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モバイルデザイン考 第103回
超リアルな架空デバイス
「フォースバンド」と「バトルウォーンBB-8


「フォースバンド」は、スフィロ社が、同社製のBluetooth LE/Smart対応のロボットをジェスチャーコントロールするためのウェアラブルデバイスだ。

photo[プロフィール]

大谷和利
テクノロジーライター、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。アスキー新書より「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、エイ出版より「Macintosh名機図鑑」が好評発売中

イラスト
▲フォースバンドとバトルウォーンBB-8。(クリックで拡大)

●BB-8を念力のようにコントロール

ウェアラブルデバイスは、主に健康管理やフィットネスの分野向けでの開発・販売が進んでいるが、ジェスチャーに合わせてさまざまな音が出る製品やGPS連動ゲーム用のアクセサリなど、トイ&ゲームメーカーも注目しているジャンルだ。「フォースバンド」は、2015年秋に映画「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」に登場する新ドロイドのBB-8を忠実に再現した「BB-8 by スフィロ」(本コラムで紹介済み)を発売して話題を呼んだ米スフィロ社が、同社製のBluetooth LE/Smart対応のロボットをジェスチャーコントロールできるウェアラブルデバイスとして開発された。

フォース・プッシュ(手で押すような前進のジェスチャー)や、フォース・プル(手のひらを上にして手招きするような呼び寄せのジェスチャー)によってBB-8や対応ロボットを操るさまは、まさに念力でモノを動かしている感覚だ。

それ以外にも、ジェスチャーに合わせてライトセーバーなどの効果音を再生したり、ホロクロンと呼ばれるジェダイの記憶媒体を集めて、そのコンテンツ(キャラクター、武器、宇宙船など)をコレクションできる、あるいはIFTTTとの連携で他のIoTデバイスを制御するなどさまざまな機能を持ち、今後のファームウェアやアプリのアップデートによって、さらに充実していく予定である。

フォースバンドは単体(税別9,800円)でも購入できるが、戦闘後のBB-8の姿をイメージしたバトルウォーンモデルと組み合わせたスペシャルエディションセット(同24,800円)も用意されている。

筆者の知人の中にも、当初販売された新品状態のBB-8 by スフィロはクリーン過ぎると感じ、映画に登場する埃や油にまみれた筐体のものが欲しいと話す人がいるが、ファンやマニアの心理がよく表れている。プラモデルのジオラマなども、そういった環境や天候による経年変化を感じさせるウェザリングが施されるが、それはリアルさを追求する上で欠かせない処理だからだ。

しかし、そうした製品が他のトイ製品でも出てこなかったのは、一点ものや少量生産ならばともかく、量産品にそのような処理を施すことが難しかったためである。

フォースバンドやバトルウォーンBB-8の場合も実現する上でかなりの苦労があったことは、スフィロ社創業者の1人で現CTOのイアン・バースティン氏から直接伺っているが、単純な塗装ではなく特殊な印刷技術によって絶妙なやれ具合が再現されている。

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◀ウェザリング的な印刷処理があらかじめ施されたフォースバンドは、スター・ウォーズの登場人物が何年も愛用してきたかのような雰囲気を醸し出す。(クリックで拡大)

実際の映画の中のフォースは超能力的なものである、ジェダイは素質と修行を通して身につけていく。したがって、フォースバンドなるものは登場せず、この製品自体はディズニーの許可を得た上での独自開発品だ。デザインもスフィロ社のインハウスで行われたというが、そのままスター・ウォーズに出てきても不思議ではないほど、その世界観に即したデザインになっている。


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◀(あくまでも外装デザインによる視覚的なイメージだが)何らかのコアユニットが、独立したカバーで保護されているかのような構造は、実際よりも厚みを薄く見せる効果がある。(クリックで拡大) photo ◀角が削り取られて内部の金属が覗いているように見える印刷表現も非常にリアルであり、量産品でここまで使い込まれた感じを重視した製品の例は、これまでなかったと記憶する。(クリックで拡大)


昨今ではさまざまなデバイスがUSB経由の充電機構を持つが、フォースバンドも例外ではない。側面にゴム製のカバーで覆われたマイクロUSB端子があり、そこにケーブルを接続するが、USB充電用のアダプタは付属しない。すでにユーザーの手もとに別の製品の付属品があるはずと想定し、あえてアダプタを付けないことで価格を抑えているわけだが、賢明な判断といえるだろう。

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◀右側面のゴムカバーを開くとマイクロUSB端子が現れ、市販のUSB充電器やコンピュータとケーブルで接続することで充電される。(クリックで拡大)

先に、iPhone 7の背面に「総務省指定」の文字が刻印されていることがデザイン的にどうなのかと話題となったが、フォースバンドでは装着時に見えない位置に認可関係のマークを入れることで、スター・ウォーズの世界観を阻害しないように配慮し、すべてモールドとして処理することで印刷する手間とコストを省いている。

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◀普段、目に触れない背面はプラスティック然としているが、ネジや各種認可マークをこちらに集中させることで、製品の世界観を崩さないようにしている。(クリックで拡大)

ちなみに装着の要となるバンド部分にも工夫があり、マジックテープを使った長さの調節機構でフィット感(加速度センサーの安定した動作のために重要)を、そして磁石を併用したバックルによって着脱の容易さが実現された。

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◀ベルトは、長さ調節をマジックテープ、固定を磁石吸着式のバックルで行うようになっており、フィット感と着脱の容易性を両立している。(クリックで拡大)

ほぼすべての処理を加速度センサーベースのジェスチャーで行うため、フォースバンドには物理的なボタン類は、電源のオン/オフとモード選択を兼ねたものが1つのみ装備されている。このあたりの割り切りは明快であり、ボタンの周囲をステータスランプとすることでリアクター的なものを想起させる巧い演出といえよう。

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◀本体上にディスプレイを持たないため、機能やモード選択は、専用アプリまたは物理的なボタンを使って行われ、ボタン周囲がステータスランプとして機能する。(クリックで拡大)

スペシャルエディションセットに付属するバトルウォーンBB-8も、充電スタンドともども、フォースバンドと同様の凝った表面印刷がなされ、雰囲気を盛り上げると同時に、屋外で遊んで傷ついても気にならない副次的な効果があると感じた。

アパレル業界ではダメージ加工されたジーンズなどが定番商品化しているが、マニアックなトイの世界でもこのように凝ったデザイン処理が人気を集めていく可能性は大いにあるだろう。

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◀BB-8のバトルウォーンモデルは、機構や機能はノーマルバージョンに等しいが、新たにフォースバンドとマッチするウェザリング(想定上は、戦闘によるダメージ)が印刷加工で再現されている。(クリックで拡大) photo ◀充電スタンドも同様のバトルウォーン仕様となっているが、ここまで来ると、スター・ウォーズのロゴ自体までもウェザリング仕様にしたくなる。(クリックで拡大)

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◀球体のBB-8の本体では、フォースバンドのように目に触れない背面や底面の概念がないため、認可マークなどが全体イメージに溶け込むようにデザインされている。(クリックで拡大)

 


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