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モバイルデザイン考 第79回
スマートフォンを簡易スキャナに変える「SnapLite」
名刺やレシート、新聞や雑誌、フリーペーパーなどで見かけたレシピなど、日常のちょっとした情報やアイテムの取り込みに便利なスマートホン対応ドキュメントスキャナ。

photo[プロフィール]

大谷和利(OtaniFaceS)
テクノロジーライター、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。アスキー新書より「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、エイ出版より「Macintosh名機図鑑」が好評発売中

イラスト
▲PFU「SnapLite」(税込み:12,800円)のパッケージ写真(クリックで拡大)

●スマホ時代のドキュメントスキャナ

PFUのScanSnapシリーズと言えば、ドキュメントスキャナのパイオニア的存在であり、単なる読み取り性能だけでなく、ペーパーフィードの確実性などにも一日の長がある。

しかし、価格の点も含めて本格的なドキュメントスキャナは自分には不要と考える層は、それなりに多く存在する。

筆者もScanSnapを愛用しているが、ちょっとした資料的な取り込みや参考程度にメールに添付して送る印刷物のイメージは、iPhoneのカメラで撮って送ることが多い。コンピュータのカジュアルユーザー、あるいは、電子機器はスマートフォンだけといったライトユーザーにとっては、なおさらだろう。

それでも現実には、名刺やレシートなどの記録、あるいは新聞や雑誌、フリーペーパーなどで見かけたレシピなど、スキャンする対象は身の回りにいろいろと存在する。そういう日常のちょっとした情報やアイテムの取り込みに着目して開発された製品が、このSnapLite(税込12,800円)である。

一般のドキュメントスキャナが、使用していないときには単なるブラックボックスと化すのに対し、SnapLiteは、その名の通り、デスクライトとして利用することができるようになっている(Liteは、商標などで使われる場合に多く用いられるLightの綴り方であり、この製品の場合には、簡便性や簡易利用の意味も込められていると思われる)。そして、Bluetooth 4.0で接続されたiPhoneを載せることで、専用アプリと連動して、安定したイメージ取り込みを行うためのスタンドとなる。

つまり、これは、普段は照明器具として使い、必要に応じて文書やイメージの取り込みを行える、スマートフォン時代の新しい道具なのだ。

対応機種は、現状では、処理能力の関係からiOS6以上を搭載したiPhone 5/5s/5cに限定されており、iPod Touchは対象外とされている。将来的にAndroidスマートフォンにも対応予定だが、同様に機種が限定される可能性が高い。

ちなみに、開発にはデザインユニットのTENTがクリエイティブディレクターとして参加しており、製品デザインのみならず、世界観やユーザーインタラクションの構築にも深く関わっている。全体としては、デスクライトとして違和感のないものにまとめつつ、軽快感を重視した新しさも盛り込んでおり、カジュアルユーザーや女性ユーザーにも受け入れやすいフォルムになっていると言えよう。

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◀SnapLiteは、普段はデスクライトとして使われることを想定した製品で、全体形も、そのような形状をしている。(クリックで拡大) photo ◀イメージ取り込みの仕組み上、ライト部分の角度調整はできないものの、その分、フォルムはシンプルにまとめられている。アーム部分が中抜き構造になっている点も、軽快感に貢献する。(クリックで拡大)

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◀安定させるためにベース部分にはそれなりの重量を持たせているが、エッジ部を持ち上げて、その下に本来の基部を一回り小さく設けたことも、正面や側面から見た時の軽やかさにつながっている。基部には、ACアダプタケーブルの端子と、iPhoneなどに電源供給を行えるUSBポートが備わっている。(クリックで拡大)

操作系はタッチセンサー式が採用され、一切の可動部を持たない。したがって、長期に渡る使用でもスイッチ類の接触不良などは発生しないものと思われる。

イメージ取り込みの開始ボタンのアイコンには、製品パッケージにも描かれたリスのマークが使われているが、これは「日常の細々したものをストックする」というコンセプトが、木の実を集めて隠すリスと似ていることから採用されたとのことである。

デスクライトとしても照明色(2種)や明るさ(5段階)を変更できるなど、充実した仕様となっている。また、取り込み範囲を示す枠がレーザー光線によって照射される仕組みが組み込まれている点が斬新だ(微弱なクラス1レーザーなので、万が一、直接光源を覗き込んでも支障はない)。


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◀ベース部分の上面には2つのタッチスイッチがある。奥がライトのオン/オフと照明色の切り替え、手前のリスのマークがイメージ取り込みの開始ボタンになっている。照明の操作は、SnapLiteアプリからも可能だ。(クリックで拡大) photo ◀上部のライトユニットには、色の異なる2種類のLEDと、取り込み範囲を示す枠を投影するレーザー照射装置で構成されている。(クリックで拡大)

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◀LEDのカラーは、白色(色温度:5000K)と黄色(色温度:2700K)で、用途や気分に応じて使い分けが可能。照度はアプリから5段階に変えられる。(クリックで拡大)

iPhoneを載せるトップパネルは、シリコン系素材でできており、さらに斜面の下端を盛り上げて位置決めのストッパー的な役割も持たせている。
SnapScanアプリを起動したiPhoneは、ジャイロセンサーによってこのトップパネルの角度を検出してセットされたことを感知し、自動で取り込みモードに移行するように作られており、このあたりの使い勝手も優れている。


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◀上部のスマートフォンを載せるスペースはシリコーン系素材で、滑りにくく、傷つきにくいように配慮されている。(クリックで拡大) photo ◀Bluetoothの設定をしてScanLiteアプリを起動すると、まず、ペアリングされた本体を探し始める。(クリックで拡大)

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◀本体が見つかると、iPhoneをその上に載せるようにとの指示が表示される。また、通常モードでの取り込みか、2枚分の撮影結果を合体する合成モードかを選ぶことができる。(クリックで拡大) photo ◀0iPhoneを所定の位置に載せると、自動的に取り込みモードとなり、照明色も、それに適したものとなる。(クリックで拡大)

実際のiPhoneの撮影可能範囲(画角)に比べると、4Aサイズを想定したレーザー枠はずいぶん小さく感じられるが、これはスタンドとしての高さや配向特性、そして将来的な対応機種の追加など、さまざまな要因から決定されているものと考えられる。

いずれにしても、取り込み後のイメージで200dpi程度の解像度が確保され、8pt程度の文字まで読めるので、実用上は十分と言える。


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◀取り込み面には、4Aサイズを想定したエリアの四隅に、写真のようなレーザー枠が投影される。(クリックで拡大) photo ◀書籍の表紙を取り込み結果(実際の解像度は200dpi程度)。取り込み直後であれば、SnapLiteアプリ内でトリミング範囲や台形補正のマニュアル調整も行える。(クリックで拡大)

ライトからの距離の差による明度のムラはあるものの、パースが自動で補正され、文字も8pt程度までは判読できるので、資料やブログ掲載用としては十分なクオリティと言える。

ちなみに、SnapLiteアプリの設定でオートフラッシュがオンの場合には自動的に白色光の照明色で取り込みが行われるが、オフにすると、手動で設定してあった照明色でも取り込める。

また、リスマークにタッチしてから撮影が行われるまでのタイムラグも、アプリから0秒、0.5秒、1秒、2秒、3秒の5段階に変更可能である。タイムラグを設けたことにより、正面からリスマークに触れた場合でも、意図しない手の写り込みを防げたり、両手のネイルのデザインなどの取り込みも1人でできる仕組みだ。


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◀アプリの設定メニューでは、トリミングの有無や台形補正のオン/オフ(トリミングがオンの状態では補正もデフォルトでオン)、色味補正のオン/オフなどに加えて、リスマークにタッチしてから撮影が行われるまでのタイムラグをタイマー機能で変更できる。
(クリックで拡大)

合成モードでは、2度に分けて撮影を行うことでA3までの取り込みに対応し、たとえば賞状や子供の図工作品なども取り込むことができる。

このあたりのインタラクションの作り込みや、合成処理中を示すアニメーションなども考え抜かれたものだ。


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◀A3サイズの印刷物も、2度に分けて撮影する合成モードで取り込み可能だ。まず、レーザー枠に合わせて、半分を取り込み、続いて、残りの半分も取り込む。(クリックで拡大) photo ◀(クリックで拡大)

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◀撮影が完了したらiPhoneを持ち上げると、それを感知して合成処理が始まる。合成中は、処理が行われていることを視覚的に表すアニメーションが表示される。(クリックで拡大) photo ◀合成後のイメージ。取り込む印刷物表面の波打ちなどは修正されないが、やはり資料的に使うのであれば問題ないレベルだ。(クリックで拡大)

さらに、複数の取り込み対象を自動で判別して切り分け、個別のイメージとして保存してくれるマルチトリミング機能もあり、最大8枚までの同時取り込みが可能だ。

最小のトリミングサイズは名刺の大きさとなっており、OCR機能はないものの、イメージデータとしてEvernoteなどにアップロードして整理するような使い方が考えられる。


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◀小さなメモや立体物、ポストカード、レシート類は、レーザー枠内に重ならないように置くだけで、一括して取り込むことができ、自動で傾き補正などを行なった上で、個別に保存してくれる。(クリックで拡大)

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◀この場合には、3つの独立したイメージとして保存されたことが、左下のサムネールのバッジを見ると理解できる。(クリックで拡大) photo ◀写真アプリにも3つの独立したイメージとして保存されていることが分かる。サムネールでは正方形にトリミングされているが、実際のデータは、個々に元の被写体の縦横比を保っている。(クリックで拡大)

総じて、まったくの新ジャンルながら、実用的で統一感のある製品に仕上がっており、サードパーティが対応アプリを開発するためのSDKも公開されていることから、その面での今後の展開も楽しみである。


 


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