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モバイルデザイン考 第85回
名が体を表す自転車ライト
「Double O」



自転車用ライトをよりシンプルで安全、かつセキュアな存在に。ポール・コックセッジが作ったクレバーな製品「Double O」。

photo[プロフィール]

大谷和利
テクノロジーライター、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。アスキー新書より「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、エイ出版より「Macintosh名機図鑑」が好評発売中

イラスト
▲自転車用ライト「Double O」のパッケージ。(クリックで拡大)


●ポール・コックセッジの答え

今や100円ショップでもそれなりに実用的な自転車用ライトを購入できる時代だが、このような市場において、十分な付加価値を持つライティングアクセサリを開発しようとするならば、どのような製品が考えられるだろうか?
あるものは輝度や照度、あるものはバッテリーの持ち、そしてまたあるものは装着のしやすさなどをセールスポイントとするかもしれない。イギリス人デザイナーのポール・コックセッジ率いる、ポール・コックセッジ・スタジオの答えは、よりシンプルで安全、かつセキュアな存在にすることだった。そうして生まれたのが、Double O(ダブルオー。24.99ポンド)というクレバーな製品だ。

アルファベットのOの字型のライトが、フロントとリア用で2個1セットになっていることから名付けられたDouble Oは、前後ユニットで同一のモールドを用いた合理的なデザインになっている。

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◀Double-Oは、フロント用(右)とリア用の2個で1セットとなっている。発光色以外は、まったく同一のユニットだ。(クリックで拡大)
photo ◀背面はラバー系素材でできており、装着時のガイドとなるグルーブと、モード切り替えスイッチを兼ねた電源ボタンが設けられている。(クリックで拡大)

外観と同じく、内部もシンプルかつ美しくまとめられており、3つの発光パターン(点灯、点滅、回転するように見えるフラッシング)を制御するドーナツ型の基板に、バッテリー端子が直付けされている。単四電池3本による連続点灯時間は、最大50時間である。

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◀ねじ込み式の裏蓋を外すと、回路基板が現れる。単四電池を3本装着するためのバッテリー端子が直付けされた合理的な設計だ。
(クリックで拡大)

ライトの固定は、ユニットの側面に面一で装着されているラバーバンドを使って行われる。ラバーバンドを利用した固定法を採用した自転車ライトは他にもいくつか存在するが、非使用時の収納方法まで考え抜かれているという点でDouble Oは一線を画している。

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◀筐体の側面には、固定する際に用いられるラバーバンドが一周するように装着されている。(クリックで拡大)

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◀そのラバーバンドをハンドルやシートポストに回しかけるようにして、Double Oを固定するのである。
(クリックで拡大)
photo ◀(クリックで拡大)

さらに、日本でも知人が自転車ライトを盗まれたことがあるが、欧米ではそのあたりの事情が一層悪い。そこで、Double Oは、とても賢い方法でセキュリティを確保している。磁力で2つのユニットを合体させ、中央の穴を使って自転車と同時にライト本体もロックしてしまうのだ。

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◀発光面が内側になるように2つのユニットを近づけると、磁力によって合体し、このような状態になる。(クリックで拡大)
photo ◀そこで、中央の穴にロックのシャフトなどを通して施錠すれば、駐輪中にライトが盗難に遭うことを防げるというわけだ。(クリックで拡大)

一方で、ライトとしての機能面では、配光特性がやや拡散しており、縦方向のチューブ(ハンドルポストやシートポスト)に装着した場合には、上下方向の光軸調整ができない(しかもチューブは後傾していることが多いため、フロントライトの場合には上向きになる)という弱点がある。

もちろん、このことはデザイナーとしても百も承知でシンプルさを優先したはずで、筆者はその割り切りを支持する。

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◀Double Oの配光特性は、その構造や形状から想像がつくように拡散傾向にある。個人的には、もう少し狭い範囲に集中しているほうが好みだが、その明るさと相まって十分に実用的と言える。(クリックで拡大)
photo ◀(クリックで拡大)

実際のDouble Oは2個合体させてもジャケットのポケットに入る程度の大きさなので、ロックせずに携行してもさほど苦にならないが、駐輪後になるべく身軽に動き回りたいというニーズがあるのも事実であり、これまで誰も着目しなかった切り口でデザインがまとめあげられている点が素晴らしい製品と言えるだろう。



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