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コラム

モバイルデザイン考 第109回 (2017年5月25日更新)
特別企画:TinkerCADで3D CAD事始め
第2回 簡単なスマートフォンスタンドを作る(加算式)


”3D CADの超入門記事”の第2回目をお届けする。デザイナー予備軍の方もCADに乗り遅れたプロの方もぜひご一読ください。著者の大谷氏は自身でモデリングして3Dプリンタで造形したミニ四駆で競技に参加している。今回はスマホスタンドの作成で加算式のモデリングを実践する。工程順に一緒に作業すれば最初の一歩が踏み出せる!

photo[プロフィール]

大谷和利
テクノロジーライター、AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。講談社現代ビジネスブックより「成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか 一枚の写真が企業の運命を決める」、三省堂より「ICTことば辞典:250の重要キーワード」(共著)、宣伝会議より「ビジュアルシフト」(監修)が好評発売中

イラスト
▲TinkerCADによるモデリング例。(クリックで拡大)

●スマホのスタンドをモデリング

TinkerCADによる3D CAD入門の2回目となる今回は、簡単なスマートフォンスタンドを作ってみる。基本となる3D図形をリサイズしたり傾けたりして組み合わせていく、足し算的なモデリング手法の基本を、まずは身につけていこう。

ここからは、図版とキャプションを中心に手順を説明していくので、できれば実際にTinkerCADを操作しながら読み進めていただければと思う。

TinkerCADは、https://www.tinkercad.com/へアクセスしてサインアップすれば使えるようになる。個人で利用するには無償のフリーアカウントで十分である。

なお、筆者の環境では、Mac OSからTinkerCADにSafariを使ってアクセスするとインターフェイスが英語で、それに慣れていたので気づかなかったものの、後からGoogle Chromeを使うと日本語になることが分かった。今回の図版はSafariで作成したが、次回以降はChromeを利用する予定だ


●まずTinkerCADに登録する

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▲TinkerCADのサービスに登録してサインインすると自分の作品一覧ページ(当然ながら、最初は作品がない状態)が表示される。新規の作品制作を始めるには、"Create new design"(日本語では「新規デザインを作成」)のボタンをクリックする。(クリックで拡大)



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▲すると、何もない状態のワークプレーン(日本語では「作業平面」)が表示される。画面内の各要素については、作業を進める中で、必要に応じて説明していくが、基本的には、スクリーンの右端のパレットに利用可能な3Dシェイプ類、左端にビュー(視点、視野)の操作にかかわるコントロール類、上部のツールバーにオブジェクトの操作関連項目が並んでいる。赤丸で囲った作品名のところはシステムが適当に生成した名前を設定してくるので、クリックして分かりやすい名称に変更しておこう(ここでは、PDwebModelingに変更済み)。(クリックで拡大)



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▲ちなみに、1つの作品制作中(あるいは完了後)に別の作品を新規制作したいときには、作品一覧ページに戻らなくても、作品名の左隣のアイコンをクリックすると作品リストが表示され、そこから直接"New Design"(日本語では「新規デザイン」)をクリックしたり、データを開くことができる。また、編集結果はクラウド上に自動保存されるので、その点は気にしなくてよい。(クリックで拡大






●モデリングの作業手順:スタンドの底面を作成


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▲TinkerCADにおける造形作業は、右端の3Dシェイプの中から使いたい形をワークプレーン上にドラッグ&ドロップするところから始まる。ここでは、まず立方体を大まかに中央付近に配置しよう。これを、スタンドのベースとなるように変形していく。(クリックで拡大)



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▲左端に縦に並ぶ5つのアイコンは上から、ホームビューへのリセット、選択されたシェイプへのビューのフォーカス、表示の拡大、同じく縮小、透視投影法(デフォルト)と等角投影法の切り替えの機能を持つ。ここでは、赤丸を付けた2番目のアイコンをクリックして、先ほど置いた立方体にフォーカスしたビューにする。そして、矢印で示した点をクリックし、キーボードのタブキーを押すと2辺の寸法がミリメートル単位で表示される。(クリックで拡大)



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▲そのまま手前の辺の寸法を20ミリから50ミリに変更し、リターンキーを押すと、立方体が直方体へと変形する。(クリックで拡大)





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▲次に、直方体の上面の中央の点をクリックしてタブキーを押すと、同じように高さ方向の寸法を変えられるようになる。(クリックで拡大)



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▲今度は、20ミリを2ミリに変更してリターンキーを押す。すると厚さ2ミリの長方形状の板ができあがる。これがスタンドの底面となる。(クリックで拡大)



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▲続けて、ベースの手前側(作業画面では右の辺)に滑り止めの突起を作ってみよう。そのためにはシェイプの中から三角柱をドラッグし、長方形の板の右端に少しオーバーラップさせて配置する。(クリックで拡大)




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▲再び赤丸で示したアイコンをクリックして、三角柱にフォーカスしたビューにする。(クリックで拡大)



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▲先ほどの長方形と同じ手順で、三角柱の幅を3ミリ、高さを5ミリに変更してみよう。(クリックで拡大)



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▲さらに、スマートフォンを後ろから支える部分を作っていくが、これも立方体の変形と傾きの調整で対処できる。シェイプ一覧からもう1つ立方体を図の位置までドラッグしよう。(クリックで拡大)





●モデリングの作業手順:背の支柱部分を作成

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▲支柱となる部分は、幅2ミリ、高さ50ミリに設定する。後ほど、この支柱の角度を変更するが、今はまだそのままでよい。(クリックで拡大)



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▲支柱の上には、デザイン上のアクセントとなる円柱を配してみようと思う。そのためには、TinkerCADの大きな特徴の1つとなっているワークプレーンの変更を行う。そのためには、シェイプ一覧の上にあるWorkplane(作業平面)のアイコンを支柱の上面までドラッグして離す。ワークプレーンは、すでに配置されたシェイプのあらゆる面に設定することができ、アイコンからドラッグし直すことで何度でも再設定が可能だ。(クリックで拡大)



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▲デフォルトのワークプレーンが水色のグリッドであるのに対し、後からユーザーが設定するワークプレーンはオレンジ色のグリッドで表示される。この角度からは、ワークプレーンの高さの違いが分かりにくいので、視点を変えてみよう。(クリックで拡大)




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▲フォーカスされているシェイプを中心とする視点の移動は、左端のキューブを操作して行う。キューブのそれぞれの面や角をクリックすることで、視点もその位置に移動できるほか、キューブの面を直接ドラッグして方向を変えることもできる。ここではキューブを少し上方に回転させてワークプレーンの位置を分かりやすくしてみた。(クリックで拡大)



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▲再び視点を作業しやすい位置に戻して、チェイプの中から新たなワークプレーン上に円筒形をドラッグする。(クリックで拡大)



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▲そして、その円筒を90度手前に回転させるのだが、これは、選択されたシェイプの周囲3箇所に現れる矢印付きの円弧のようなアイコンをドラッグして行う。(クリックで拡大)





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▲このとき、角度目盛りの半径よりも中心に近い位置でポインタを動かすと回転角が22.5度(360度の16分の1)ごとに規制され、それよりも遠い位置で動かすと1度ごとの回転となる。また、矢印付き円弧のアイコンをクリックしてタブキーを押すことで、寸法のときと同様に角度を直接数値で指定することも可能だ。90度回転させたら次のサイズ調整に移ろう。(クリックで拡大)



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▲立方体を変形させたときと同じように、円筒の直径を7ミリにする。具体的な作業としては、幅と高さをそれぞれ7ミリにすればよい。(クリックで拡大)



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▲サイズ調整した円筒をドラッグして、支柱の上の面に重なる位置まで移動する。マウスによる直接ドラッグのほか、キーボードのカーソルキーでも移動できるが、視点によってはシェイプの前後左右とカーソルキーの方向が一致しないこともある。思った方向に動かないときには、別のカーソルキーを試してみよう。(クリックで拡大)





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▲左端のアイコンとキューブを操作して、選択したシェイプにフォーカスし、視点をフロントに合わせてみると、微妙にずれていることがわかる。これは、右下のSnap Grid(日本語では「グリッドにスナップ」)の設定によってシェイプ移動時の距離の単位が規制されるためだ。そこで、1mmという表示をクリックしてポップアップメニューを出し、0.5mmを選択しよう。(クリックで拡大)



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▲これで再度位置合わせを行えば、支柱の上面の中心と円柱の縦の中心を一致させることができる。しかし、まだ円柱の弧の両端が支柱上面から浮いた状態にあるので、この部分を下方向にずらして埋め込む必要がある。(クリックで拡大)



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▲そこで、円筒を下方に移動できるように、ワークプレーンを縦方向に設定しよう。これは、Workplaneのアイコンを円筒の断面部分にドラッグすれば行える。(クリックで拡大)





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▲新たなワークプレーンは、このようになる。(クリックで拡大)



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▲この状態で円筒を移動し、図のように一部が支柱の上面に食い込んだ状態にする。(クリックで拡大)



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▲ここで、ワークプレーンをデフォルト状態に戻しておこう。方法は、Workplaneのアイコンをシェイプのない適当なところにドラッグするだけでOKだ。(クリックで拡大)





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▲次に、支柱と円筒を合体する。まず、2個のシェイプを選択するが、これは、どちらか1つをマウスクリックで選択してから、他方をシフトキーを置きながらクリックしてもよいし、両方のシェイプにかかるようにポインタをドラッグして一度に選択することもできる。現在選択されているシェイプの数は、赤丸部分の表示でわかるので、参考にしよう。(クリックで拡大)



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▲その状態で、赤丸で示したGroupアイコンをクリックすると、2個のシェイプが合体し、1つのシェイプとして扱えるようになる。(クリックで拡大)



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▲さらに、合体したシェイプに角度をつけていく。先に円筒の向きを90度変えたときと同じように、赤丸で示す矢印付きの円弧のアイコンをドラッグする。(クリックで拡大)





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▲ここでは30度傾けたところで固定することにした(1度ごとの調整なので、角度のメモリよりも外側でポインタを動かすか、数値指定で行うことが必要だ)。(クリックで拡大)



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▲キューブを操作して真横から見てみると、支柱が回転したことでベース部分とズレが生じ、下端が宙に浮いていることが分かる。これを修正するには、まず支柱のシェイプをキーボードコマンドでカットし、直後にペーストすればよい。実はスクリーン上方のツールバーの左端にコピー操作のためのアイコンはあるのだが、カット操作のアイコンは用意されていない。しかし、OS準拠のキーボードコマンドを利用するとカットも可能なのである。(クリックで拡大)



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▲ペースト後、支柱のシェイプがワークプレーン上に接するようになるので、位置を調整して図のようにベースの端にくるようにしておく。(クリックで拡大)





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▲そして、支柱、ベース、滑り止めの3つのシェイプを選択して合体させると、このようなスタンドが完成する。(クリックで拡大)



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▲キューブを操作して、やや斜め上から見ると、このような形になっている。造形としてはこれで完成だが、さらに3Dプリントに適した状態にしておこう。というのは、一般に3Dプリンタの出力時間は、底面や断面の面積よりも高さの影響を受けやすい。つまり、高さが低いほど出力時間が短くて済むのである。また、このスタンドの場合には大丈夫だが、斜めに45度未満の角度で張り出した部分があると、その下に支えとなるもの(=サポート)が必要となり、その分、出力時間がのびて、出力後にサポート部分を除去する作業も発生する。(クリックで拡大)



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▲そこで、シェイプ全体を横倒しにすることで、高さを抑え、主要な面がワークプレーンに対して垂直になるようにすれば、短時間に安定した出力結果を得ることができる。そのために、また矢印付きの円弧のアイコンをドラッグして、90度横に倒しておく。(クリックで拡大)





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▲すると、また全体がワークプレーンから浮いてしまうが、シェイプをカット&ペーストすれば接地した状態にすることができる。(クリックで拡大)



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▲これが最終的な出力用の造形物である。もちろん、最初から横倒しの状態を想定して造形していくことも可能だが、モデリング作業自体は、利用時の形態に近い状態で行うほうがイメージしやすいため、ここでは最後に横に倒す流れにした。(クリックで拡大)



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▲スクリーン右上のExport(日本語では「エクスポート」)をクリックすると、このようにファイル形式を選択して保存するダイアログが表示されるので、"The Selected Shape"(選択したシェイプ)を選び、".STL"(3Dプリント用データの標準的な形式)をクリックして保存しよう。今回は最終的なシェイプが1つしかないため、Everything in design(デザイン内のすべて)を選択しても結果は同じだが、1画面で複数のシェイプを作っている場合になどには使い分けが必要だ。(クリックで拡大)






●3Dプリンタで出力して完成


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▲こうして保存されたSTLファイルを使って3Dプリントした結果がこちら。(クリックで拡大)



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▲斜め後ろから見ると、円筒部分がうまくスマートフォンの背面を支えていることが分かる。(クリックで拡大)









図版が多いので複雑に感じるかもしれないが、慣れるとこの程度のものならば数分で造形できる。次回は、ソリッドなシェイプから別のシェイプを引き算して造形する手法を解説する予定なので、お楽しみに。



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