプロダクトデザインというより普段のお洒落感覚で話し合って、お母さん提案のディテールにしたり。

出来上がりは5トーン同系色に染めた花弁で"下り藤"のつまみ細工を細いベルベットリボンにびっしり並べたネックレス。二重花弁のチョーカータイプと一重のロングタイプ。金具なしで結び具合でアレンジ自由。商品名karen(花連、可憐)、ロゴも作りパッケージに印刷。全然江戸感がないがお洒落だ。

初期スケッチ選抜と、最終試作の審査で「完成と認められる」とデザイン料が支払われる。特に東京でない人が参加する場合は交通費は別途出ないので注意。職人側は自分のところの商品開発委託なので無償。完成しても支援対象商品になるとは限らない、支援対象商品になると三越などデパートの売り場や海外見本市への出品など販路がぐっと広がる。

5月末には日本橋のホールで商品発表会、都知事賞など3商品が表彰、小池都知事も参加するのでメディア取材も多い。

商品発表会のときは作り込まれたリーフレット、商品同梱のミニリーフレット、9月には豪華装丁のブックが作られる。江戸紫と白黒ハイコントラストの写真が”必殺仕事人”イメージ。箔がつくよね、と職人さんも思ってほしいし、「お父さんに花を持たせる」な一面も垣間見えた。

それにしても商品の制作が大変、とお母さんが言ってる、考えてみれば職人さんはこれまで自分のペース、できる工夫で手を動かして作って売っているのだから、他人が介在して作るのは慣れてないだろう。自分たちのこととして謙遜してるのかなあ、慣れれば楽しくなってくれるかなあ。無理をさせてしまったかなあ。やがて海外の見本市に実演しに行ってもらうくらい面白い展開になればいいなあ。


 


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