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コラム

モバイルデザイン考 第87回
IoTデバイスの開発キット
「Kinoma Create」

今回は「モノのインターネット」の開発ソリューションのあり方を示す「Kinoma Create」を紹介する。

photo[プロフィール]

大谷和利
テクノロジーライター、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。アスキー新書より「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、エイ出版より「Macintosh名機図鑑」が好評発売中

イラスト
▲「Kinoma Create」のパッケージ。(クリックで拡大)


●Kinoma Createとは何か

最近、メイカーズとともに個人的な興味の対象となっているものに、IoTがある。"Internet of Things"の略で「モノのインターネット」とも訳されるこの概念は、いわゆる従来型の電子機器に限らず、あらゆるモノがネット接続されて、その状態を離れた場所から確認できたり、コントロールできるようになることを意味している。

ただし、ソフトウェア中心のインターネットと比較して、IoTには越えるべきハードル壁が存在する。それは、必ずハードウェアの開発が絡むということだ。

技術者やデザイナーにソフトウェアとハードウェアの両方の知識があればよいが、なかなかそういうバランスのとれた人材は見つからない。その一方で、ハードウェアに強い人間にソフトウェアの知識を身につけさせるのと、ソフトウェアに強い人間にハードウェアの知識を持ってもらうのでは、どちらが簡単かという問題もある。

そうした状況に1つのソリューションをもたらそうとする製品が、今回取り上げるKinoma Createだ。

Kinoma Createは、いわば、IoTデバイスの開発キットであり、これ自体はハードウェアだが、市販のセンサーやモーターとJavaScript、XML、そして専用の無料開発システムであるKinoma Studioを利用することで、ソフトウェア技術者(あるいは、デザイナー、ホビイストなど)が、簡単にIoTアプリの動作確認や検証を行えるようになっている。

このアイデアのヒントになったのは、数年前から電子工作系のホビイストやメディアアーティストの間で人気を集めている新世代のワンボードマイコン(ArduinoやRaspberry Piなど)である。それらとセンサー類の組み合わせでも似たようなことは可能だが、作品作りではなく、開発環境的に使う場合には、いずれにしてもモニタや標準的な電気的インターフェイスが必要になる。そこで、最初からカラーディスプレイやタッチスクリーン、Wi-Fi/Bluetooth機能を備え、バッテリー駆動可能なモバイルオペレーション対応仕様としたものが、Kinoma Createなのだ。

既存のカテゴリーに当てはまらない製品なので前置きが長くなったが、まず外観の正面は、頭でっかちの液晶テレビのようにみえる。これは、後述するように、緑のカバーの内側がセンサー類の取り付けスペースとなっているためだ。

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◀静電容量方式のタッチスクリーン付きディスプレイ(320×240ピクセル)やスピーカー、マイクを内蔵するが、余計なボタンやスイッチ類は持たないKinoma Createの正面。。(クリックで拡大)

また、背面には、バッテリーや内部スロットにアクセスするためのカバーに加えて、多くの穴が設けられている。それらの穴のうちの2個は筐体組み立て用のネジ穴だが、その他は、ディスプレイを見やすい角度に設定したり、プロトタイプ製品への仮どめを行いやすくするためのディテールである。

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◀背面は、上方中央に、このデバイスの唯一のスイッチである電源ボタン(アプリの実行中断メニューの呼び出しスイッチを兼ねる)があり、左右の辺に沿って穴が並んでいる。(クリックで拡大)
photo ◀白いカバーを外すとリチウムイオン充電池が現れ、基板や拡張スロットにもすぐにアクセスできる。バッテリー駆動時間は、処理内容にもよるが約4時間で、USB給電でも動作する。(クリックで拡大)

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◀ケース付きながら、内部へのアクセスを重視したデザインになっている。(クリックで拡大)

実のところ筆者は、まだ、Kinoma Createを使ってIoTデバイスを試作するところまで来ていない。だが、単体で動かせるサンプルアプリをWi-Fi経由でネットからダウンロードして動かすだけでも、このデバイスの可能性を感じることができる。

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◀起動すると表示される基本メニュー画面。タッチ操作でスクロールや各項目の選択・起動が行える。(クリックで拡大)
photo ◀ピンスロットの設定もグラフィカルに行える。(クリックで拡大)


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◀単体で動かせるデモアプリもいくつか用意され、直接ダウンロードしてインストールできるようになっている。(クリックで拡大)
photo ◀スピログラフのようなパターンを生成できるアプリを動作させたところ。(クリックで拡大)

今後、IoT製品の需要がますます高まり、Kinoma Createのような製品が普及していくと、ハードウェアとソフトウェア、そしてデザインの境界線での仕事が増え、それらを融合した能力を持つ人材の需要も多くなっていくことが予想される。果たして日本の教育機関が、その需要にどこまで対応できるのか、そのビジョンや力量が問われることになりそうだ。

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◀左右の穴は、電源ボタンのすぐ下にはめ込まれた2本の白い棒を外して差し込むことで筐体を傾けて利用したり、別の機器のコントローラー的に利用する際の固定に使うためのものだ。(クリックで拡大)

側面には、microSDカードスロットや、入出力・充電用のUSBポートがあり、さらに、内部からセンサーケーブルを取り出すための開口部(ラバーキャップが付いている箇所)も備わっている。つまり、正面や背面のスロットも含めて非常に拡張性に富み、スタンドアロンでも機能できるポケットワンボードコンピュータだと考えることもできる。

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◀側面には、microSDカードスロットやUSBポート、センサーケーブルの取り出し口がある。(クリックで拡大)
photo ◀正面のこのスペースに、規格化されたセンサー基板を直接装着できる。(クリックで拡大)




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