 
大谷和利
テクノロジーライター、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。アスキー新書より「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、エイ出版より「Macintosh名機図鑑」が好評発売中 |
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日本での発売開始日の、まさに前日の夜にその決定が公にされたiPad 2。個人的に、その2日後にできればiPad 2を使いたいプレゼンテーションの予定が入っていた筆者は、新宿のヨドバシカメラに朝の6時前から並び、整理番号13番を得て、無事にWi-Fi+3G 64GBモデルを購入することができた。
初代iPadのときには、クラウド系のサービスを使えば内蔵メモリはあまりいらないのではないかと思い、実際にEvernoteやDropBoxの利用頻度は大きく高まったが、同時にデジタルマガジンなどのコンテンツ系データはデバイス内に保持するケースが多く、結局iPad 2では、最上位モデルを選択することになった。
こう書くと、今回のコラムのテーマはiPad 2だと思われるかもしれない。しかし、個人的には順当進化的な本体よりも、まったく新しい純正アクセサリのSmartCoverに感心したので、あえてこちらを採り上げることにした。
ご存じのようにSmartCoverは、iPad 2に対してマグネットにより吸着し、携帯時などにディスプレイ面を保護してくれるカバーである。ノート系Macのラッチレスメカニズムや、一定以上の力が加わると自然に外れる電源コネクタのMagSafeなど、近年のアップルは磁力の応用技術に積極的に取り組んでおり、その最新の成果がSmartCoverなのだ。
実際に分解・確認を行ったアメリカの修理会社iFixitによれば、SmartCoverには21個、iPad 2には10個のマグネットが埋め込まれているという。ワイヤレスネットワークに依存するデバイスとそのアクセサリに対して、磁力を発生するパーツがそこまで組み込まれていて大丈夫なのかとも思うが、もちろんそのあたりは周到なテストを経てのリリースなのだろう。実際上も、Wi-Fi、3G、Bluetoothのすべてにおいて受信状況に問題が出ているという話はなく、個人的に影響を感じたこともない。とはいえ、磁気テープ付きのカード類を直接近づけるようなことをすれば情報が消える可能性はあり、十分な注意は必要だ。
使われている磁石は、強力だが特殊なものではなく、ただその配置や形状、向きに関しては最新の注意が払われている。このあたりの詳しい情報について知りたい方は、iFixitのサイト http://www.ifixit.com/Teardown/iPad-2-Smart-Cover-Teardown/5089/1 を参考にされるとよいだろう。
さて、その外観から日本のFRP浴槽などとの組み合わせでよく見かける保温用のフタにも喩えられるSmartCoverだが、iPad 2本体のデザインがシンプルなタブレット型だけに大きく変えようがないだけに、純正アクセサリのほうで革新を行うという目の付けどころが新鮮に感じられる。単なるカバーではなく、スタンドとしても機能する点や、その固定方法にマジックテープなどを使わずに視覚的なクリーンさを維持しているところが注目される。
一見、均等の幅に思える表面の折れ溝の位置も、スタンド利用時の三角断面形状を美しく整えるために調整されており、シンプルさと機能性を両立させるためにかなりの努力が払われたことが伺える。


iPad 2に装着されたSmartCover。よく見ると、折れ曲がる溝の部分の間隔が一定ではないことが分かる。これはスタンドとして利用する際に、きれいな三角形を形作るためだ。
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すでにおなじみの、閉じればスリープ、開くとスリープ解除の機能は、確かに便利。SmartCoverが風呂のフタに似ていることにヒントを得たSmartTubというアプリでは、この機能を利用し、カバーを開けたときに水のしたたる音がして、アヒルのオモチャが泳ぐバスタブが表示される。
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複数の小型磁石のS極とN極を交互に並べることで、自動的に位置決めが行われるようにしたヒンジ部は、合体時に、まるで最初から固定されているパーツのように感じられる。もっとも、その結合力を過信しすぎてハンドル代わりにこの部分を持ち、本体が落下して壊れたという事例もあるようなので、あくまでもカバー兼スタンドであることを理解しておかねばならない。
金属同士が擦れ合って傷付かないように、接触部分には樹脂パーツが配されている点も細かい配慮だ。特にヒンジ部の樹脂パーツは、埋め込まれたマグネットを隠すカバーの役目も担っている。


近づけるだけで、磁石によりピタッと所定の場所に固定されるSmartCoverのヒンジ部分は、一見、最初から作り付けられているかのような収まりのよさだ。
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ヒンジ部分は二重に折れ曲がる構造。また、金属同士が直接的に触れあって傷を付けないように、接触箇所には樹脂製のカバーパーツが付いている(クリックで拡大)。
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純正アクセサリだけあり、SmartCoverにも、Designed by Apple in Californiaの文字が誇らしげにプリントされている。
タイピングに適した置き方の場合には三角形の頂点で、写真や映像観賞に適した置き方をする場合では三角形の一辺で支えるというように、二重のヒンジ構造を巧みに利用して安定させる仕組みも秀逸だ。
その他にも、手持ちで縦遣いするときのグリップとして利用したり、完全に裏側に回して邪魔にならないようにするなど、かなり柔軟な使い方ができる。
欲を言えば、これで縦置きもできると理想だが(そして、SmartCoverを装着してあれば無理に垂直に縦置きできなくもないが)、それは無い物ねだりというべきか。


スタンド状にたたまれたSmartCoverを、メールやメモ作成などのキー入力作業に適した角度で利用するときの状態(クリックで拡大)。
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同じく、写真のスライドショーや動画鑑賞などに適した角度で利用するときの状態(クリックで拡大)。
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(クリックで拡大)
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SmartCoverをiPad 2の裏側にまわしたところ。こうすると、ほぼ素の状態と同じようにiPad 2を片手で持って操作できるが、個人的にはスタンドと同様に三角に折りたたんだ部分をグリップ的に使用することも多い(クリックで拡大)。
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半分に折って使うこともでき、その場合にはカメラのレンズをSmartCoverで遮ることなく、写真やビデオ撮影ができる(クリックで拡大)。
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ただし、SmartCoverの触れ込みの1つに、装着することでディスプレイガラス面の指紋跡などが自然に拭われてきれいに保たれるという効果が謳われていたが、確かに面で接触している部分に関してはその通りであるものの、溝の部分は接触の度合いが弱いため、どうしても皮脂汚れなどが残るようだ。その場合には、あえてカバーをする際に、面と面が滑るように動かすことで、ある程度改善できる。


SmartCoverの内側はマイクロファイバー的な起毛素材で覆われており、これが開け閉めのたびにスクリーン表面の指紋や皮脂汚れを取るという触れ込みだが、実際には折れ目となる部分に拭い残しが帯状に残りがちだ。
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なお、筆者のSmartCoverは、安価なポリウレタン製のモデルだが、上位製品で同じデザインの革製モデルも触ってみたところ、後者のほうが柔らかめで、折る際の力も少なくて済むように感じた。自分としては、スタンド状態からカバーに戻す際にポリウレタン製のほうが復元力があって小気味よく平らになる印象を受けたが、購入を考えている方は、見た目や手触り、カラーバリエーションだけでなく、そのあたりの違いも考慮して選択するとよいだろう。

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