女子デザイナーの歩き方 第105回(2017年3月3日掲載)
コンペでいろいろ考えた
moviti/片山 典子
[プロフィール]
1964年神戸生まれ。京都市立芸術大学卒業、東京でインハウスデザイナーとしてパーソナル機器のプロダクトデザインや先行開発に携わる。デザインの師匠である同業のオットと2人暮らし。2005年から“デザインって何だ!”と称してノンジャンルで自主活動展開中。最近はフリークライミングとバスケットボールの“大人部活”と旅行にはまっている。2010年から本格的ソロ活動(離婚じゃなくて独立)開始。
http://moviti.com
このコラムでは、デザインのジャンルの枠を超えた活躍をされているmovitiさんに、さまざまな観点から女子デザイナーの歩き方を語っていただきます。
たらの芽、ウド、イチゴ、ソラマメ、春が近いですね。新じゃがいも、新キャベツを待っている。
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東京ビジネスデザインアワード、無事、テーマ賞/優秀賞をいただきました。賞状の署名が小池百合子都知事というのがキャッチーで分かりやすい。ありがとうございます。
https://www.tokyo-design.ne.jp/results/
https://www.facebook.com/TokyoBusinessDesignAward/?pnref=story
いやもうこの歳でコンペってどうなのよと思いつつ応募する勇気を絞ってよかった、年齢制限もないし。
昔は商品化ありなし関係なくアワード感の高いデザインコンペが多かった気がするが、最近デザインマッチング的なコンペが増えて、そういう課題意識のある企業との出会いの場だし、相性だからデザイナーもいいアイデアが浮かんだら、応募したら何か新しいつながりがあるかも。それにしても公開プレゼンはかなりドキドキだった。会社員時代に登壇したことのある会場(東京ミッドタウン)だったのはラッキー。
そもそもバブルの頃に大学でデザインかじって、会社に入ってから日々の仕事の中で”誰に何を説明して説得するか”資料作り、パワポやプレゼンを何とか身につけたので、井の中の蛙&時代のコンプレックスがある。デザインだけでなくビジネスモデルとして提案、それは普段の雑談ではやるけど、それを整理して仮説を立てたらええんかしら。
今時の若いデザイナーはちゃんと学生の間にそういうのを身につけているのだろうから上手なんだろうな、まあでも同じ土俵に立って恥かくほど誰も気にしないだろうからドーンとやってみよう、とか思ったのだ。実際は既知のJDPの人や知り合いが会場にいて、まあそれはそれで緊張がほぐれた結果オーライだった。他の人のプレゼンを聞くのも、やっぱり自分も参加したから気を入れて聞くことができた。
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提案は「ユーザーが仕上げる花器デコレーションシート」。タッグを組んだ丸和製作所さんは金属板のレーザーカットが得意。
プロダクトデザインって「形態は機能に従う」、この20年くらいで劇的に洗練され、完成してきたと言っていい。使い勝手や好みの微妙な差のたくさんの身の回りのものが豊かに整っていく。一方でパソコンや技術が「デザイナーの自由」を広げている。共感できる自由って言われても、何にしましょうかね。意外と人の美しいと感じる幅は広くない、追いついてない。新しいものと出会いたいのにコンサバ、長く変わらないと飽きる。柄を付ける、というのは表面的でプロダクトデザインの正面からじゃないアプローチみたいに感じるが、加飾の技術の応用といった、アイデアを出さねばならない場面がちょこちょこある。
今の文様を作りたいなあ。オリジナルに世界中のいろんな柄をブレンドしてのびのびと素敵に抽出してる人たちもいる。
90年代にデザイン全体が一旦シンプルモダンに寄ったけど、昨今の北欧ブームやハンドメイドブームの影響か、作家っぽいテキスタイルデザインにもメジャーになった。マリメッコは昔から鼻歌交じりの落書きみたいなのに、大胆で今の気分がアップデートされてるのが悔しいほどかっこいい。
http://suwadesignstudio.com/
http://hirocoledge.com/
http://www.mina-perhonen.jp/
http://ottaipnu.com/
http://www.marble-sud.com/
http://www.fujie-textile.co.jp/collection/heartart.html
http://www.marimekko.jp/
レーザーカットで自由に何の形にしようか、後付けの柄じゃくて、プロダクトに絡めたい。
平面を簡単に折ってピンと立ち上げる、平面と立体の間のモノだから「錯視、書き割り」みたいなオシャレでユーモアのある「?!」と思わせるもの。周囲を見てみると最近の銀座の建築はベーシックなキューブに表面処理なグラフィックが大きなCGみたいな非現実感を誘発してる。暮らしの中のプロダクツにそういうのを取り込む、シャープなステンレスでできている。真逆の表情を持つ自然の植物と組み合わせるのが新鮮かも。
流通の時はフラット、簡単に折り曲げて手近なボトルをセットすると、メタリックな表情の花器ができる、というもの。スタッキングできるし、軽くてギフトにも使える。花瓶は家にいくつも持てないけど、これなら手軽。以前草月でいけばなを習っていた時、花器の形や個数で活け方が変わる、空間を感じさせたりできるのが面白かったのだが、そんな体験のきっかけにしたい。
Rhinocerosでモデリングして側面図を投影したdxfをイラレでトレースしてみた。CGのワイヤーフレームが実体化したみたいな、とぼけたクールさがありそう。とはいえ自分のごく個人的な思いつきではなかろうか、分かってもらえるのか正直びっくりした、拾っていただいて感謝です。
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12月にテーマ賞通知を受け、協働するメーカーさんと1月末の公開プレゼンまでに試作を作り、プレゼン準備と特許性の確認をした。年末で多忙な折り、幸い1発目で想定していたモノを作っていただいた。丸和製作所さんともずっと知ってる人みたいに急速に仲良しになった、優秀賞の発表の瞬間、社長さんと思わずハイタッチしてしまった。
初期の段階で公開プレゼンしたり、特許事務所に相談に行ったり、客観的にいろんな人の反応が見れるのは無茶振り級に大変でしたがありがたいです。いろいろと東京デザインビジネスアワードが相談に乗ってくれたり優遇もある。この際キチンとした商品化のプロセスを体験したいと思います。商品化したらまたここに書けるように、頑張ります。
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