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日本の3Dプリンタ市場の現状分析、
そしてInspireトポロジー最適化手法と
3Dプリンタのコラボの可能性

デヴォア・アレキサンダー氏率いる3D Printing Corporation社は、3Dプリンタに関する企業向けコンサルティングを中心に活動している。3Dプリント市場に深く通じており、クライアントの問題に一番最適のシステム(機種、素材、強度、データ形成など)を提案する。現在、アルテアの「Inspire」のトポロジー最適化を生かした、より高次な3Dプリンティングを目指し、両社によるコラボレーションを検討している。

デヴォア・アレキサンダー:アメリカコロラド大学経済学科卒業。2013年中国深センにGBI Energy LLCを設立し、エネルギーに関するビジネスを開始。2014年には日本でWebサイト、DDDJapan.comを立ち上げ、3Dプリンタ関連情報の発信を始める。2016年に株式会社3D Printing Corporationを設立。3Dプリンタ関連の小売、コンサルタント、教育、モデリングサービスなどを行う。日本全国のさまざまな業界、企業と3Dプリント技術に関するプロジェクト、コンサルティングで活躍している。

https://dddjapan.com/


取材協力:アルテアエンジニアリング株式会社
http://www.altairjp.co.jp/



●Part 1:
3Dプリンタのトレンドを語る

--まず、3Dプリンタのコンサルティングを行われている立場から、市場の現状をどのようにご覧になっていますか?

デヴォア:大きなトレンドは3Dプリンタが手頃な価格になったことだと思います。今まではエンタープライズと呼ばれる大企業の中にある一部門でしか使用できなかったからです。

RP(ラピッドプロトタイピング)時代は試作製作の需要が中心でしたが、現在の3Dプリンタは、プロトタイプ用途ではなく、生産用途が一番成長しています。

--3Dプリンタは試作用ではなく、製品を作るためのツールになってきたということですね。

デヴォア:3Dプリンタが他の造型機と比べて成功しているのは、生産量ではなく品質の違いです。3Dプリンタが切削機などの機械よりも早く安くできるようになったわけではなく、以前では不可能だったことなど、生産にとても役立つようになってきたからです。

例を挙げると、自動車工場で自動車に必要なパーツが、3Dプリンタによって、手軽に生産することが可能になりました。

3Dプリンタは、金型や切削機では製造が難しいユニークな形状デザインなどにも対応できます。例えばタービン(原動機)の部品などです。3Dプリンタを使用することで、新しいデザインのタービンを作ることができるわけです。

また、さまざまな種類のパーツを小ロットで生産が可能です。もし、5,000~10,000個よりも少ない数を生産するのであれば、3Dプリンタは従来の生産方式より効率的です。

--ちなみに日本では、数年前に3Dプリンタのブームが起こりましたが、その後成長は鈍化しています。

デヴォア:その時期に、ちょうど私が日本で3Dプリンタのビジネスを始めたのでよく分かります。そのブームは消費者向けの3Dプリンタに関してですね。

内部の話をすると、その時にすでに日本には多くのディストリビューター(販売会社)が存在し、消費者向けの3Dプリンタを企業向けとして販売していました。それにより多くの企業がとても失望した結果となりました。企業自体がこのテクノロジーに向けた期待を失っていったのです。

ところが、実際の3Dプリンタのニーズはコンシューマーではなく、治具や取り付け具などの外注金型や少量生産などを行っている中小企業にあり、日本でもこういった企業がもっと3Dプリンタに注目するべきだと思います

--日本でも3Dプリンタでの自動車パーツの生産は進んでいるのでしょうか?

デヴォア:日本の自動車メーカーはまだ始めていませんが、海外のBMWなどはすでにかなりの規模で3Dプリンタによる生産を始めています。彼らはRPや3Dプリンタを試作に使用しはじめて25年~30年経っています。その経験があるので、今その技術を生産に移すことができるのです。

現在、新規に3Dプリンタを導入検討している会社は、おそらく慎重になっているでしょう。ですが、すでに実用のレベルのテクノロジーがあるのですから、そのまま生産に使用するべきだと思います。

--3D Printing社もコンサルティングの立場で自動車産業に関わっていらっしゃるのでしょうか?

デヴォア:とても難しい質問ですね。現在、我々は日本の自動車メーカーのトップの1社と共同研究していて、とても高いレベルで3Dプリンタを利用しています。いつかこの3Dプリンタの実例を公表することができたら、他の日本の自動車メーカーも注目されるでしょうし、このような案件が増えると思います。弊社の現在の焦点は、まず1つの自動車メーカーとともに良い結果を達成することです。

●Part 2:
solidThinking Inspireと3Dプリンタ

--「Inspire」の特徴である、トポロジー最適化などのシミュレーションテクノロジーは、3D Printing社のビジネスをサポートできますか?

デヴォア:トポロジー最適化手法によって、以前では不可能だった「軽量化された上質のパーツ」を作ることができるようになりました。この「トポロジー最適化」を3Dプリンタと併用することで、誰よりも優れたパーツを実現できるということです。弊社では、すでにトポロジー最適化手法と3Dプリンティングの知識を使い、受注パーツをデザインしています。

これは、自動車メーカーにとって、とても魅力的です。なぜなら、トップの自動車メーカーでもまだ実現できていないからです。私は、彼らができないことを知っています。

自動車メーカーには3Dプリンタの知識がまだまだ足りません。彼らは、3Dプリンタの造型テクノロジーの違いや利用可能なマテリアルを知りません。いくつの自動車メーカーが、もっとよい熱を拡散する3Dプリントされた銅のパーツを作れることを知っていると思いますか? 日本でそれを話すのを聞いたことがありません。

--自動車メーカーと3Dプリンタメーカーとソフトメーカーの連携が進んでいないため、情報が共有されていない面もありますね。

デヴォア:はい。ソフトウェアの会社はソフトウェアを開発し、プリンタメーカーは3Dプリンタを作ります。どちらも自動車は作りません。しかし、目標は良い自動車を作ることです。

多くの3Dプリンタメーカーは、60~70%が販売、10~20%が研究開発、他は事務的な部署で成り立っています。そこにはアプリケーションエンジニアリングは含まれていません。私は一度もその人たちが他のビジネスの問題解決に携わるのを見たことがありません。

3Dプリンタにはたくさんのテクノロジーが含まれていますが、3Dプリンタメーカーは基本的に自社テクノロジーの領域にフォーカスします。例えば、ストラタシスはFDM(熱溶融積層法)に重点を置き、3Dシステムズはpowder bed system(粉末積層造形)がコアテクノロジーとなります。

ですので、このマーケットを成長させるためには、何かしらのエコシステムが存在しなければいけません。

--自動車メーカーなどは、自分たちで自社に最適な3Dプリンタを選ぶことが難しい?

デヴォア:自動車メーカーに限らず、クライアントから3Dテクノロジーについて正しく質問されることはほとんどないです。まったくないに近いです。何故なら、3Dプリンティングについての知識がとても限られているからです。彼らはたまに思いついたことを言うのですが、リアリティーとかけ離れている話になります(笑)。

例えば、クライアントが自ら「SLS(レーザー焼結)の機械が欲しい」と言うようなことはこれまで一切ありません。そこまでの知識を持っているクライアントはまだいません。人々の3Dプリンティングの知識は赤ちゃん並みです。まだ、誰も正しい3Dプリンティングのビジネスモデルを確立させていないと思います。

--アルテアエンジニリングには、現在たくさんのコンサルティングプロジェクトがあります。そのいくつかはInspireによる3Dプリンティングのトポロジーの最適化手法やラティスの最適化手法です。3Dマーケットは日本で拡大していると思われますか?

デヴォア:3Dプリンティングのゴールは、より優れた速く安全な自動車、低燃料の飛行機など、より良いものを作ることです。

しかし、そこに行き着くまでがまだ明確ではありません。デザイン、モデリングを行いシミュレーション…そこに3Dの役目があることは分かっています。けれども、これはただの一歩にすぎません。現段階でどうやって3Dテクノロジーを活用するかなど飛行機メーカー、自動車メーカーはそれほど気にしていないと思います。

もし、Inspireと3Dプリンタによって、これらの商品を作ることができ、かつ安く、パフォーマンスが良いものが可能であれば、これは良いビジネスだと思います。これが、私たちが一緒に取り組めるポイントだと思います。Inspireもとても良いツールですね。

--Inspireの良い点は?

デヴォア:ユーザビリティです。アイデアから、テストの確認までのループがとても簡単で早くでき、その場で良いのか悪いのか判断できます。そして、早いわりに結果がとても良いです。他社のツールもすべて使用しましたが、結果の信用性、動作の安定性など、Inspireに比べると劣ります。


▲話を聞いた3D Printing Corporation社の代表取締役社長、デヴォア・アレキサンダー氏



▲2017年11月22日、東京・恵比寿ザ・ガーデンルームで行われたアルテアエンジニアリング主催のイベント「CONVERGE 2017」で講演を行うデヴォア氏。(クリックで拡大)












































































▲最適化前の既存パーツモデル。(クリックで拡大)


▲Inspireのトポロジー最適化結果画像。(クリックで拡大)



▲Evolveによるレンダリング画像。(クリックで拡大)








▲ドイツの「formnext 2017」でも発表されたクラシックカー「VW Caddy」のフロントエンド構造最適化プロジェクト。(クリックで拡大)



--最後に、現在の3Dプリンタ市場は人の年齢に例えると何歳くらいだとお考えですか?

デヴォア:私の子供が間もなく誕生する予定ですが、3Dプリンティングも同じで、まだ生まれていないと思います。

日本のマーケットだけでなくグローバルでも同様ですが、日本は少しだけ遅れているような気がします。オランダの一部やイタリア北部、アメリカの一部では大きく成長しているのに比べ、日本の成長は横ばいでやや遅いです。日本は新しいテクノロジーに対して挑戦する気持ちが少ないと感じます。

これから100年~300年かかると思いますが、将来的に90%以上の工場が3Dプリンティングによって生産するようになると思っています。産業革命の歴史を振り返り、私は3Dプリンティングも100年単位のスケールで見ています。未来を予想するのは不可能ですが、この先のゴールはスタートレックでしょ? まだ、私たちはそこまでは至ってませんが(笑)。

--ありがとうございました。11月22日東京・恵比寿にて。 




▲3D Printing Corporation社のデヴォア氏(左)と最高執行責任者の大江誠氏(右)。(クリックで拡大)


 

 

 

 

 

 

 








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