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コラム

欧州、デザイン散歩:第7

February, 2020:ドイツの「ニュルンベルグ国際玩具見本市」から
喜夛倫子

オランダ在住のプロダクトデザイナー、喜夛倫子さんの欧州レポートをお届けします。
毎月ヨーロッパの街角を巡る、喜夛さんのデザイン散歩をお楽しみに。

イラスト
[プロフィール]
喜夛倫子(Kita Tomoko):プロダクトデザイナー。オランダ・アムステルダムを拠点に活動。イギリスのキングストン大学プロダクト&家具デザイン学科卒業。Michael Young Studio、Kohler社のロンドンデザインスタジオでインターンを経験。日本のデザイン事務所で5年間、国内外の地場産業のプロジェクトなどに携わる。ロイヤルカレッジオブアートを中途退学し、2016年にT Magpie Design Management /Tomoko Kita Studioを設立。ヨーロッパを中心に美術館、教育機関、展示会でワークショップを行っている。2003年よりヨーロッパの展示会で作品を発表。Shogitoはイタリアで永久所蔵品されている。素材への興味から、応用化学の学位を持つ。



日本でも「ニュルンベルグ国際玩具見本市」として知られるドイツの「Spielwarenmesse」が1月末から2月2日まで開催されました。他のブースと趣が異なり、デザイナーが主導していたドイツとリトアニアのおもちゃ会社を、今年のトレンドとともにご紹介したいと思います。

●おもちゃの2020年のトレンド(抜粋意訳)

箱Spielwarenmesseは、特定業種かつ登録済ビジターのみが入場できるおもちゃのビジネストレードショーとして知られ、そのトレンドコミッティーが「今年のトレンド」を発表しています。今年のトレンド3種は以下の通りです。

1. Toys for future
生分解性の素材を利用した玩具や、家庭ゴミのペットボトルの蓋などを使って造形する玩具や、幼児用玩具のモチーフがゴミ回収車であったりと、未来の地球環境を考えた玩具や知育玩具。

2. Digital goes physical
画面の向こうで遊ぶゲームの世界であるデジタルゲームのストーリーやキャラクターを用いたフィジカルな玩具。ビデオゲームやアプリなど2Dから3Dに飛びたした玩具。

3. Be You!
人の多様性に注目した玩具。年齢、宗教、思想や人種などに対して偏見を持つ前の子供たちが、それぞれの特徴を各々が持つ様々なバックグラウンドに惑わされず、フラットに楽しく遊べるよう、よりシンプルに遊びやすいようにデザインされた玩具。

今年のニュルンブルグのトイショーの出展者の中で、自社のブランドコンセプトのもとにデザインした玩具を一貫して提案し続けている2社をご紹介したいと思います。

●大人がワクワクする玩具/Constantin Geduld Spiels

商談が繰り広げられる会場の一角に、ビジネスマンたちが駄菓子屋に群がる子供のようにワクワクした目をして群がるブースがありました(写真1)。
その手元を覗くと丁寧につくられた美しい木製玩具たち。ドイツ南西部に拠点を置く、Constantin Jean-Claude氏とJules氏親子がデザインする玩具会社「Constantin Geduld Spiele」は、あえてwebsiteも持たず店舗も構えない、ビジネス展示会でのみ、お目見えするという珍しい会社です(写真2)。

毎年このスタンドを目当てにくるという常連や、秘書と通訳を引き連れたご年配の紳士、フラリと惹き寄せられた人々でブースは賑わい、ビジネス展示会にも関わらず、アブストラクトなデザインの玩具で銘々に夢中で遊んでいました。

今期の新作は、カラフルなメタルピースを用いたシリーズ。選ぶ色によって何通りものパズルで遊べるように計算して設計されており、美しいデザインは謎解きのワクワクを駆り立てます。パズルを解くためには、頭を柔らかくし、クリエイティブな発想力が必要です。

なかなか解けないので、ヒントを教えてくださいとConstantin氏にお願いしたところ、「ダメです。私たちはパズルを売っていているのであって、解き方を売っているのではないんです。自分で解いてくださいね」と言われました(写真3)。

名刺交換の際、好きな色を聞かれ答えると、笑って指を差された先には、名刺がたくさんスタンプされた大きな色紙が貼られていました。「好きな形や大きさにちぎってください。それが私の名刺です」とのことでした(写真4)。大人にもワクワクをくれる玩具会社です。

●五感を育む玩具/edu2

科学系玩具、歯磨きやお箸つかいなどの生活習慣を学ぶ玩具、LEGOや積み木のような造形する玩具など、学ぶ目的が分かりやすい、逆に言えばすでにどうやって遊ぶが決まっている玩具が多くみられる中で、edu2は子供自身の”五感”に焦点を置き、子供たちの創造性を呼び覚ます玩具をデザインしています。

室内で砂や水を用いた玩具や、手の感触で箱の中に何があるかを当てるクラシックな玩具など(写真5、6)、どう遊ぶか自由度の高い玩具や、五感を使う玩具の提案に挑戦しています。また教育の観点からだけでなく、デザイン性についても力を入れており、2017年にはMONAI light tableが、A’Design Award の金賞とIDAの銀賞を受賞しています。また、一部のライトテーブルを除き、製品はすべてリトアニア産とのことで、日本の1/6ほどの大きさのリトアニアの地場産業を活用していることもこの会社の特徴の1つです。

ご紹介した2つの玩具会社は、トレンドを沿った需要に供給する製品ではなく、独自のコンセプトに沿った提案型の玩具であるという共通点があります。どちらも自国で生産をしており、極少人数の会社であることから、デザイナーの思いがそのまま強いコンセプトとして明確に伝わりやすく、ニッチなニーズに共鳴しやすいのかもしれません。またブースにいたデザイナー達自身が、その玩具を楽しんでいる姿が非常に印象的でした。

他の玩具の写真は、こちらのリンクよりご覧いただけます。
https://www.tomokokita.com/column-images



 


▲写真1:Constantin Geduld Spieleの展示ブース。(クリックで拡大)


▲写真2:デザイナーのConstantin Jean-Claude氏とJules氏。(クリックで拡大)


▲写真3:Constantin Geduld Spieleの玩具。(クリックで拡大)


▲写真4:Constantin氏の千切る名刺ボード。(クリックで拡大)




▲写真5:edu2社の玩具。(クリックで拡大)


▲写真6:同じくedu2社の玩具。(クリックで拡大)




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