 
大谷和利
テクノロジーライター、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。アスキー新書より「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、エイ出版より「Macintosh名機図鑑」が好評発売中 |
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2009年は、各社の防水カメラへの参入をはじめ、カシオのハイスピード動画撮影モデルや、ソニーのスイングパノラマ機能付き製品、富士フイルムの3Dカメラ、オリンパス・ペンのブランド復活など、個性的なデジタルカメラの豊作の年だった。
それは、従来型の製品企画に関する閉塞感の裏返しでもあり、不況の中でも売りやすい、しっかり差別化の図られた製品開発への回帰とも言えそうだが、いずれにしても消費者としては選択肢が増え、また迷う楽しみもあった1年だったと感じている。
そんな2009年の特徴的なデジタルカメラの最後を飾る製品として登場したのが、リコーの新発想モジュラーシステムカメラ、GXRだ。
GXRは、コンパクトカメラの簡便性と一眼レフの柔軟性を両立させようとする野心作で、ディスプレイ+ストレージ+バッテリー+操作系をまとめた本体と、レンズ+撮像素子+画像処理エンジンからなるカメラユニットを組み合わせることで、第三のカメラスタイルを作り出した製品である。


GXRは、その構造から想像するよりもはるかにコンパクト。レンズと撮像素子を一体化したカメラユニットも、確かにレンズ単体よりは大きいものの、ギリギリまで小型されている印象だ
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オリンパス・ペン E-P1とのサイズ比較では、グリップからレンズに至るディメンションはほぼ等しく、筐体の左端が出っ張るかどうかの違いと分かる。もちろんE-P1は、デザイン的なアイデンティティーの観点から横長ボディとしているところもあるわけだが…
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そのメリットは、レンズと撮像素子が一体化されていることで理想の光学特性が得られると同時に、レンズ交換式では避けられない撮影機構内へのダストの侵入を完全に防ぐことができる点にある。
反面、デメリットとしては、交換レンズ単体よりもカメラユニットのほうが、撮像素子や内蔵回路の付加によって必然的にサイズが大きくなり、価格も高くなることが挙げられる。また、マウントアダプタなどを介して既存の他規格のレンズを装着することができないため、おのずから選択肢が限られてしまうこともある。
リコーは、カメラユニットの規格をサードパーティに対して非公開にするわけではないとしているので、対応製品の拡充に関しては推移を見守るしかない。発売時点では、50mm単焦点でF2.5のレンズ+GRエンジン3を搭載したGRレンズユニットと、24-72mmのズームでF2.5-4.4の手ブレ補正機能付きSmooth ImagingエンジンIVを搭載したリコーレンズユニットの2つのカメラユニットが用意されている(焦点距離は35mm版換算。ちなみにデモ機は量産前のプロトタイプのため、画質に関しては評価外となっている)。
カメラマニアのツボを押さえたデザインや仕様設定に秀でたリコーだけあり、カメラユニットの仕上げや脱着機構はよくできており、合体時には視覚的にも物理的にも違和感やガタつきなどは一切ない。また、撮影時のホールド性も良く、合体メカとしたことの弊害も感じられなかった。


カメラユニット自体の仕上げも非常に良く、多数の接点を持つコネクタには脱着式のカバーが付属する
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脱着機構は、操作の容易さと装着時の剛性確保を両立させるために、スライド用の3本のレール溝と、2本の位置決めピンを用いる練られた構造。装着は赤丸印の爪と受けが噛み合って完了し、グリップ上部のスライドレバーで解除を行う仕組みだ
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発売時に用意される2つのカメラユニットのうち、リコーレンズ版にはアダプタレンスやレンズフードを取り付ける際に外すリングが組み込まれている。レンズ左下のボタンは、そのロックを外すためのものである
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本体の小型化のために、ビューファインダーは別体のオプションとなっている。これは、オリンパス・ペン E-P2や、ルミックス GF1と同様の構造だ。
ビューファインダーも、カバーまで含めてディテールまできちんとデザインされているが、表面の質感がカメラ本体とはやや異なり、装着時に後方に出っ張る点が(首から両吊りして持ち歩く際に)気になった。構造上、端子部分は致し方ないとして、多少コストがかかっても、ビューファインダー自体を前後にスライドできるようにするなどの工夫があってもよかったかもしれない。


専用の液晶ビューファインダーの端子カバーも、装着時に本体と一体化するようなデザインが施されている
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オリンパス・ペンのE-P2や、ルミックス GF1と同様に、外付けオプションの液晶ビューファインダーの受けの端子は、アクセサリシューの後方に設けられている
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合体の構造上、液晶ビューファインダー装着時には(他機種同様)それなりに後方へ出っ張ることになる。撮影時には鼻先が液晶面に接しにくくなる効果があるが、この状態で首から両吊りすると、接眼レンズが自分の胴に当たるのが気になる
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液晶ビューファインダーは、上方90度までの角度調整が可能。クリック感もしっかりしており、途中の角度で止めても確実に固定される
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液晶ビューファインダーの特徴を活かしたローアングル撮影の例。デモ機は試作品のため、画質評価用ではないものの、この段階でも十分なクオリティやボケ味が実現されていた
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オただし、このクラスのカメラだからこそ、ボディの塗装面の質感と、液晶ビューファインダーの樹脂ボディの質感の差がやや気になった。異なる素材の質感を統一する難しさはあるが、それでももう少し近づけられたのではないかと感じる
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操作系のインターフェイスや画面内の情報表示もこなれており、かつ設定のカスタマイズが多様に行える点も優れている。特にハイアマチュア以上のユーザーが対象のカメラでは、操作方法の解は1つではないことが多いため、熟考された基本設計+カスタマイズによる柔軟性の高さが、最終的なニーズを満たす唯一の方法と言える。


操作系は、各スイッチやボタン類の配置や使い分けから操作感にいたるまでよくこなれており、撮影モードと再生モードの切替などの処理も非常に高速に行われる
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液晶上部のボタンは、左から、各種設定のダイレクト操作時の選択用、フラッシュのポップアップ、ディスプレイとビューファインダーの表示切替となっており、これも分かりやすい
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ユーザーインターフェイスや各種設定値の表示もよく整理されている。電池マークの左上はヒストグラム(このときにはレンズキャップをしているため、完全に黒の側に寄っている)。中央の最下部に見えるのは、電子水準計のインジケータである
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GXRの成功は、今後のカメラユニットのラインアップの整備いかんにかかっているが、リコーにはサードパーティをうまく巻き込みながら、時間をかけても独自のエコシステムを完成させていってほしいと思う。
個人的には、例えば、本体の幅を拡張する形で合体するREAL 3Dのような二眼式の3Dカメラユニットや、スイングレンズ式のパノラマカメラユニットにも期待したいところだが、あえてダストには目をつぶってクラシックレンズが使えるマウントを備えたカメラユニットなども、サードパーティが開発するのであれば許されるのではないかとも感じる。
あるいは、防水ハウジングと一体化したカメラユニットがあれば、そこに本体を合体させてカバーを閉じるだけで、すべての操作をハウジング側から電気的に行えるような水中撮影用のシステムも考えられるだろう。
いずれにしても、予想を超えてモバイル製品としての完成度の高さを感じたGXRだけに、その進化には大いに期待したいところだ。

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