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モバイルデザイン考 第82回
高い完成度の中に残る課題
アップル「iPhone 6 Plus」


iPhone 6およびiPhone 6 Plusは、9月19日の発売からわずか3日で1,000万台を超え、新記録を樹立したという。大画面化するiPhoneは世界中のユーザーの支持を得られたようだ。

photo[プロフィール]

大谷和利
テクノロジーライター、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。アスキー新書より「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、エイ出版より「Macintosh名機図鑑」が好評発売中

イラスト
▲アップルの「iPhone 6 Plus」。(クリックで拡大)


●5.5インチの大型画面を持つiPhone 6 Plusを購入

画面の大型化や、筐体が曲がった事例の報告など、何かと話題のiPhone 6/6 Plusだが、筆者は5sを見送っていたこともあり、9月12日の予約開始日にオーダーして、20日過ぎに入手した。

モデルは、過去のiPhoneのフォームファクターとの差が大きい5.5インチ画面を持つ6 Plusをあえて選択し、これまで日常的にiPhoneとiPadの2台持ちだったものを、これ1台で済ませられるかを試している。

結論めいたものを言えば、プレゼンテーションを含めてかなりのタスクをiPhone 6 Plusでカバーできているが、このサイズを持て余すであろうユーザーがいることも想像に難くない。しかし、アップルは、来年前半に発売予定のApple Watchがあるからこそ、安心してiPhoneを大型化できたものと考えられる。

さて、デザイン的に見ると、iPhone 6 Plusは(6も基本的には同じだが)、歴代モデルのDNAを受け継ぎながら、より生産効率を高められるディテールでまとめあげてきたように感じられる。アップルは、iPhone 6シリーズをこれまでで最も数を売る製品として位置付けているため、5/5sで見られたエッジのダイヤモンド加工(スイッチ類には面影が残る)や、背面パネルのマッチング(後述)は省きつつも、質感の高さを維持できるようなデザインを施したとも言える。。

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◀iPhoneのアイデンティティを忠実に継承するiPhone 6 Plusの正面。5sからホームボタンが無地となっているが、円周部分も同色でまとめたスペースグレーのモノリスのようなデザインこそが、デザインチームが目指した原点的なイメージと言えよう。(クリックで拡大)

背面パネルに関して、5/5sでは、中央の金属パネルと上下の(電波を通す)ガラス系素材のパネルが直に接しており、組み立て工程でミクロン単位のマッチングが必要だった(アップルは、これをラインを流れるパネルの形状をリアルタイムに把握し、最も適した組み合わせのパネルを選び出すシステムを構築して実現していた)。

しかし、6/6 Plusでは、樹脂のバンドを間に挟み、(おそらく)組立後に切削仕上げを行うことで、精度感を保ちつつ歩留まりを向上させているようだ。

また、アップルマークは、アップルが電子製品における独占使用権を持つリキッドメタル製ではないかとの推測もあり、だとすれば、iPhoneが同素材の加工技術のテストベンチにもなっている可能性が高い。


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◀背面は、樹脂のバンドによって3分割された意匠を持つ。5/5sも上下にガラス系素材パネルを配した3分割デザインだったが、6/6 Plusでは上下のパネルは樹脂製になっており、生産性を上げるための変更と思われる。
(クリックで拡大)

側面から見ると、実際にも5/5sよりも薄型化しているわけだが、サイズの大型化によって、より薄さが強調されている。もっとも、「大型化したのに薄くなった」というのはアップルが常用しているある種の詭弁で、大型化したからパーツの配置にも余裕が生まれて薄くできたというのが真相だろう。

その意味では、もっと薄くすることも可能だったはずだが、目先の数値ばかりを追わずに、バッテリーの持ちも勘案して、バランスよく決めたものと見受けられる。

ちなみに、筆者はカバーなしでジーンズのバックポケットに入れて持ち運ぶこともあったが、特に乱暴な座り方をするわけでもなく、筐体が曲がるような事態には遭遇していない。

外部の物理スイッチの種類は過去のiPhoneに準じるものの、大型化に伴い電源/スリープスイッチの位置が上面から側面に移された。ところが、ちょうど反対側のほぼ同じ高さのところにボリュームスイッチがあるため、筐体を握ってスリープ操作をすると、一緒にボリュームもいじってしまうことがある。この位置関係は、もう少し考えられていてもよかったかもしれない。


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◀正面向かって右側面にある電源/スリープスイッチ(右)とSIMカードスロット。後者は、装着した状態で切削仕上げすることで、筐体との段差を極限までなくしている。(クリックで拡大)
photo ◀同じく左側面にある、マナーモードスイッチ(左)と2個のボリュームスイッチ。Apple Watchのデジタルクラウンもそうだが、アップルは闇雲に物理的なコントロールスイッチ類を減らしているわけではなく、最終的な使い勝手を考えて残すべきものは残している。(クリックで拡大)

同様に、スクリーンのガラス面の周囲が湾曲して金属ボディと馴染む曲面を描いているのは、握ったときに手に心地よいが、その分、落下時にガラス面が直撃する危険性も増えている。もちろん、それなりの強度は持たせているはずだが、少し疑問の残るディテールではある。

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◀同じ部分の拡大イメージ。背面から回り込む樹脂バンドは、あえて金属とは異なるカラーにしてアクセントをつけ、さらにシルバーモデルとゴールドモデルでは、筐体色に合わせてこの部分の色も変えるという凝ったことをしている。また、ディスプレイをカバーするガラスは縁の部分が曲面処理されてボディに溶け込む設計だが、むき出しのガラス面が最も表面に来ることには、落下時などのことを考えると疑問が残る。(クリックで拡大)
photo ◀やはり同じ部分を異なる角度から見たところ。ボリュームスイッチが配されたスペースは、ちょうど側面の曲率を反転させたような凹面となっている。(クリックで拡大)

 

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◀シンプルな円形の開口部が並ぶ底面。左から、イヤフォンジャック、マイク穴、Lightningコネクタの受け口、スピーカー穴となっている。(クリックで拡大)

そして、スムーズな筐体の中で、1カ所だけ違和感があるのが、カメラのレンズ部分だ。すでにさまざまな意見が飛び交っているが、ジョブズであれば、必ず面一にさせたに違いない。

うがった見方をすれば、アップルが特許を申請しているバヨネット式のコンバージョンレンズの取り付け機構を次期マイナーチェンジモデル(6s/6s Plus)で組み込むための下準備なのかもしれないが、いずれにしても、ここまで完成度が高くなると、次の改良の目玉を何にするかでアップルの悩みも尽きないのではないだろうか。

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◀背面パネルよりも飛び出したレンズ部の造形は、賛否が分かれるところ。実用上は、あまり気にならないとは言え、ジョブズであれば許可しなかったであろうディテールだ。ストロボは、発光時の色の再現性を高めるTrue Tone Flashであり、丸窓の中が2分されてそれぞれ異なる色のLEDが埋め込まれている。(クリックで拡大)

そして、これは画面のインターフェイスに関することだが、大きな画面と片手での操作性を両立するために組み込まれた、表示内容の下方スライド機構も、確かに便利ではあるが、今ひとつエレガントではないように感じる。特に、画面の遷移が階層的な場合に、画面再上部の戻るボタンを数度押す必要があり、タッチのインターバルが短ければ、一度の下方スライド中に処理できるが、うっかりすると全画面表示に戻ってしまう。

このあたりの操作性を、アップルが今後どのように改善していくのか、期待して待ちたいところだ。


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◀大画面化したことで、片手での操作時に指が届かないエリアが生じるため、ホームボタンのダブルタッチによってスクリーンの上半分が指の届く範囲に降りてくる機構が用意されたが、これもややエレガントさに欠ける解決方法だ。(クリックで拡大)

photo ◀画面が下に降りてきたところ。(クリックで拡大)





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