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コラム

モバイルデザイン考 第86回
正確さと自由さを併せ持つノート
「SketchyNotebook」

台湾のデザイナーが発想した、さまざまなスケッチに利用することを前提に開発されたノートが「SketchyNotebook」だ。

photo[プロフィール]

大谷和利
テクノロジーライター、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。アスキー新書より「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、エイ出版より「Macintosh名機図鑑」が好評発売中

イラスト
▲「SketcyNotebook」の外観。(クリックで拡大)


●ディーター・ラムスのデザイン哲学が記されたノート

昨年、台湾の台北を2度目に訪れた時に、少し文具店巡りをしてみた。元々、書道用の道具などが揃っているところだが、若い人たちの間ではちょっとした文具ブーム的なものもあり、日本の文房具も人気を集めている。

今回採り上げるSketcyNotebookは台湾製ではあるものの、その際に購入したのではなく、クラウドファンディングを通じて入手したものだ。しかし、こういう製品を台湾のデザイナーが発想するのも、そうしたトレンドとは無関係ではないだろう。

SketchyNotebookは、その名の通り、さまざまなスケッチに利用することを強く意識したノート製品だ。手元にあるブラックのフェイクレザーカバー仕上げのものだと、外観が、あまりにもモレスキン的なので、もう少し差別化を図ったほうが良いように思える。しかし、他のカバーのバリエーション(クリームホワイトかブラックスエード)であれば、多少は印象が異なるかもしれない。

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◀外観は、布ゴムのバンドで表紙を留めるところまで含めて、いわゆるモレスキン風である。(クリックで拡大)

表紙をめくると、まず、ディーター・ラムスのデザイン哲学が目に飛び込んでくる。書籍ではなくノートにこうした印刷があるのは珍しいが、この後でその訳が明らかにされていく。

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◀表紙を開くと、"LESS, BUT BETTER"(より少なく、しかし、より良く)というディーター・ラムスのデザイン哲学が書かれている。(クリックで拡大)

中身は、一見、何の変哲もない白紙のページで構成されている。スケッチメインなので、余計な罫線などがないのは分かるが、それでもあえてSketchyNotebook(Sketchyには「不完全な」という意味がある)と名乗る理由はというと…。

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◀ページをめくると、単なる白紙のノートに見える。(クリックで拡大)

実は、専用のテンプレート(両面仕様なので、1枚に2つのデザインが含まれる)を下敷き代わりに挟むことで、さまざまな補助線の役割をさせる仕組みなのである。
価格も、6種(12デザイン)の内から好みのテンプレート1枚付きのベーシックパックが25ドル、全6枚付きのマスターパックが35ドルで設定されている。

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◀この製品のポイントは、目的に応じたテンプレートを下敷きのようにして使うことで、フリーハンドでスケッチなどを行う際に、ほどよい正確さが得られるところにある。(クリックで拡大)

たとえば、ストライプ状のテンプレートを挟めば、平行線が描きやすくなると共に、普通の罫線入りのノートのようにも使え、オプティカルアート的な幾何学パターンは、建築系のパースやインテリアスケッチに向くという具合だ。
また、映像系の絵コンテ用のものや、スマートデバイスの画面レイアウトに使えるテンプレートもある。

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◀単純や縦横の罫線から、建築パース、スマートデバイスのページレイアウト検討用まで、さまざまなテンプレートが揃っている。(クリックで拡大)
photo ◀(クリックで拡大)

テンプレートを透かして使うという目的に合わせて、ノートのページは、資質や厚みが選択されており、さらに、特殊なバインド方法を用いることで、ページを1枚だけ切り離すことも簡単に行えるようになっている。

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◀ノートの紙質や厚みは、テンプレートが適度に透けるようにするという観点から決定されている。(クリックで拡大)

ブルーノ・ムナーリの絵本に「きりのなかのサーカス」という、トレーシングペーパーを巧みに使った作品があるが、SketchyNotebookは、それを彷彿とさせるユニークなノート製品なのだった。


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