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女子デザイナーの歩き方 第112回(2017年10月4日掲載)
ウィンザーチェアの奥深さ
moviti/片山 典子

[プロフィール]
1964年神戸生まれ。京都市立芸術大学卒業、東京でインハウスデザイナーとしてパーソナル機器のプロダクトデザインや先行開発に携わる。2010年独立、3D CADでプラスチック製品から布製品、ソファやモダン仏壇の木製品、クラフト系などネーミングやロゴ込みでいろいろ手がけている。趣味はフリークライミングとバスケットボール、旅行。
http://moviti.com/moviti_nori


このコラムでは、デザインのジャンルの枠を超えた活躍をされているmovitiさんに、さまざまな観点から女子デザイナーの歩き方を語っていただきます。


長野県信濃美術館を経て日本民藝館で「ウィンザーチェア -日本人が愛した英国の椅子-」11月23日まで開催。良い展示です。
http://www.npsam.com/exhibition/detail/chair
http://www.mingeikan.or.jp/events/special/201709.html

ウィンザーチェアとは:尻形のくぼみをつけた分厚い木製の座板に、脚や背棒などの部材が直接差し込まれた椅子(本展図録より抜粋)。

本展の図録によると、日本では松本で最初に木工家の池田三四郎によって、戦後の産業復興として制作が始まったそうで、私はそういうのを親戚の家とかで見かけたんだろう。その時見たウィンザーチェアはロクロでブリブリ挽かれた太い脚、大柄な人サイズの重厚な椅子、座りにくい、と思ってしまった。

若いころは肉厚で濃い味の工藝が苦手だった。最近やっと河井寛次郎美術館だの益子に行ったりしている。素朴でアフリカの家具のようなおおらかな形が日本にもあるね、とだんだん敷居が下がってきているのは歳のせいもあるかも。

工藝な家具は古いから良く見えるのか、フォルムや構成として完成されているのか混乱するし、木の温かみが強すぎる、クラシック、定番スタンダード過ぎて存在が大きすぎてイジる余地がない…と思っていましたが。

いろいろモダンに上手く展開しているデザイナーもいて、良い活動だなあ。

ところで角度をつけて棒を挿すには孔の角度をコントロールしてるんだろうが、治具でなんとかなるんですかね。
http://windsordepartment.com/

この展示の時に資料としてウィンザーチェアの過去の図版が大量に展示してあって、あれ? なんかバリエーション幅が広いね、素朴からクラシックまで、棒の挿し方や支え方もいろいろ。結構自由なカテゴリーなんかね。


**

本展は撮影禁止なのでスケッチブックと鉛筆持参で、実物をクロッキーのように見ながら描いてみた。

2階の奥の広い部屋にずらりと椅子が並んでいるのは壮観だけど、観てるだけだとぼんやり見逃してしまうディテールも観察しやすい。深く気が入って観ることができた。

こんな細い棒数本で背中支えられるのかしら、座り心地要素の”たわみ”を意識して作ってたのかしら。

漠然と抑揚のあるように見えていた脚も篏合の受け側が太く挿し側は細くて、実は合理的理由だったのか。

4本脚が各々挿さってるだけのもあれば”貫”で繋いでる形状が特徴な椅子もある。

椅子単独ではランバーサポートはできないからクッションを腰に当てて座るのかな。

どうもアメリカスタイルのは苦手で、イギリス系は好きなのが多い。

背板の真ん中に同心円の凹模様を細工するのは今でも職人さん嫌がりそうだな。

丸棒と細い平板、異なる断面形状の棒を同一椅子の背で隣り合わせで使い分けたり、脚の嵌め方が前は座の孔に挿してて、後ろは座の縁の切り欠きで組み合わせだったり、自由だな。
座面が分厚くて前を粗く削いでボリューム減らした座が肉の塊みたいな椅子もある。そうか座の厚みですべての嵌合を留めるから重くなるのか。

経年というより元々ラフに作ってるのか脚付きがそもそも非対称でねじれた子供椅子。よく考えたらロクロで綺麗に挽くようになったのは産業革命で旋盤が高速になってからなんだろうな。

技術が拙くて丸太の面が残った表情が逆にナチュラルな味わいの椅子もあるし、前が猫足(カブリオールレッグというそう)な豪華で威圧的なのもある。

他の部屋の「欧米の多様な椅子」の展示も日本の工藝系美術館セレクトの素朴で多様な椅子が、”19世紀でこんなアバンギャルドなモノ作ってたのかー”、目から鱗を落としてくれて楽しかった。この辺りも図録に載ってて嬉しい。

ところで座面の後ろに手のひらサイズの出っ張りがあって、椅子の背を2本の斜め棒で後ろから支える機構ってなんというのかしら? と調べたら、飛び出した部分はダブテイル、笠木を支える2本の棒はブレイシング・スティックというらしい。

以下のサイトにディテール、パーツの名称など載っていて参考になります。
http://www.windsorchair.jp/


 


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