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コラム

モバイルデザイン考 第105回
ベルリンで出会った
古代エジプトの温故知新


今回は、ベルリンの博物館を訪れたときに見た、古代エジプトの展示物が興味深かったので、それを紹介しよう。

photo[プロフィール]

大谷和利
テクノロジーライター、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。アスキー新書より「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、エイ出版より「Macintosh名機図鑑」が好評発売中

イラスト
▲ベルリンの街角。(クリックで拡大)

●古代エジプトから変わらぬ造形

総点数約150万点とも言われるベルリンの博物館島の美術品コレクションの中には、古代エジプト時代の遺物も数多く含まれている。元々は、旧東ドイツのエジプト博物館に収蔵されていたものだが、紆余曲折を経て、今は大半が新博物館と呼ばれる施設内にある。

少し前に、このベルリンの博物館を訪れたときに見た、古代エジプトの展示物が興味深かったので、今回はそれを紹介しようと思う。それらは、まさに温故知新を地でいくアイテムばかりで、デザインの進化とは何なのかを改めて考えさせるものだった。

たとえば、木製の折りたたみスツールは、そのニーズや発想が2~3千年も前から存在していたことに驚かされるが、機能に根ざした構造やデザインは、今もほぼ変わっていない。

同様に、背もたれ付きの椅子も、このまま廃品置場などに放置されていたとしても、誰も古代エジプトのものとは思わないだろう。それほどその形は根源的であり、木の組み方もよく考えられている。

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◀紀元前11~16世紀ごろの折りたたみスツール。座面が失われているが、何か布か革のようなものが張られていたのかもしれない。系の経営者である。(クリックで拡大)

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◀折りたたみスツールと同年代に作られた背もたれ付きの椅子。座面に麻ひものようなものが張られているが、この部分のみ新しかったので、展示用のものと思われる。(クリックで拡大) photo ◀(クリックで拡大)

植物の繊維を編んで作られたと思われる大人用のサンダルについても、横方向のストラップで足の甲を押さえ、親指と人差し指(足なのでおかしな表現だが)で鼻緒を挟む構造は今に通じるものだ。確かに先端部の反り返りは大仰だが、装飾目的以外にも、サンダルでありがちなつまづきを防ぐ実用的な意味合いもあったように感じられる。

さらに、サンダル置き、あるいは椅子に腰掛けた際の足置きとして使われたと思しきフットレストは、デザイン的にはプリミティブだが、文化的な生活を思わせるものといえる。

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◀先端部が上に反り返ったサンダルは、紀元前9~16世紀ごろのもの。それが置かれた台は展示用のスタンドではなく、やはり当時に作られたフットレストである。(クリックで拡大)

革素材のようにも見える子供用のサンダルは、より現在のものに近いフォルムを持ち、グラフィカルなデザインが施されていたようだ。これの新品を受け取った子供(女児か?)は、さぞ喜んだのではないだろうか。

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◀紀元前4~16世紀ごろの作られた子供用のサンダル。当時はもっと鮮やかな色合いだったと考えられるが、大人用のものよりもカラフルで可愛らしいデザインなのも現代に通じるところだ。(クリックで拡大)

さらに、宝飾品に至っては、朽ち果てにくいこともあって、もはや現行品と区別がつかず、人々が身に付けたいと思う装飾品のイメージが、数千年に渡ってほとんど変化していないことがよくわかる。

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◀現代のアクセサリショップで売られていても、まったく違和感のない宝飾品の数々。ゴールドのブレスレットの留め具の部分が蛇の頭のデザインになっているなど、細部にいたるまで高度な技術を使って工夫されている。(クリックで拡大) photo ◀(クリックで拡大)


最後に、これは古代エジプトではなく青銅器時代のヨーロッパの出土品だが、王妃ネフェルティティの胸像(ほとんどの展示物が撮影可の中で、撮影禁止となっている)と並んで新博物館の至宝となっているベルリン・ゴールド・ハットにも触れておこう。

これは、世界に4つ現存するゴールド・ハットのうちの1つで、490グラムの合金を平均0.6mmの薄さに叩き延ばして造形され、さらに21もの帯状のゾーンに月の満ち欠けを示すレリーフが精密に形作られている。

高い地位にある聖職者か呪術師のような人物が特別な祈祷の際などに身につけたのではと考えられているが、詳しい用途は不明で、しかも、発掘場所や経緯も謎に包まれた代物だ。

インターネットを通じてさまざまなことが瞬時に分かるようなった今だからこそ、筆者はこうしたミステリアスなデザインに強く惹かれる今日この頃だ。


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◀新博物館の至宝の1つである、ベルリン・ゴールド・ハットは、青銅器時代のヨーロッパの出土品。約紀元前9~11世紀ごろに作られ、高さが745mmもある。金を含む合金を叩き延ばしてワンピースで成型されており、周囲の文様は57ヶ月間の太陰太陽暦を示すものといわれる。(クリックで拡大)




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