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コラム

欧州、デザイン散歩:第5

November, 2019:非言語コミュニケーションツール「Shogito」
喜夛倫子

オランダ在住のプロダクトデザイナー、喜夛倫子さんの欧州レポートをお届けします。
毎月ヨーロッパの街角を巡る、喜夛さんのデザイン散歩をお楽しみに。

イラスト
[プロフィール]
喜夛倫子(Kita Tomoko):プロダクトデザイナー。オランダ・アムステルダムを拠点に活動。イギリスのキングストン大学プロダクト&家具デザイン学科卒業。Michael Young Studio、Kohler社のロンドンデザインスタジオでインターンを経験。日本のデザイン事務所で5年間、国内外の地場産業のプロジェクトなどに携わる。ロイヤルカレッジオブアートを中途退学し、2016年にT Magpie Design Management /Tomoko Kita Studioを設立。ヨーロッパを中心に美術館、教育機関、展示会でワークショップを行っている。2003年よりヨーロッパの展示会で作品を発表。Shogitoはイタリアで永久所蔵品されている。素材への興味から、応用化学の学位を持つ。



●世界中の人を知るゲーム

今回は自身のデザインである、言語などによるバリアなく誰とでも一緒に遊べる、ボードゲーム型コミュニケーションツール「Shogito」をご紹介したいと思います(写真1)。

「 Shogito」は、国籍や人種、肩書き、年齢などによる垣根をなくし、人と人が先入観なく互いを知る機会を増やすためのプロジェクトとして、2016年にアムステルダムで始まりました。

15カ国以上(※1)の言語、文化圏、類似ゲームの経験値が異なる、5歳から70代の人々へワークショップを行い、その方たちからのフィードバックを元に試作を作り、検証するという工程を繰り返し、「Shogito」は現在のデザインになりました(写真2)。

人は多くの感覚器官を使い、相手から無意識に情報を得ています。後述の通り「Shogito」には、将棋のルールが採用されており、1対1で差し向かい一定の時間を過ごすことになります。ゲーム中に言葉を交わす必要がないからこそ、相手の表情や動き、息遣い、戦略の立て方などから、言葉で飾られたり、肩書きなどでラベル付けされていない、相手の素の人柄や現在の様子を見ることができます。

●コミュニケーションツールとしてのポイント

コミュニケーションツールとして用いるために、ルールを未だ知らない、漢字を読めない人達にとっても、ストレスなくすぐに遊べることが必須条件となります。このため、将棋のルールをそのままに、分かりやすい規則性を持った新しい駒とゲーム盤とするため、誰にでも平等に分かりやすいプロダクトへとリデザインする必要がありました(写真3)。誰もがより感覚的に遊べるゲームにするために、注力したポイントが2つあります。

・認知されやすい規則性の検証
規則性があるモノを前にした時、どのように人々は法則を見出そうとするのか、その着目点や認知の仕方に多様性がある中で、誰にとっても万遍なく分かりやすい「認知されやすい規則性」を求めて検証を重ねました。図形は世界の共通言語であり、言葉を介さず一瞬で情報が伝達することができます。図形を用いたこのプロセスにより、幾何に明るい人は、駒とゲーム版を見ただけで、説明しなくても成る前の駒の動きのほとんどを理解し、海外の方ですと15分ほどで、「Shogito」を使って将棋で遊ぶことができるようになっています。

・率直なフィードバックをもらうための環境づくり
開発のためのリサーチに参加してくれた方は、想定するエンドユーザーと同じく、将棋がどんなゲームか知らない人が大半を占めていました。早い段階で、文化的な側面や、デザインの意図を強く押し出してしまうと、いらない美術品を押し売りをされているようなストレスを与えてしまうことに気づきました。また、裏付けされていない新しい規則性を押し付けて遊んでもらっても、参加者が疲れて楽しくなくなってしまいます。

作り手の思惑に誘導されず、参加者が感じたことを口にしやすい環境づくりを模索しました。開発時はマンツーマンで談話するようなワークショップを行い(写真4)、デザインディテールの意図を伝えずに駒の動きを予想してもらいながら短時間一緒に遊ぶことで、参加者の本音を聞きやすく、また参加者が戻ってきやすいような環境づくりを心がけました。

「Shogito」の駒のデザインと、その動き方の詳細についてはhttps://www.shogito.com/をご覧ください。

●2020年春に日本でも流通開始

「Shogito」はデザインが確定してからは、イギリス、オランダ、ドイツ、フランス、日本で30人までの小中規模のワークショップを行っています。オランダのモンテッソーリ教育校で行った7回のワークショップでは、計200人ほどの生徒たちが、初めて見るこのゲームのルールを理解し、将棋のルールそのままに遊びました。

・なぜ将棋のルールを採用したのか
相手から取った駒を自分の駒として使える「持ち駒」や、駒がアップグレードできる「成駒」といった特有のルールがあり、このユニークなルールにより多様な展開が生まれ、その結果、互いの人となりを知る機会が増えることが期待できること。千年の歴史に裏付けされた、何度遊んでも楽しめるゲームであること。同じくチャトランガを起源とする他のゲームに比べて、先行知識を持っている人が顕著に少なく、より平等な条件の元でゲームできること(チェス人口は将棋の110倍の8億人、中国将棋は70倍の5億人と言われています)。以上の3つの理由からコミュニケーションツールとして用いるのに最適であるため、将棋のルールが採用されています。

「Shogito」は、2017年にミラノサローネで招待展示され、現在イタリアの木工製品研究機関でパーマネントコレクションになっています。また、人類学博物館やオランダ将棋協会などでもワークショップを行っています(写真4)。

日本では、2020年春頃に流通を開始予定です。ワークショップなどのお問い合わせは以下Webサイトよりご連絡ください。
https://www.tomokokita.com/

※1
オランダ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、日本、アメリカ、トルコ、スイス、ブラジル、中国、インドネシア、フィンランド、インド、シンガポール、ギリシャ、韓国、メキシコ、カナダ…(人数順)

●Reference:
Shogito
https://www.shogito.com/
Shogito 動画
https://www.youtube.com/watch?v=uQP4I8etUgk&t=18s


 


▲写真1:Shogito mini。(クリックで拡大)


▲写真2:Shogito と銀将。(クリックで拡大)



▲写真3:駒の動き。(クリックで拡大)



▲写真4:ワークショップ風景。(クリックで拡大)





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