●ネット上のコンテンツをコレクションするツール
去る4月14日、クラウドベースのビジュアルブックマークツール/サービスであるPinerestの新オフィスお披露目に合わせて、米本社のインターナショナルビジネス部門長のマット・クリスタル氏を迎えてのプレス発表会が開かれ、それに参加する機会を得た。
その席上では、同社の日本カントリーマネージャである定国直樹氏と若手ファッションデザイナーの山縣良和氏とによる対談もあり、デザイナーやクリエイターにとっての電子的なアイデアノートとしての利用法にも触れられていて興味深かったので、今回はいつもと趣向を変えて、発表会の内容を紹介しようと思う。
2010年にサービスを開始したPinterestは、インターネット上のコンテンツをクリップ(Pinterest用語では、これを「ピンする」という)して、ユーザーが任意に設定したテーマ別のボードにコレクションできる、ビジュアルブックマークツールである。
登録は無料、かつ名前とメールアドレスのみ(もしくはFacebookアカウント)で行うことができ、Webブラウザもしくは無償のモバイルアプリから利用することができる。
日本法人も1年前に設立されていたが、このたび、市場調査や機能開発のスペシャリストであるジャンプスタートチームが常駐して日本の文化やユーザー嗜好に合わせた機能開発などを行う体制が整ったことから、改めてプレス発表会が行われた次第だ。
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◀Pinterestの概要について説明するマット・クリスタル氏。(クリックで拡大)
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Pinterestは、全世界で7千万人以上のユーザーを有し、いわゆる大手SNSなどに比べれば規模は小さいものの、単なる情報発信や共有ではなく、夢やプランを叶えるためのツールとしてアクティブに活用するユーザー(「ピナー」と呼ばれる)が多いことに特徴がある。
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◀ピナー(「ピンする人」の意)と呼ばれるPinterestのユーザーは、全世界で7千万人以上おり、8割がモバイルデバイスからのアクセスとなっている。(クリックで拡大)
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◀また、ピンされた情報は500億個以上、それらをまとめるためにピナーがテーマ別に設けたボードも10億個に上る。(クリックで拡大) |
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◀さらに、日本の月間アクティブユーザー数は、この1年で3倍に増加した。(クリックで拡大)
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Pinterestの基本的な仕組みは、ピナーがWebや他のピナーのボードなどから気になるコンテンツを見つけて自分のボードにピン(登録)すると、それがフォロワーとなっている他のピナーのフィードにも現れて連鎖的に情報が共有され、個々のピナーがそれぞれに役立てていくというもの。
ピンする際には、気になったコンテンツを象徴するイメージを1点だけ選んでボードに表示することができ、それが後からレビューする際の視覚的な手がかりとなる。また、既存のWebサイトなどからピンするのではなく、手持ちの写真やイラストなどのイメージデータをアップロードし、コメントをつけてピンに仕立てる方法もある。
そして、この発見→保存→実現というサイクルこそが、アクティブユーザーにPinterestを活用する原動力となっている。
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◀クリスタル氏は、個人によるPinterest利用の例として、自分の子供のためにオモチャやインテリアデコレーションを設えたときのことを採り上げた。(クリックで拡大)
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◀まず、Pinterestのガイド付きサーチ機能を使い、"nursery"(子供部屋)と"decor"(装飾)"のキーワードでピンを検索して、目的に合う情報を発見。(クリックで拡大) |
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◀そこから、参考になりそうな情報を自分のボード(クリスタル氏は、赤ちゃんグッズを意味する"babystuff"と命名)にピンして保存。(クリックで拡大)
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◀そして、それらのアイデアを自分なりに消化したり組み合わせて、実際のインテリアを実現。このように、Pinterestは、何かを現実化するためのツールとして位置づけられている。(クリックで拡大) |
ちなみにPinterestでは、コンテンツのすべてがボード内にコピーされるわけではなく、キービジュアルと概要のみがクリップされるのでデータや処理が軽くて済む。その一方で、ピンをクリック/タップしたときに必ず最初の情報元にまで遡ってコンテンツが表示される点も大きな特徴なっている。
そのため、ピン元の企業サイトなどにとってもトラフィックが奪われず、逆に自社サイトへの訪問が促進されるので、SNSとは異なるマーケティングツールとしても活用されている。
これらのことから、Pinterestのピナーは、SNSのユーザーよりも明確な目的を持って利用している場合が多く、ファッションやデザイン、インテリア、DIY、旅行など、仕事や生活を豊かにするための情報が特に多くピンされているという事実も、それを裏付けている。
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◀日本のカントリーマネージャである定国直樹氏は、既存のビジュアル系SNSが、すでに起こったことを友人と共有するための場であるのに対し、Pinterestは、自らの学びや将来の夢やプランの実現に向けて情報を発見するためのツールであることを強調した。(クリックで拡大)
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◀日本で人気の情報カテゴリーのトップ5の中に「アート&デザイン」も含まれている。(クリックで拡大) |
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◀Pinterestは、発見→保存→実現という利用サイクルに加えて、共有されたピンをクリック/タップしたときに必ず最初の情報元が表示されることも特徴で、この仕組みが自社サイトへの訪問を重視する企業などからも支持されている。(クリックで拡大)
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◀海外でPinterestのビジネスアカウントを利用している企業例としては、ホールフーズマーケット(アメリカで有名な自然派スーパーマーケット)やフォーシーズンズホテルチェーン、バーバリーなどがある。(クリックで拡大) |
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◀また、ピンされるコンテンツの2/3が、企業サイトなどビジネスドメインの情報をピン元としている。(クリックで拡大)
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◀Pinterest Japanの新オフィスの構想も、スタッフがブレーンストーミングのためのボードを共有して、Rustic&Techie、つまり先端的でありながら懐かしさや温かみもあるテイストのコンテンツを発見していくところからスタートさせたという。(クリックで拡大)
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◀また、実際のオフィス内には、このイベントのためにPinterestのボードや、新たなオフィスワークスタイルをイメージした特別なインスタレーションが、若手ファッションデザイナーユニットである東京ニューエイジの手によって設えられていた。。(クリックで拡大)
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発表会の後半では、気鋭のファッションデザイナーである山縣良和氏と定国氏の対談が行われ、自身もクリエーターとして活躍する山縣氏が、デザインワークのサポートツールとしてのPinterestの魅力を、実体験に基づいて語った。
それによれば、特に有効なのは、プロジェクトごとに発生するリサーチのための情報整理と、日本人が不得手とするライブプレゼンテーションでの臨機応変なビジュアルの提示であり、話の流れに応じて必要な情報にアクセスするための入り口としても機能することをデモを交えたトークで説明した。
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◀デザイナーやクリエイターが、プロジェクトに先立ってテーマに沿ったイメージやヒントとなるアイテムを集めて壁面やホワイトボードに貼る感覚でPinterestを利用すれば、アイデアのまとめやグループディスカッションなどへの応用が簡単に行える。(クリックで拡大)
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◀東京ニューエイジのプロデューサーでもあるファッションデザイナーの山縣良和氏は、デザイン修行でイギリスへ留学した際にリサーチすることの重要性を徹底的に叩き込まれたことに触れ、Pinterestの機能がクリエイターのリサーチやプレゼン資料の提示に大いに役立つと語った。
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Pinterestは、他のピナーに公開されるボードの他に、自分だけのネタ帳のように使えるシークレットボードも作れるので、あえて共有したくない情報でもコレクションでき、そこからさらに自分で別の公開用ボードにリピンすることも可能だ。実は筆者も、趣味や書籍のための情報をPinterestのボードにまとめたりしている。
もし、少しでも自分のデザインワークやクリエイションに役立てられそうであれば、いくつかボードを作って使ってみるとよいだろう。
●参考リンク
Pinterest創立者であるエヴァン・シャープ氏のボード
https://www.pinterest.com/sharp/
Pinterest Japanオフィスのボード
https://www.pinterest.com/pinterestjp/pinterest-japan-office/
山縣良和氏のボード
https://www.pinterest.com/yoshikazuy/
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