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モバイルデザイン考 第81回
コンパクトデジカメの新機軸
カシオ「エクシリムEX-FR10」

アクションカムとよりセルフィー(自撮り写真)機能を重視した1,400万画素のカメラ。そしてタッチセンサー式の2インチ液晶画面を持つコントローラー部を分離し、ワイヤレスでつないだカシオの新コンセプトデジカメを紹介する。

photo[プロフィール]

大谷和利
テクノロジーライター、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。アスキー新書より「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、エイ出版より「Macintosh名機図鑑」が好評発売中

イラスト
▲3つのカラーバリエーションを持つカシオの「EX-FR10」。(クリックで拡大)


●カメラ部とコントローラー部が分離したデジカメ

ご存知のように、コンパクトデジタルカメラの市場は、スマートフォンに押されて急激に縮小している。多くのカメラメーカーが、レトロなデザインに活路を見出そうとしている中、カシオが8月26日に発表したエクシリムシリーズの最新作であるEX-FR10(9月19日発売予定。オープンプライス)は、久々の意欲作と言える製品だった。

今回は、やや変則的だが、公式のプレスフォトと発表会会場で撮影したディテール写真を組み合わせて、そのデザインのポイントに迫ってみよう。

世界的に見ると、カメラ製品でそこそこ活況を呈しているのは、アクションカムと呼ばれるアウトドアスポーツなどを撮影するための超小型ビデオカメラと、セルフィー(自撮り写真)を楽しむのに適した製品(特にアジア諸国での人気が高い)である。

EX-FR10は、静止画撮影も重視したアクションカム的な機動性と、より自由度の高いセルフィー(カシオの言うところの、「みんな撮り」や「後ろ撮り」を含む)カメラとしての機能性を融合し、ワイヤレス技術によって捻りを加えた製品と捉えることができる。そして、そのためのデザイン上の大きな特徴として、1,400万画素の解像度を持つカメラ部と、タッチセンサー式の2インチ液晶画面を持つコントローラー部を分離したことが挙げられる。

カメラ部のサイズは直径60.9×厚み28.8mmで、重量約63g。同じく、コントローラー部は縦49.7×横84.2×厚み18.9mmで、約80gとなっている。

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◀EX-FR10の最大の特徴は、カメラ部と液晶画面付きのコントローラー部を、ワイヤレス(Bluetooth)接続で分離できることにある。(クリックで拡大)
photo ◀そのため、(最近ではセルフィとも呼ばれる)自分撮りが、簡単に行なえるようになっている。(クリックで拡大)

カメラ部とコントローラー部を合体した際にも、物理的に回路が接続されることはなく、両者は起動されたときから常にBluetoothによる通信でつながっている。これは、それぞれのユニットを防水・防塵仕様にしやすくし、脱着の手間も最小限で済み、さらにリモート撮影時の柔軟性を高めるために必要だったと考えられる(両者の距離は、5mまでがコントローラー部の画像が安定する範囲で、10mまではシャッターを切ることができるとされている)。
また、落下強度2mの耐衝撃性能も備えており、これには社内的にG-SHOCKの開発チームとも情報交換をしながら、実現したものである。

セパレートデザインを採用したことで、カメラ部とコントローラー部それぞれの持ち歩き方の自由度も上がっており、それをサポートするアクセサリも同梱されている。


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◀カメラ部は単体でも撮影が可能であり、標準でネックストラップ(パッケージ同梱)の取り付け金具も装備されている。
(クリックで拡大)
photo ◀コントローラー部にはスリット状のストラップホールがあり、このように付属のカラビナストラップを利用して、腰などから安定してぶら下げることもできる。(クリックで拡大)

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◀三脚穴は設けられていないものの、三脚取り付け用の「三脚ナット」が同梱されている。(クリックで拡大)

また、アクションカムを意識したウェアラブル系の取り付けアクセサリも別売りで用意され、インターバル撮影を併用したライフログ的な用途にも対応できるものに仕上がっている。

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◀別売りのマルチアングルクリップを使うことで、ベルトやストラップのような平たいものを挟んで固定することが可能となる。(クリックで拡大)
photo ◀同じく別売りのマルチアングルベルトセットは、帽子やヘルメット、腕などに装着する際に用いられる。(クリックで拡大)

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◀さらに、トライポッドマウンターはカメラ部やコントローラー部をワンタッチで三脚に固定できる別売りアクセサリだ。(クリックで拡大)


EX-FR10の企画やデザイン開発にあたっては、ソニーのレンズスタイルカメラ(レンズ状の本体をスマートフォンに装着して使うQXシリーズ)の影響も多少はあったものと推測される。このことは、以下のようなカメラスタイルで使う場合を見たときに強く感じられ、スマートフォンの代わりに専用のディスプレイ部を用意した構成になっていると捉えることもできる。

奇しくも、EX-FR10のカメラ部(直径60.9×厚み28.8mm)とQXシリーズの下位機種であるDSC-QX10(縦62.4×横61.8×厚み33.3mm)の外寸はほぼ同じである。

もちろん、EX-FR10では専用の構成としたことで、省電力のBluetooth接続による常時接続が実現できたり、より強固な合体方法や、自分撮りの自由度が生まれたわけであり、独自性は高いと言える。

反面、通信速度の制約から、コントローラー部に表示されるファインダー画像は滑らかではなく、カメラ部も35mm換算で約21mmの広角単焦点で光学ズーム機能は持っていない。それでも用途を考えれば許容範囲内であり、カシオらしい潔い割り切りでもある。

また、電波の妨げとならないように、ボディ素材にはガラス繊維強化ナイロンが用いられ、強度が求められる合体用のプレートはステンレスの金属射出成形によって作られている。

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◀カメラ部をコントローラー部と合体させた状態で、画面とは逆方向に折りたたむと、一般的なカメラスタイルで利用できる。(クリックで拡大)
photo ◀カメラスタイルでの利用時に、それなりの厚みとなってしまうのは、構造上、致し方のない部分と言える。(クリックで拡大)

さまざまなギミックを含みながら、各部の動作は小気味よく、精度感も感じられる。また、素手で操作したときの触感も重視されており、スイッチの形や手触りを変えて誤操作を防ぐ工夫もなされている。

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◀ヒンジ部は適度な堅さで無段階に角度調整ができる。また、コントローラー部の側面にあるリリースボタンを押し込むことで、カメラ部を分離することが可能だ。(クリックで拡大)

photo ◀合体は、コントローラー部背面のスリットに、カメラ部のプレートが差し込まれることによって行なわれる仕組みである。(クリックで拡大)

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◀筐体の表面は滑り止めのパターンで覆われている部分が多く、スイッチ類も触感で違いがわかるようなローレット加工が施されている。ちなみに各スイッチは、右から、電源、静止画シャッター、動画撮影となっている。(クリックで拡大)

photo ◀背面も比較的スッキリとまとめられ、やはり要所に滑り止めのパターンが刻まれている。(クリックで拡大)

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◀ヒンジ部は適度な堅さで無段階に角度調整ができる。また、コントローラー部の側面にあるリリースボタンを押し込むことで、カメラ部を分離することが可能だ。(クリックで拡大)

photo ◀合体は、コントローラー部背面のスリットに、カメラ部のプレートが差し込まれることによって行なわれる仕組みである。(クリックで拡大)

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◀レンズ部の周囲に並ぶスイッチ類は、左から、電源、静止画シャッター、動画撮影、レンズの回転ロックである。(クリックで拡大)


一方で、充電は、レンズ部とコントローラー部で別々に行なうことが必要で、使い勝手をやや損ねている。このように、要改善点はあるものの、新しいコンセプトに基づく初号機としては、完成度も高く、大いに評価できる製品となっている。

ただし、オープンプライスとは言え、市場価格は約5万円と想定されており、価格面ではやや苦戦するかもしれない。この製品のユニークさと特徴がどこまで市場に受け入れられるのか、コンパクトデジタルカメラにとっての1つの試金石となりそうだ。

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◀カメラ部とコントローラー部が無線接続されるということは、両者間での電源供給ができないので、それぞれ独立して充電する必要がある。そのため、個々にマイクロUSBポートを備えている。(クリックで拡大)
photo ◀撮影データは、カメラ部のほうに保存される。マイクロSDカードのスロットも、カメラ部側に用意されている。(クリックで拡大)



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