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モバイルデザイン考 第91回
ストーリー性と細かな演出で
命を吹き込まれた小さなドロイド
「Sphero BB-8」

スター・ウォーズの最新作「フォースの覚醒」に登場する新キャラクター「BB-8」。そのオモチャも解禁された。シンプルな動きの中にも感情移入できる要素が詰め込まれた興味深い仕上がりだ。

photo[プロフィール]

大谷和利
テクノロジーライター、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。アスキー新書より「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、エイ出版より「Macintosh名機図鑑」が好評発売中

イラスト
▲「Sphero BB-8」のパッケージ。(クリックで拡大)

●スター・ウォーズの新キャラをリアルで

今年は12月にスター・ウォーズの最新作「フォースの覚醒」が公開予定で、去る9月4日の午前0時1分に、関連商品の販売が解禁となった。

中でもファンの話題は、映画の中に新キャラクターとして登場する球形ドロイドのBB-8であり、以前にこのコラムでも採り上げたロボティックボール、Spheroの開発元が、実物そのものの動きをする製品(税込21,384円)を作り上げた。

スター・ウォーズは独自の世界観を持つストーリーだけに、この、自宅に持ち帰れるBB-8も単なるオモチャではなく、ドロイドがそのまま自宅にやって来て良き相棒になるという設定に基づいて開発されている。それだけに完成度も高く、シンプルな動きの中にも感情移入できる要素が詰め込まれている。

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◀パッケージの箱もしっかり作られており、開封時のワクワク感を盛り上げる。(クリックで拡大) photo ◀Spheroのロゴが印刷された黒い紙の裏面はクイックスタートガイドになっており、タイトルとURL以外はイラストのみでセットアップ手順が説明されている。(クリックで拡大)

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◀ウレタン素材で固定されたBB-8本体と充電ベース。(クリックで拡大) photo ◀BB-8は、完全な球体のボディの上に半球形の頭部を載せた、転がって移動するドロイドである。(クリックで拡大)


BB-8で不思議に感じられるのは、360度どの方向にも転がることのできる球形ボディの上に載った、頭部を支える仕組みである。加減速時にやや前後に揺れるが、基本的には上部の一定のエリアに留まったまま走行したり、顔(?)の向きだけを変えることもできる。

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◀頭部は、走行中もボディの上部に留まり、周囲を見回すかのような動きも見せる。しかし、取り外してみても、物理的な固定機構などは見当たらない。(クリックで拡大)

少し考えれば磁石による吸着であろうことは想像に難くないが、実際には2組の磁石と小さな車輪を使うことで、確実な位置決めとスムーズな動きの両方が実現された。頭部には、特に電気的な機構は組み込まれておらず、完全防水のボディと相まって、水場でも遊べる製品に仕上がっている。

また、慣性利用の走行の仕組みはSpheroに準じており、重量物を下方に集中配置した内部メカがボディの内壁に密着して動くことで、重心を低く保とうとする力が働いて外殻が転がるのである。


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◀実は頭部の底面には、三角形の膨らみの部分に埋め込まれた2つの永久磁石と小さな車輪があり、ボディ内部の別の磁石と引き付け合うことで、固定と動きを両立させている。(クリックで拡大) photo ◀BB-8のメカニズムの元になったロボティックボール、Spheroの教育市場向けモデルで、日本未発売のSphero SPRKの公式分解図を示す。BB-8は、さらに上部に磁石とその支持パーツを持つ。(クリックで拡大)

ボディは完全に密閉されているので、充電はインダクションコイルを用いた非接触式となっており、充電ベースのデザインにもスター・ウォーズ的なモチーフが盛り込まれた。

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◀BB-8を非接触式の充電ベースに載せたところ。(クリックで拡大) photo ◀充電ベースも、Spheroのオリジナルモデルとは異なるスター・ウォーズ的なモチーフのデザインが採用されている。(クリックで拡大)

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◀底面には、4箇所にフックの受けのようなディテールが設けられているが、単なる飾り以上にしっかりした造りなので、将来的に他のスター・ウォーズ関連製品との連携も考慮されているのかもしれない。(クリックで拡大)

専用アプリもよくできており、ラジコン的に操縦するだけでなく、プリセットされた動きや、スター・ウォーズではおなじみのホログラフィックメッセージの擬似的な再現、自律走行によるドロイド感の演出、そしてボイスコマンドに至るまで、スマートデバイス側の機能や性能を巧みに利用して作り込まれている。

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◀専用アプリのオープニング画面では、スター・ウォーズのテーマ曲が流れる。(クリックで拡大)

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◀ドライブモードでは、BB-8を画面上のジョイパッドを利用して自在に走行させることができ、頭部の向きを通常とは逆にした後ずさりのような走りや、一時的な速度のブーストも楽しめる。(クリックで拡大) photo ◀(クリックで拡大)

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◀(クリックで拡大)

ドライブモードでは、BB-8を画面上のジョイパッドを利用して自在に走行させることができ、頭部の向きを通常とは逆にした後ずさりのような走りや、一時的な速度のブーストも楽しめる。

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◀また、プリセットされた動きも用意され、左サイドのアイコンをタップすると、イエス、ノー、ジョイ、8の字走行など、8つの動作を実行させることができる。(クリックで拡大) photo ◀(クリックで拡大)

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◀メッセージモードでは、コントロールに使うスマートデバイスのカメラ機能を用いて実写にCGを合成し、BB-8があたかもホログラムメッセージを再生しているかのようなAR(拡張現実)効果が得られる。メッセージはユーザーによる録画も可能だ。(クリックで拡大) photo ◀(クリックで拡大)

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◀パトロールモードでは、BB-8は内蔵の加速度センサーを利用した衝突検出なども行いながら自律的に走行し、アプリの画面には、それらしいデータや軌跡が視覚的に表現される。(クリックで拡大) photo ◀(クリックで拡大)

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◀設定画面からは、ボイスコマンドによるコントロール機能(現時点では英語のみの対応)をオンにすることもでき、キーフレーズによるアクティベーション後に各種のコマンドを発して、BB-8に反応させることが可能だ。(クリックで拡大) photo ◀(クリックで拡大)

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◀(クリックで拡大)

BB-8は、単純な動きの中でも個性を感じさせるように工夫されており、メカニズムや外観を超えて、ユーザー体験自体が微に入り細に入りデザインされている印象を受ける。その意味でも、最先端のオモチャといってよいだろう。

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◀砂浜に佇むBB-8。(クリックで拡大)



 


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